平成18年4月28日
中央労働委員会事務局
第一部会担当審査総括室
  審査総括室長  西野 幸雄
Tel  03-5403-2157
Fax  03-5403-2250


南労会(賃金・一時金等)不当労働行為再審査事件
(平成12年(不再)第3・4号)再審査命令書交付について


 中央労働委員会(会長 山口浩一郎)は、平成18年4月27日、標記事件の再審査命令書を関係当事者に交付しましたので、お知らせします。
 命令の概要等は、次のとおりです。

 当事者
【使用者側】 医療法人南労会(「南労会」)(大阪市港区)
 従業員約250名(平成10年3月現在、以下同じ)
【労働者側】 全国金属機械労働組合港合同(「組合」)(大阪市港区)
 組合員約800名
全国金属機械労働組合港合同南労会支部(「支部」)(大阪市港区)
 組合員約30名
 事案の概要等
(1)  本件は、南労会がa)平成3年度賃上げの未実施、同年夏季一時金の別組合との差別取扱い、同年年末一時金の未妥結を理由とする支払拒否、b)遅刻早退控除の導入提案(平成4年夏季一時金〜同8年年末一時金)、ワッペン控除の導入提案(平成5年夏季一時金〜同7年年末一時金)、処分等控除の導入提案(平成7年年末一時金〜同8年年末一時金)により、各一時金を妥結に至らしめず、支給しなかったこと、c)平成3年度及び同4年度賃上げ並びに同3年年末一時金から同6年年末一時金に関する支部の妥結通告について、妥結の成立を否定し、また各賃上げについて妥結月実施を条件とするなどして支払わなかったこと、d)平成7年度及び同8年度賃上げについて新賃金体系に合意することを条件とし、同8年度賃上げについては、さらに妥結月実施を条件とし、各賃上げを行わなかったこと等が不当労働行為であるとして、大阪府労委に救済申立てのあった事件である(大阪府労委平成4年(不)第30号、外9件)。
(2)  初審大阪府労委は、平成11年12月27日付で命令を発した(命令主文要旨は次のとおり)。
1)  平成7年度及び同8年度賃上げについて、妥結月実施を条件とせず、新賃金体系に関して十分な説明を行うなど組合らと誠実に協議すること
2)  平成4年から同8年の間の各一時金交渉につき、a)遅刻早退控除、b)ワッペン控除、c)処分等控除の実施を条件とすることなく妥結し、支払うこと
3)  文書手交
4)  その余の申立て棄却
(3)  この初審命令を不服として、南労会は、平成12年1月7日、また、組合らは、同月11日、それぞれ再審査を申し立てた。
 命令の概要等
(1)  命令主文要旨
1)  南労会は、平成4年から同8年の間の夏季及び年末の各一時金について、a)遅刻早退控除、b)ワッペン控除、c)処分等控除の実施を条件とすることなく、支部と誠実に団体交渉を行うこと
2)  南労会は、平成7年度賃上げについて、また、平成8年度賃上げの同年4月への遡及実施について、支部と誠実に団体交渉を行うこと
3)  上記の団体交渉で妥結に至った場合の、各一時金の支払い、賃上げの実施
4)  文書手交
5)  その余の救済申立棄却
6)  その余の本件各再審査申立棄却
(2)  判断要旨
1)  平成3年度賃上げにおける、支部と別組合との差は平均定昇額の差額であって、差別取扱いにはあたらない。また、同年夏季一時金の未清算は、同年度賃上げが未妥結のため算定基礎額が確定できないためであり、差別取扱いとはいえない。同年年末一時金は、支部が同年度賃上げが解決しなければ妥結できないとしたことによるものであり、不当労働行為に該当しない。
2)
 遅刻早退控除導入(平成4年夏季一時金〜同8年年末一時金)は、一方的に導入し実施しようとした3年変更及び7年変更に従わない支部組合員を従わせるためにことさら不利益に取扱おうとしたものである。
 ワッペン控除導入(平成5年夏季一時金〜同7年年末一時金)は、労務の受領をしながら、各一時金の半額までという相当大幅な減額を行おうとするものであり、しかも、その方法は、ワッペン着用の有無を現認しない杜撰なものであって、相当と認められる範囲を超えるものであり、合理性を欠く。
 処分等控除導入(平成7年年末一時金〜同8年年末一時金)は、一方的に導入された3年変更及び7年変更に従わないことを理由に処分を行うことは相当とはいえず、これを一時金支給の条件とすることは合理性を欠く。
 南労会が遅刻早退控除導入、ワッペン控除導入、処分等控除導入に固執した結果、各一時金について合意が成立せず、支部組合員に対して各一時金を支給しなかったことは、労組法7条1号及び3号に該当する不当労働行為である。
3)  平成3年度及び同4年度賃上げ並びに同3年年末一時金から同6年年末一時金についての支部の妥結通告は、条件を附したものであって、南労会がこの条件を容れなかったことにより妥結が成立しなかったものである。また、妥結及び支払いによって実質的に解決する各救済申立てについての取下げを求めたことを不当労働行為であるとまでいうことはできず、各賃上げについて妥結月実施を条件としたことは、同3年度及び同4年度の賃上げが未妥結であることに南労会に責めを帰すべき理由は認められず、不当労働行為とまではいえない。
4)
 平成7年度及び同8年度賃上げの条件とした新賃金体系導入については、重要な労働条件の変更を行う新賃金体系について支部と実質的な協議を行うことのないまま、同意しなければ各賃上げを実施しないとして賃上げを実施しておらず、このような南労会の対応は、誠実な団交を行ったものとは認められず、労組法7条2号に該当する不当労働行為である。
 平成8年度賃上げの実施の条件の一つとした妥結月実施については、南労会が、支部組合員に対して、妥結が遅れれば遅れるだけその不利益が増大する結果となることを予測して、いまだ団交が尽くされたと認めることのできない新賃金体系について支部の反対を封じ同意をさせようとしてあえてこれを条件としたものとみることができ、新賃金体系に関する不誠実な団交という不当労働行為を介在させることによって、組合らの方針を変更させるために行われたものであると評さざるをえないものであって、労組法7条1号及び3号に該当する不当労働行為である。

【参考】
 ● 本件審査の状況
  ・ 初審救済申立日  平成4年7月8日外
  ・ 初審命令交付日  平成11年12月27日
  ・ 再審査申立日  平成12年1月7日(使)、同月11日(労)
  ・ 再審査終結日  平成18年4月27日

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