平成18年1月26日
中央労働委員会事務局
 第二部会担当審査総括室
  室長    神田 義宝
Tel 03−5403−2162
Fax 03−5403−2250


伏見織物加工(親睦会等)不当労働行為再審査事件
(平成16年(不再)第23号) 命令書交付について


 中央労働委員会(会長 山口 浩一郎)は、平成18年1月25日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。
 命令の概要等は、次のとおりです。

I 当事者
 再審査申立人 京都―滋賀地域合同労働組合 [組合員3名(平成17年9月現在)]
 再審査被申立人 伏見織物加工株式会社 [従業員約80名(平成15年11月現在)]

II 事案の概要
 1 本件は、伏見織物加工株式会社(以下、「会社」)が、京都―滋賀地域合同労働組合(以下、「組合」)から平成15年6月29日及び7月3日に申入れのあったa組合執行委員長Kの解雇の撤回について、b組合員Sに対する退職金の支払い並びに雇用保険法及び厚生年金保険法違反行為についての謝罪等について、cK及びSへの会社親睦会の規約(以下、「親睦会規約」)の提示と給付金の支払いについて、dK及びSへの未払賃金の支払いについて、e会社役員によるSに対する平成14年2月13日付けの損害賠償請求訴訟提起等の不当労働行為についての謝罪及び反省について、を議題とする団交に応じなかったことが、団交拒否及び支配介入(組合間差別)であるとして、救済申立てのあった事件である。
 2 初審京都府労委は、16年3月25日、組合の申立てについて却下したところ、組合はこれを不服として、16年3月29日、再審査を申し立てたものである。

III 命令の概要 
 1 主文    本件再審査申立てを棄却する。
 2 判断の要旨
 平成15年6月29日及び7月3日の団交拒否について
 平成3年11月26日付けKの解雇の撤回を議題とする団交拒否について
 Kは京都府労委に解雇は不当労働行為に当たるとして救済を申し立てたが、平成5年10月22日棄却され、さらに当委員会に再審査を申し立てたが平成14年3月13日棄却され、確定している。また、平成3年にKが結成した自立労働組合京都は、同解雇について、会社が団交に応じなかったことが不当労働行為であるとして京都府労委に救済を申し立てたが、棄却され、当委員会に再審査を申し立てたが、平成8年8月6日、申立てを取り下げ確定している。他方でKは、京都地裁に従業員としての地位保全及び賃金の仮払いを求める仮処分を申し立てたが、却下され、平成6年7月14日最高裁に申し立てた抗告が却下され確定した。さらにKは、京都地裁に従業員としての地位確認の訴えを提起したが棄却され、平成17年8月3日最高裁への上告が棄却されて確定した。
 こうした経過からすると、Kの解雇は既に確定し、解雇及び解雇にかかる団交拒否が不当労働行為に当たらないことは確定しているのであるから、再度の申立てを認めることはできない。また、団交拒否が支配介入(組合間差別)にも該当するとの主張については、上記のとおり団交拒否が不当労働行為に当たらない以上、支配介入に当たるとの申立てについても判断するまでもない。
 Sに対する退職金の支払い並びに雇用保険法及び厚生年金保険法違反行為についての謝罪等を議題とする団交拒否について
 これについては、別事件において申し入れたSの退職金の支払い、雇用保険及び厚生年金保険に加入させなかった問題と同一問題であり、実質的に同一事案に対しての再度の申立てであるので、申立てを認めることはできない。また、会社の団交拒否が支配介入(組合間差別)に当たるとの組合の主張については、会社の対応は、別事件の命令の不履行状態を継続させているものに他ならず、別個の不当労働行為を構成するとは認められないから、会社がこの団交申入れに応じなかったからといって、その行為をもって支配介入に当たるということはできない。
 K及びSへの親睦会規約の提示と給付金の支払いを議題とする団交拒否について
 Kについては、上記アのとおり、Kと会社との間には雇用関係は認められない。また、Sについては、平成12年6月30日に会社を退社し、その後の同年7月27日から9月26日までに組合員になったと推認されるが、組合は、平成15年6月29日及び7月3日に初めて親睦会規約の提示と給付金の支払いに関して団交を申し入れたもので、Sが退職して既に3年が経過した後の団交申入れであることが認められる。Sの退職後、組合は平成12年7月28日付けの団交申入れを始めとして、団交の申入れを度々行っているにもかかわらず、当該事項に関しては、平成15年6月29日になって初めて交渉事項として掲げたもので、期間経過は会社の対応とは関係がなく、労組法上の「雇用する労働者」とは認められず、組合は救済を求める適格を有しない。
 K及びSへの賃金の未払いを議題とする団交拒否について
 組合は、K及びSの未払金について、それまでに会社に対し支払いを請求したことはなく、平成14年6月29日に至って初めて団交の交渉項目として掲げたものであると認められる。そうすると、たとえ、賃金の未払いの事実があったにしても団交事項として取り上げるまでに既に十数年以上経過しているのであるから、団交を求めることができる社会通念上合理的な期間を経過していることが明らかで、組合は救済を求める適格を有しない。
 Sに対し、名誉毀損による損害賠償請求等を行う旨の通告書を会社専務が送付したことについての謝罪及び反省を議題とする団交拒否について
 これらについては、別事件における申立て事項と同趣旨であることは組合も認めるところであり、同事件に関しては、既に団交に応じる義務はないとの判断が示されて、確定しているのであるから、再度の申立ては認められない。また、団交拒否が支配介入(組合間差別)にも該当するとの主張については、団交拒否が不当労働行為に当たらないと既に判断されている以上、支配介入に該当しないことは明らかである。


 【参考】
 1 本件審査の概要
 初審救済申立日 平成15年8月22日(京都15不7)
 初審命令交付日 平成16年3月25日
 再審査申立日 平成16年3月29日

 2 初審命令主文要旨
 本件申立てを却下する。


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