平成18年4月7日
中央労働委員会事務局 第三部会担当
   審査官 武田 徹
  電話 03-5403-2265(ダイヤルイン)
  Fax 03-5403-2250


高宮学園不当労働行為再審査事件〔中労委平成17年(不再)第6号〕
命令書交付について


 中央労働委員会(会長 山口浩一郎)は、平成18年4月7日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。
 命令の概要等は、次のとおりです。

I 当事者
 再審査申立人学校法人高宮学園(東京都渋谷区)
 職員数約600名(平成16年8月現在)
 再審査被申立人労働組合東京ユニオン
 組合員数約900名(平成17年7月現在)

II 事案の概要
 1 本件は、学校法人高宮学園及び同東朋学園(平成16年4月に両学園が合併し、学校法人高宮学園として存続。)が、a.支部の組合員Xに対してなされた自宅待機命令に関し、組合及び組合支部(以下「組合ら」)が、平成15年7月16日及び同月23日付けで申し入れた団体交渉(以下「本件団交申入れ」)に応じなかったこと、b.その後、組合らが求めた「組合員に対する懲戒処分や転居を伴う配置転換等の重大な労働条件の変更については、今後は事前に組合との団体交渉を行うことを文書で確約すること」を拒否したことが不当労働行為に当たるとして、救済申立てがあった事件である。
 2 初審東京都労委は、高宮学園に対し、a.Xほか組合員の解雇や懲戒処分等に関する団体交渉拒否の禁止及び誠意をもった団体交渉の応諾、b.aに関する文書手交及び履行報告を命じ、その余の申立てを棄却したところ、高宮学園はこれを不服として、上記初審命令の救済部分の取消しを求めて再審査を申し立てたものである。

III 命令の概要
 1 主文
(1) 本件初審命令主文第1項を取り消し、第2項以下をそれぞれ繰り上げる。
(2) その余の本件再審査申立てを棄却する。

 2 判断の要旨
(1) 高宮学園の被申立人適格について
 高宮学園は、平成16年4月1日付けで東朋学園を合併しており、仮に本件について、高宮学園又は東朋学園に不当労働行為と目される行為があったとすれば、その責任は自ら又は東朋学園の権利義務を承継した高宮学園が負うものとなるのであるのであるから、高宮学園は、本件の被申立人適格があることを否定できない。
(2) 団体交渉拒否について
 Xの自宅待機命令は、同人の懲戒処分を前提として行われたものであったことは明らかであって、自宅待機の理由とされた事実関係については同人と学園側の主張にはくい違いがあり、これを放置したままでは同人が懲戒処分に付されるおそれが高かったのであるから、同申入れは、同人の雇用ないし待遇についての団体交渉申入れであり、学園はこれに応ずべき立場であったといえる。ところが、学園側に、この段階で同人の問題を組合らと真摯に交渉する意思があったとは認められない。
 平成15年7月23日に行われた学園側と組合支部の役員との話合いは、学園側による一方的な事情説明の場というべきものであって、組合らが求めていた団体交渉を行う場となったとか、実質的にそれに代替できる場となったと見ることは相当でない。
 同年9月4日に行われた団体交渉(以下「9.4団交」)は、a.Xに対する自宅待機命令が出された段階で組合らが求めた団体交渉を、学園側が拒否した上で懲戒解雇処分を強行した後に行われたものであり、しかも、b.学園側は、9.4団交の開催前から同人の懲戒解雇処分は撤回しないことを組合らに対し明言するなど、組合らの同処分強行への抗議や同処分撤回の要求に耳を傾ける姿勢を示したことは窺えないことから、組合らが自宅待機命令が出された段階で、同命令に関し行った本件団交申入れに対し、学園が9.4団交を行ったことによって交渉義務を果たしたと評価することは適切でない。
 以上のとおりであるから、同交渉申入れに対する学園側の対応は、労働組合法第7条第2号でいう不当労働行為に該当する。
(3) 救済方法について
 本件団交申入れについては、初審命令交付後、Xの懲戒解雇処分が無効とされて、同人が職場に復帰していること等からして、現段階において初審命令主文第1項を命じる必要性は認められないが、学園側が同人に対する自宅待機命令の段階で交渉を拒否したことについては、交渉義務が果たされなかったのであるから、初審命令主文第2項のとおり、文書交付を命じる限度では救済の必要性が認められる。

 【参考】
  本件審査の概要
    初審救済申立日  平成15年11月 6日(東京都労委平成15年(不)第101号)
    初審命令交付日  平成17年 2月 9日
    再審査申立日  平成17年 2月16日

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