平成18年3月23日 |
中央労働委員会事務局
審査総括官 熊谷正博
Tel | 03−5403−2172 |
Fax | 03−5403−2250 |
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日本電信電話不当労働行為再審査事件〔平成13年(不再)第41号・同14年(不再)第56号〕命令書交付について
中央労働委員会第一部会(部会長 山口浩一郎)は、平成18年3月23日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付しましたので、お知らせします。命令の概要等は、次のとおりです。
I | 当事者
平成13年(不再)第41号再審査申立人 | 日本電信電話株式会社(東京都千代田区) |
平成14年(不再)第56号再審査被申立人 | 従業員数約3,300名(15年10月14日現在)
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平成14年(不再)第56号再審査被申立人 | 大阪電気通信産業合同労働組合(大阪市中央区) |
平成13年(不再)第41号再審査申立人 | 組合員数約50名(15年10月14日現在) |
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II 事案の概要
1 | 中労委平成13年(不再)第41号事件(大阪府労委平成10年(不)第79号事件)
(1) | 平成11年7月1日、日本電信電話株式会社(以下「旧NTT」)は、改正法に基づき事業再編成(以下「再編成」)を行った。すなわち、旧NTTは、新たに設立された事業会社である西日本電信電話株式会社(以下「NTT西日本」)、東日本電信電話株式会社、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社の3社(以下「NTT事業3社」)に電気通信業務を営業譲渡し、自らはいわゆる純粋持株会社(以下「持株会社」)として存続(以下「NTT」)した。
本件は、旧NTTが、大阪電気通信産業合同労働組合(以下「組合」)に対し、(ア)電報事業合理化等の提案に関する団体交渉(以下「団交」)において多数組合である全国電気通信労働組合(以下「全電通」。再編成後は「NTT労組」)と差別的取扱いを行ったこと、(イ)10年7月1日付けで組合員18名に配置転換(以下「配転」)を命じたことが不当労働行為であるとして同年11月16日に大阪府労委に申立てがあった事件である。 |
(2) | 大阪府労委は、13年8月10日、(ア)旧NTTの不当労働行為責任はNTT及びNTT西日本が引き継いだものである、(イ)旧NTTの組合への電報事業の合理化提案時期が合理的理由なく全電通と比して遅れ、提案後も組合員の配転に関し形式的な不誠実な団交を行ったことは労組法第7条第2・3号の不当労働行為に該当するとして、NTT及びNTT西日本に文書交付((イ)に関して)を命じ、その余の申立てを棄却したところ、NTT及びNTT西日本は、これを不服として当委員会に再審査を申立てた。 |
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2 | 中労委平成14年(不再)第56号事件(大阪府労委平成13年(不)第77号事件)
(1) | 組合が申し入れた大阪府労委命令(上記1(2))を議題とする団交にNTTが応じなかったことが不当労働行為であるとして、13年11月16日に大阪不労委に申立てがあった事件である。 |
(2) | 大阪府労委は、14年11月11日、(ア)NTTは旧NTTから引き継いだ上記事件の不当労働行為責任に関して誓約文の手交義務を負う立場にあること、(イ)NTTは上記事件の不当労働行為責任につき誓約文の手交を命じられたにとどまることを併せ考慮すれば、NTTが団交に応じないことが不当労働行為に該当するとまではいえないとして申立てを棄却したところ、組合は、これを不服として当委員会に再審査を申立てた。 |
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3 | 両事件の併合
15年7月25日、当委員会は、上記1および2の事件の審査を併合した。 |
III 命令の概要
1 | 主文の要旨
(1) | 大阪府労委10年(不)第79号事件の主文第1項を次のとおり変更する。
「 旧NTTが配転命令に至る電報事業合理化問題に関し、全電通と比較して提案が遅れ、再編成までの間、他組合への情報提供と同様な取扱いをせず、説明・協議等団交に誠実に対応しなかったことが労組法第7条第2・3号の不当労働行為であることを確認する。」 |
(2) | 本件各再審査申立てを棄却する。 |
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2 | 判断の要旨
(1) | 平成13年(不再)第41号事件について
ア | 旧NTTの組合に対する団交態度
当委員会も、旧NTTの組合に対する情報の提供、説明・協議等の団交態度については、労働組合法第7条第2・3号に該当する不当労働行為であると判断するので、この点に関する初審命令(10年(不)第79号事件)の判断を引用する。 |
イ | NTTへの不当労働行為責任の帰属
(1)再編成の法的構成から事業会社に承継されなかったものはNTTの所管に残存すると考えるほかないから、NTTは不当労働行為事件に関する責任を再編成以降も負うものであり、(2)初審・再審査における当事者追加に関する主張や各証拠上もNTTは本件について責任を負うとしていたことから、本件の不当労働行為責任はNTTが負うというべきである。よって、これに反する再審査におけるNTTの主張(旧NTTの不当労働行為責任はNTT西日本に承継され、NTTに残される理由はない)は失当である。 |
ウ | 救済方法等
(ア)NTTはNTT労組との中央交渉や経営計画の立案・実施に積極的に取組み、統括的、主導的立場を担っていること、(イ)組合員の使用者であるNTT西日本とは和解が成立したことにより、再編成後の団交の進め方等は一応の解決が図られたことを勘案し、現時点における救済方法としては、正常な集団的労使関係秩序を構築、確保する観点から不当労働行為に関する責任を明確にし、今後の労使関係の運営において考慮させることをもって足りると判断される。よって、初審命令主文第1項を改め、NTTの本件不当労働行為に関する責任を確認する旨の命令を発することが相当である。 |
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(2) | 平成14年(不再)第56号事件について
(ア)組合は文書で地労委命令(前記IIの1(2))に関する団交を再三申し入れていること、(イ)組合員の使用者であるNTT西日本は和解して再審査申立てを取下げたことにより、再編成後の団交の進め方等は解決したといえること、(ウ)NTTは、本件命令主文Iのとおり命じられることを勘案すると、初審命令について重ねて団交を実施すべき特段の必要性の認められる場合に限り、NTTに対して団交応諾を命ずるべきである。
組合が、事務折衝でその他の労働条件についても団交を申し入れたことをもって、NTT西日本との団交に重ねてNTTに団交を申し入れる具体的必要性は認められない。
よって、NTTに団交を命ずべき特段の必要性を認めるに足りる疎明があったとはいえず、団交申入れにNTTが応じなかったことには正当な理由があるから、組合の救済申立てを棄却した初審命令の判断は結論において相当である。 |
(3) | 結論
初審命令(10年(不)第79号事件)主文第1項を変更し、各再審査申立ては棄却する。 |
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【参考】 本件審査の経過
1 | 本件審査の概要
(1) | 大阪府労委10年(不)第79号 | 初審救済申立日(平成10年11月16日)
初審命令交付日(平成13年 8月10日) |
中労委13(不再)第41号 | 再審査申立て(平成13年 8月23日) |
(2) | 大阪府労委13年(不)第77号 | 初審救済申立日(平成13年11月16日)
初審命令交付日(平成14年11月11日) |
中労委14(不再)第56号 | 再審査申立て(平成14年11月19日) |
(3) | 中労委における審査の併合 | 両事件の併合(平成15年 7月25日) |
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2 | 初審命令主文要旨
(1) | 大阪府労委10年(不)第79号事件
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(2) | 大阪府労委13年(不)第77号事件
申立て棄却 |
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