平成18年6月6日
中央労働委員会事務局
審査総括官 藤森和幸
Tel 03−5403−2172
Fax 03−5403−2250


エッソ石油(福井油槽所閉鎖)不当労働行為再審査事件
(平成11年(不再)第42号)命令書交付について


 中央労働委員会第三部会(部会長 荒井史男)は、平成18年6月6日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付しましたので、お知らせします。命令の概要等は、次のとおりです。

I 当事者
 再審査申立人 スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合(豊中市)  組合員数33名(18.1.31現在)
同中京分会連合会(名古屋市)組合員数12名(18.1.31現在)
 個人N

 再審査被申立人 エクソンモービル有限会社(東京都港区)従業員数約900名(17.9.27現在)
 東西オイルターミナル株式会社(東京都港区)従業員数129名(16.4.1現在)
 コスモ石油株式会社(東京都港区)従業員数1729名(17.3.31現在)
 キグナス石油株式会社(東京都中央区)従業員数126名(17.6.20現在)

II 事案の概要
 本件は、エクソンモービル有限会社(以下「会社」)が、(1)平成6年3月31日付けで福井油槽所を閉鎖したこと、(2)同油槽所閉鎖に伴い組合員Nを同年4月1日付けで名古屋油槽所に転勤させたこと、(3)同油槽所閉鎖及び組合員の転勤に関する団交に誠実に応じなかったこと、(4)東西オイルターミナル外2社(以下「3社」)が石油製品の代替出荷を引き受けることにより会社と連携して同油槽所を閉鎖したことが不当労働行為であるとして申立てがあった事件である。
 同11年11月10日、初審愛知県労委は、救済申立てを棄却したところ、組合らはこれを不服として、同月22日に再審査を申し立てた。

III 命令の概要
 1 主文
 本件再審査申立てを棄却する。
 2 判断の要旨
(1) 3社の使用者性について
 福井油槽所閉鎖後、3社による石油製品の代替出荷が行われていたが、代替出荷は、以前から石油元売企業間においては相互に行われてきており、本件油槽所閉鎖とは次元が異なる問題である。3社が代替出荷を引き受けたからといって、本件油槽所閉鎖を会社と連帯して行ったことにはならない。3社は組合員の労働条件について現実かつ具体的な支配力を行使する関係にないので、組合の主張は採用できない。
(2) 本件油槽所閉鎖について
 会社は、企業体質の強化を図るため流通部門の効率化に取り組む中で、福井油槽所を長期に安全に運営するためには、安全対策等多額の費用を会社が負担する必要があり、他社との競争に耐え得ない上に、同油槽所の維持経費の会社負担も重く、その改善も難しいことから、経営上の判断として油槽所閉鎖を決定したとみることができ、組合主張のように、組合の団結を破壊する意図をもってなされたとはいえない。
(3) Nの転勤について
 Nの勤務地限定の労働契約が成立していたか否かについては、会社の就業規則の定めや会社とNとの契約にも、また、組合と会社間の労働協約にも、Nの勤務地を福井油槽所に限定する内容のものはなく、他にNの勤務地が上記内容で成立していることを認めるべき証拠もない。また、経営上の判断により油槽所が閉鎖された場合、会社が転勤を命じることは業務上の必要性があり、Nがタンクトラック運転手として長年勤務していたからといって、勤務地限定の労働契約が成立していたとは認められない。
 また、福井油槽所閉鎖に伴い同油槽所の従業員全員が転勤を余儀なくされたものであり、しかも、会社は、組合に具体的なNの転勤先を提示して協議した経過を踏まえ、Nの転勤先を名古屋に決定しており、できる限り組合とNの事情を考慮した上で、転勤先を決定している。さらに、他組合員についても、他組合との労使協議会における協議の中で横浜への転勤に合意したものであったことを考慮すると、会社が、Nを特に不利益に扱う意図で転勤を命じたといえず、また、差別的な取扱いを行ったものともいえない。
(4) 本件団交について
 福井油槽所閉鎖に関する団交の状況について、会社は、同油槽所維持に必要な投資額、閉鎖した場合とそうでない場合の経費の比較、現在の同油槽所の出荷コスト等につき、数字を示して説明しており、このことは、会社が、組合の質問に答えて、同油槽所閉鎖の経営上の理由を具体的に説明したといえる。
 次に、Nの転勤に関する団交の状況について、組合の提案に対し、会社は、出荷形態は配送サービスセンターで一元化されているから応じられないこと、伏木や岐阜は人員が充足していることを回答するなど、会社は組合に対し、組織や人員配置の状況を示して組合提案には応じられない旨回答しており、団交における会社の対応が不誠実とまではいえない。
 また、組合は、会社が半年にわたり組合をだまし続け、平然と団交を繰り返していたと主張するが、平成5年9月ないし10月には、同油槽所の閉鎖後の運営について、ジャパンエナジーから同油槽所の単独運営の意向が示されていたものの、条件等は未定であったことやその後の団交経過からみて、会社が譲渡決定の事実を隠したまま、不誠実な団交を繰り返していたとはいえない。
(5) その余の主張について
 組合は、浜松油槽所閉鎖の場合、会社は他組合の下部組織とも団交しているのに、中京分会連合会との団交を拒否しているほか、他組合員には転勤に当たって多くの便宜を与えていると主張するが、そのとおりの事実があったとしても、組合が本件団交において差別的な取扱いを受けていたとか、Nが他組合員に比べ不当な取扱いを受けていたと認定するには足りない。

【参考】 本件審査の経過
  初審救済申立日 平成 7年 2月20日(愛知県労委7年(不)第1号)
  初審命令交付日 平成11年11月10日
  再審査申立て 平成11年11月22日

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