平成18年4月28日
中央労働委員会事務局
第二部会担当審査総括室
  室長  神田 義宝
   電話  03-5403-2162
   FAX  03-5403-2250


ブックローン(懲戒処分等)不当労働行為再審査事件
(平成17年(不再)第48号)命令書交付について


 中央労働委員会(会長 山口浩一郎)は、平成18年4月28日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。命令の概要は、次のとおりです。

I  当事者
  再審査申立人   全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(「支部」)
 組合員1,5OO名(初審結審時)
  再審査被申立人 ブックローン株式会社(「会社」)
 従業員 33名(初審結審時)
II  事案の概要
 本件は、会社が、(1)支部が開催した2回の社前抗議集会(「12月集会」及び「6月集会」、併せて「本件集会」)に参加した支部の下部組織である分会の組合員Nらに対し、2回にわたり懲戒処分(「12月懲戒処分」及び「6月懲戒処分」、併せて「本件懲戒処分」)を行い、これを理由に賞与を減額して支給したこと、(2)支部が同懲戒処分、身分変更の取扱い等について申し入れた団体交渉に誠実に応じなかったことが不当労働行為であるとして、支部から兵庫県労働委員会(「兵庫県労委」)に救済申立てがあった事件である。
 兵庫県労委は、支部の救済申立てを棄却する旨の命令を発した。
 これを不服として、支部は、平成17年7月6日、初審命令を取り消し、本件懲戒処分の取消し、バックペイ、誠実団交応諾等の救済を求めて、再審査を申し立てた。
III  命令の要旨
 命令主文
 本件再審査申立てを棄却する。
 判断の要旨
(1) 本件懲戒処分及び本件賞与の減額について
 本件集会は、その目的において労働組合の行為としての正当性を欠くものではないが、その態様において会社及び会社近隣の静穏を害するものであり、また、集会での宣伝活動にはそれを聴く者等に誤った印象を与えるような内容が含まれ、会社の名誉を毀損し信用を失墜させ、会社の事業運営や利益を侵害する具体的なおそれがあったから、労働組合の正当な行為の範囲を逸脱したものであったということができる。
 会社は、それまで支部が開催した社前抗議集会や元旦行動について、繰り返し同様の行為を行った場合には断固たる措置をとる旨分会・分会員らに警告等を行っており、Nらは、当然これらの事情を認識していたものと認められる。そして、本件集会は、従前と同様の態様をもって行われ、アのとおり、同集会は労働組合の正当な行為の範囲を逸脱したものであったことからすれば、同集会に参加したに過ぎない分会員に相応の責任を負わせることは許容されるものである。会社のNらに対する本件懲戒処分は、会社の懲戒処分のうち、最も軽いかそれに次ぐ訓戒又は譴責であり、同人らの行為の態様、本件集会に関する事情、処分の程度等からみて相当性を欠くものとはいえず、同処分には理由があるから、労組法第7条第1号に該当する不当労働行為とはいえない。
 本件賞与の減額に当たって、会社は、支部と同賞与の支給基準を合意した上で行っているといえ、イのとおり本件懲戒処分には理由があるから、本件賞与の減額は、労組法第7条第1号に該当する不当労働行為とはいえない。
(2) 団体交渉拒否について
 支部の求めた団交議題のうち12月懲戒処分については、会社は、懲戒処分の理由・会社の見解を記した文書を交付のうえ説明を行っており、その後支部から、改めて団体交渉が申し入れられたとの立証はない。もっとも団体交渉までの間に半年以上が経過しており、当初会社は、支部の団体交渉の要求等について必要がないとして拒否しており、これら会社の態度には問題がある。しかしながら、これは、12月集会の直後に元旦行動が行われたことや、この期間には、賃金改定や上期賞与に関して、継続的に団体交渉が行われていたことからすると、当該会社の対応を一方的に非難することはできない。
 「身分変更の取扱い」「組合活動の取扱い」等については、前年の団体交渉において、会社と支部が協議を重ねた事項であり、また、会社は支部の要求について詳細な回答を行っており、その後事情の変更が生じたとは認められないのであるから、会社がこれ以上交渉を重ねても進展が望めないとして交渉の申入れに応じなかったことには正当な理由がある。
 平成15年度賃金の引下げ及び同年上期賞与のカットについては、会社が、基本的な労働条件である賃金について、支部との団体交渉が行われている最中に、会社案どおりに賃金を引き下げて分会員に一方的に支給したことは、労使関係上重大な問題があるといえる。しかしながら、4月から5月にかけて行われた3回の団体交渉において、会社は、会社の経営状況等について説明を行い、5月28日の団体交渉でも新たな進展はなかったのであるから、会社が団体交渉を拒否したことを不当であるとまではいえない。
 会社は、15年上期賞与の減額については既に団体交渉において書面をもって、6月懲戒処分については文書で詳細な説明を行っている。もっとも後者については団体交渉は行われておらず、これを拒否する会社の対応には問題がないとはいえないが、6月集会は喧噪を来たす等の態様により行われたものである等12月集会と共通するところがあり、会社が、12月懲戒処分について団体交渉を行い、同処分に対するものと同様の形式で作成した文書を支部に交付したことをもって、6月懲戒処分について重ねて団体交渉をする必要はないと判断したとしても、不当であるとまでいえない。
 よって、会社の対応は、労組法第7条第2号に該当する不当労働行為とはいえない。

【参考】 初審救済申立日  平成15年3月31日(兵庫県労委平成15年(不)第1号)
 平成16年6月28日(兵庫県労委平成16年(不)第2号)
初審命令交付日  平成17年6月24日
再審査申立日  平成17年7月 6日

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