平成18年2月3日
中央労働委員会事務局
審査総括官 熊谷正博
Tel  03−5403−2172
Fax  03−5403−2250


エッソ石油(名古屋)不当労働行為再審査事件
(平成4年(不再)第7号)命令書交付について


 中央労働委員会第三部会(部会長 荒井史男)は、平成18年2月3日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付しましたので、お知らせします。命令の概要等は、次のとおりです。

I  当事者
 再審査申立人  スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合(豊中市)
   組合員数33名(17年9月27日現在)
 スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合中京分会連合会(名古屋市)
   組合員数12名(17年9月27日現在)
 スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合中京分会連合会
   エッソ名古屋支店分会 組合員数2名(17年12月1日現在)
 個人 K
 再審査被申立人  エクソンモービル有限会社(東京都港区)
   従業員数約1,300名(17年1月31日現在)

II  事案の概要
   本件は、会社が、@昭和62年10月1日付けで、名古屋管理事務所を閉鎖し、組合員を転勤させたこと、A組合員の出張に際し、出張先の勤務時間を適用して賃金カットを行ったこと、B本社課長代理が組合員に脱退勧奨発言を行ったことが不当労働行為であるとして、申立てがあった事件である。
 平成4年3月4日、初審愛知県労委は救済申立てを棄却し、組合らはこれを不服として、同月18日に再審査を申し立てた。

III  命令の概要
 主文
1.  スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合中京分会連合会エッソ名古屋支店分会の本件再審査申立てを却下する。
2.  スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合、同中京分会連合会及び個人Kの本件再審査申立てを棄却する。
 判断の要旨
(1)  スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合中京分会連合会エッソ名古屋支店分会(以下「分会」)の再審査申立てについて
 分会の現在の状況について、分会の代理人は、本件再審査申立て後に分会の執行委員長が転勤して分会から離脱し、分会員が2名となり、組織運営上現在休止の状況にあり、代表者及び所在地を表示できず、さらに本件再審査審問終結時点(17年9月27日)において、分会事務所の所在地であった場所には既に会社の事業所はなく、分会役員も不在で、分会員の活動も事実上不可能であり、大会も開催できず、したがって会計関係書類もないなどと申述した。当委員会は、組合資格審査の結果、分会は労組法第2条並びに第5条第1項及び第2項第2号の規定に適合しない旨決定したことから、分会の再審査申立てを却下した。
(2)  名古屋管理事務所の組織変更と組合員Kの転勤について
 会社は、管理事務所の機能が主要油槽所に集中化され、その役割が低下していたという事情から、全社的に管理事務所の組織変更を行い、業務の効率化を図ったものであり、名古屋管理事務所についてもその一環として組織変更を行ったもので、経営政策上の判断であったというほかはない。
 その後、会社は、自主労組本部との団交で全社的な組織変更問題等について、組合の質問に対し具体的に説明していた。また、中京分会連合会との団交では、名古屋管理事務所の組織変更の詳細やKを転勤させる業務上の必要性、配属先を決定した理由などについてできる限りの説明をしており、誠実に団交を行っていた。
 また、Kの転勤については、会社は同管理事務所に所属していたKを含む4名の従業員について、それぞれの通勤時間、業務内容及び個別事情等を勘案した上で決定したもので、各従業員の転勤先を決定した理由も不合理なものとはいえず、Kについて他の3名に比し差別的な取扱いがなされていたとの特段の事情も認められない。
 以上からすると、同管理事務所の組織変更及びKの転勤は、組合らを嫌悪し、Kを不利益に取り扱い、組合らを差別する意図をもってなされたものということはできない。
(3)  組合員Tの賃金カットについて
 Tの出張当日における就業時間は、「出張中の従業員は通常の就業時間、勤務したものとみなす。但し、あらかじめ別段の指示があった場合はこの限りではない。」と規定された会社の就業規則によって規律されていたものと考えられる。
 Tは、@会社の指示に従って出張先の事業所の勤務開始時間に出勤し、昼食・休憩時間も同事業所の定めに従った時間帯に取っていること、ATが午後4時49分に帰る旨申し出たのに対し、同事業所の課長は出張先の勤務時間に従うよう指示していることからすれば、会社としては、上記規則但書の「あらかじめ別段の指示」により、Tに対し、出張先の事業所における就業時間に従うべきことを命じたものと評価するのが相当である。
 さらに、Tは、出張先の事業所の終業時間1分前に当たる午後5時19分からの1分間ストライキに参加しているから、会社が、Tの当日の就業時間は出張先のそれに従うべきものとの判断の下に、午後4時50分から午後5時19分まで29分間の賃金カットをしたことは相当というべきである。したがって、これを組合の争議権の破壊、団結破壊を目的にした不当労働行為であるとする組合の主張は認められない。
(4)  課長代理の発言について
 課長代理は、「組合をやめるつもりはないか。」との発言については明確に否定し、組合の話や「組合」という言葉が出たかもしれないことについてはあいまいながら認めているにとどまる。また、会社は、発言の直後に行われた分会団交において、組合の抗議に対し、直ちに事実関係を確認し、上記発言はしていない旨を伝え、同発言が組合に誤解を与えたことについて遺憾の意を表明しており、会社としてそのような発言が不当労働行為となることを十分知悉した上での対応をしている。
 他方、課長代理から発言された組合員の証人尋問における証言によれば、課長代理との問題のやりとりの部分はかなり短いものと窺えるものであった。
 これらの事実を合わせ考えると、上記発言があったことを認めるには十分でないというほかはなく、他にこれを認めるに足る証拠はないから、不当労働行為に当たるとまでの事実を認めることはできない。
【参考】 本件審査の経過
 初審救済申立日  愛知県労委62年(不)第11号  昭和62年12月25日
   〃    63年(不)第5号  昭和63年11月24日
 初審命令交付日   平成 4年 3月 4日
 再審査申立て   平成 4年 3月18日


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