平成18年4月7日
中央労働委員会事務局
第二部会担当審査総括室
   室長   神田義宝
電話 03-5403-2162
FAX 03-5403-2250


ブックローン(賃金差別等)不当労働行為再審査事件
(平成10年(不再)第22号)命令書交付について


 中央労働委員会(会長 山口浩一郎)は、平成18年3月31日(組合員1名は4月3日)、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。命令の概要は、次のとおりです。

I 当事者
  再審査申立人  全日本建設運輸連帯労働組合関西地区生コン支部(「支部」)
    組合員1,8OO名(初審結審時)
  同  個人Nら5名
  再審査被申立人  ブックローン株式会社(「会社」)
    従業員 61名(初審結審時)

II 事案の概要
 1 本件は、会社が、(1)支部ブックローン分会(「分会」)の組合員であるNらの6名に対し、昭和57年から不当に低い評価、等級に据え置き、賃金差別を繰り返したこと、(2)支部が同63年3月及び同年4月に春闘要求実現のために行ったワッペン等着用を理由にNら6名を譴責処分とし、同年度上期賞与の人事考課において同人らを最低のEランクと評定したことが、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為であるとして、平成3年11月18日、支部、分会及びNら6名から兵庫県労働委員会(「兵庫県労委」)に救済申立てがあった事件である。
 2 兵庫県労委は、分会の救済申立て並びに支部及びNら6名の救済申立ての一部を却下し、その余の救済申立てを棄却する旨の命令を発した。
 これを不服として、支部及びNら6名は、平成10年5月11日、初審命令を取り消し、賃金、賞与を是正し、既払賃金との差額の支払うこと等請求どおりの救済を求めて、再審査を申し立てた(後に個人1名は再審査申立てを取下げ。)。

III 命令の要旨
 1 命令主文
 初審却下部分を一部変更し、その余の本件再審査申立てを棄却する。
 2 判断の要旨
(1) 本件救済申立ての適法性
 昇給に関する考課査定ないし等級の格付け(以下「査定等」)における賃金上の差別的取扱いの意図は、これによる賃金の支払いによって具体的に実現されるから、当該査定等とこれに基づく毎月の賃金の支払いとは一体として一個の不当労働行為をなすものとみることができ、その是正を求める救済の申立てが当該査定等に基づく最後の賃金の支払いの時から1年以内にされたときは、当該救済申立ては、労組法第27条第2項の定める期間内になされたものとして適法というべきである。そうすると、支部らの本件救済申立ては、平成3年11月18日に行われているから、同元年度以前の昇給及び等級に係る救済申立ては不適法であり、却下を免れない。
 一方、賞与にあっては、仮に不当労働行為と目される行為があった場合には、その差別的取扱いの意図は、特段の事情がない限り、賞与支払いの時点で実現されたものとみることができるから、平成2年上期賞与以前の賞与に係る救済申立ては不適法であり、却下を免れない。
(初審命令は、昭和63年度以前の等級格付け、昇給考課の是正及び平成2年度上期賞与以前の賞与考課の是正に係る申立てを却下。)
(2) Nら6名に対する賃金差別の有無等
 Nら6名の同期同学歴者との格差の存在、当該格差の合理性、各人の能力、勤務実績等についてみると、同人のなかには、同期同学歴者に比べ低い等級に格付けられていることが認められる者もいるが、同人らに対する平成2年度及び同3年度の人事考課において、差別的な取扱いがなされたと認めるべき事情の立証はないといわざるを得ない。
 また、会社は、Nら6名を一律に扱うことなく、各人の能力、勤務実績等を個別に考慮して評定を行っていると認めることができ、会社の人事考課に格別不自然な点もみられない。
 会社は支部の存在ないし活動を快く思っていないことは推認できるものの、Nら6名に対する人事考課における評価は不当とはいえないことからすると、同人らの等級の格付け、昇給査定及び賞与査定について、不当労働行為の成立を認めることは困難である。
(3) ワッペン等着用を理由とするNら6名に対する譴責処分
 会社のワッペン等着用を理由とするNら6名に対する譴責処分は、昭和63年6月7日付けで行われ、このことを理由に、会社は、人事考課をEランクと評定し、同月、同評定に基づき賞与を支給しているから、初審命令が、この点に係る救済申立てを労組法第27条第2項で規定する申立期間を徒過したものとして却下したことは相当である。


  【参考】初審救済申立日 平成3年11月18日(兵庫県労委平成3年(不)第4号)
初審命令交付日 平成10年4月28、29日
再審査申立日 平成10年5月11日

トップへ