平成18年1月24日
中央労働委員会事務局審査課
   特定独立行政法人等審査官
黒田 正彦
Tel 03−5403−2166
Fax 03−5403−2250


レクトラ・ジャパン不当労働行為再審査事件
(中労委平成15年(不再)第47号)命令書交付について


 中央労働委員会(会長 山口浩一郎)は、平成18年1月24日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。
 命令の概要等は、次のとおりです。

I 当事者
 再審査申立人 管理職ユニオン・関西(大阪市北区)
 組合員約350名(平成16年2月2日現在)

 再審査被申立人 レクトラ・ジャパン株式会社(大阪市中央区)
 従業員約40名(平成14年11月18日現在)

II 事案の概要
 1 本件は、再審査申立人管理職ユニオン・関西(組合)が平成13年6月8日に申し入れた組合員Tの解雇問題等に関する団体交渉(団交)に対し、再審査被申立人レクトラ・ジャパン株式会社(会社)が、過去6回の団交において協議は尽くされているとして応じなかったため、これを不当労働行為であるとして、初審大阪府労委に救済申立てがなされた事件である。
 2 初審大阪府労委は、組合の前記救済申立てを棄却したところ、組合は、これを不服として、当委員会に再審査を申し立てたものである。

III 命令の概要
 1 主文
 本件再審査申立てを棄却する。

 2 判断の要旨
(1)団交の経緯について
 組合は、組合員Tが所属していたリペアセンター(電子基板等の修理を行う部署)の廃止時期、組合員Tの解雇に至る経緯について会社の説明を了解していたわけではないが、第2回団交までのやりとりにおいて、平成12年6月のリペアセンターの廃止の時点で組合員Tの修理業務が激減し又はなくなっていた事実を承知していたものと認められる。
 第5回団交において社長自ら組合員Tを再雇用するとの提案を行い、第6回団交において組合がそれを受け入れるかどうかに交渉が収斂したが、第6回団交前である同13年2月2日、会社が他社とともに機器システムを出展・販売する大阪ミシンショーの会場周辺において、組合が入場者等に対し、「レクトラ・システム・ジャパン(株)はTさんの解雇を撤回せよ!」との横断幕を掲げたり、会社が組合員Tを不当解雇した旨を訴える内容の組合ビラを配布するなどの街宣活動を行った。これに対し、会社のS総務財務部長は組合員Tに、今回の行動は、再雇用の提案を拒否するという回答と考えてよいのか旨述べて抗議を行ったが、この場合、会社が顧客への影響を懸念し、困惑するであろうことは容易に想像できることであり、S部長が、組合員Tは再雇用の提案には応じるつもりがないと受け止めたとしてもやむを得ないものであった。
 同13年2月28日、第6回団交において、会社は再雇用の提案について、組合からの回答を確認することなく、交渉を打ち切る旨述べたが、会社がそのような対応をするに至ったのは、上記のとおり組合の行動にも原因があるのであり、会社の対応を一概に非難できない。また、組合も再雇用の提案について、何らかの条件を付けるにせよ、検討の余地があると考えるならば、その場で同提案について回答を行い、会社との交渉を求めることができたにもかかわらず、そのことについて何らの発言も行わなかった。その上で、組合の方から、話しても無駄であれば無駄なことはやめようと述べて交渉を終了したということは、この時点において、労使の交渉は行き詰まり、交渉打ち切りの状況になったものと認められる。
 なお、組合は、O書記次長がやめようと言ったのはその当日の交渉のことであると主張するが、両者のやりとりをみれば、単に当日の交渉をやめるという趣旨にとどまると理解することは困難である。
(2)6.8団交申入書について
 上記で判断したとおり、本件においては、第6回団交において、労使の交渉は行き詰まり、交渉打ち切りの状況になったが、その後においても、交渉再開が有意義なものとなることを期待せしめる事情の変化が生じれば、会社は交渉再開に応ずる義務があると解されるので、この点について判断する。
 平成13年6月8日付け団交申入書による団交申し入れは、会社が組合員Tに交付した組合員Tの解雇に至る経緯を説明した文書では、リペアセンター廃止は同12年6月としているが、実際には、それより2年前の同10年6月の時点で専用の部屋を廃止し、修理機材のほとんどを廃棄して閉鎖されており、同文書の内容は事実に反するとして、会社が主張するリペアセンターの廃止時期等に関する具体的根拠として修理件数等の開示を求めるというものであった。
 リペアセンターにおいて修理業務がなくなったのは、確かに同10年6月であるが、会社は当時、2000年問題があり、リペアセンター廃止を内外に表明するのは得策ではないとして、2000年問題が終了するまで、会社組織上のリペアセンターは存続させることとしたのであり、同センターが正式に廃止になったのは、同12年6月であった。したがって、リペアセンターの廃止時期に関する会社の説明が誤りであったとはいえないこと、また、修理業務がなくなっていた本件団交申入れ段階において、当該協議事項が組合員Tの解雇問題等の解決とどのような関係があるのかが何ら明らかにされていなかったことからすると、交渉を再開するだけの意義があったものとは到底いえない。
 よって、会社が組合からの本件団交申入れに応じなかったことは、労働組合法第7条第2号の不当労働行為であるとはいえない。

【参考】
  本件審査の概要
   初審救済申立日 平成13年6月12日(大阪府労委平成13年(不)第42号)
   初審命令書交付日 平成15年8月29日
   再審査申立日 平成15年9月10日
   再審査終結日 平成18年1月24日


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