平成18年1月20日
中央労働委員会事務局
 第一部会担当審査総括室
  室長   西野  幸雄
  Tel 03−5403−2157
  Fax 03−5403−2250


東日本旅客鉄道(千葉動労組合掲示板等)不当労働行為再審査事件
(中労委平成9年(不再)第9号)命令書交付について


 中央労働委員会(会長 山口浩一郎)は、平成18年1月19日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。
 命令の概要は、次のとおりです。

I 当事者
 1 再審査申立人東日本旅客鉄道株式会社(東京都渋谷区)
 従業員 約70,280名(平成17年9月5日現在)
 2 再審査被申立人国鉄千葉動力車労働組合
 組合員 約500名(平成17年9月5日現在)

II 事案の概要
 1 本件は、会社が、組合に対し、国鉄時代に行われていた便宜供与((1)掲示板の貸与、(2)団体交渉員の勤務解放、(3)会社施設の一時使用)をしないことが不当労働行為であるとして、千葉県労委に救済申立てがあった事件である。
 2 初審千葉県労委は会社に対し、(1)掲示板の貸与、(2)組合活動のための会社施設の一時使用、(3)団体交渉に交渉委員として出席する組合員に対して、団体交渉のため職場を離れた時間の賃金を支払うことを命じ、(4)その余の申立て(文書掲示)を棄却したところ、会社はこれを不服として、上記初審命令の救済部分の取消しを求めて再審査を申し立てたものである。

III 命令の概要
 1 主文要旨
 初審命令主文第1項ないし第3項の取消し
 2 判断の要旨
(1) 掲示板の貸与と団体交渉員の勤務解放について
 便宜供与について規定した労働協約が締結されるに至らなかった事情(交渉過程)を検討すると、本件のような場合、労使双方があくまで自己の条件に固執したため労働協約が締結されず、これにより組合が労働協約の成立を前提としてとられるべき措置の対象から除外されたとしても、それは当該組合自身の選択の結果であるといわざるを得ない。
 そうすると、上記の交渉過程において組合弱体化の意図が認められない本件においては、会社が千葉動労に対して、労働協約未締結を理由に掲示板貸与と団体交渉員の勤務解放を認めなくなったことを、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であるということはできない。
(2) 会社施設の一時使用について
 会社施設の一時使用は労働関係事務取扱規程で定められているものであるが、千葉動労各支部の使用申込みに対する箇所長の対応の中には組合活動を目的とする使用を認めないかのような対応をしたり、労働協約が未締結であることを理由として断った事例が含まれており、これらの箇所長の対応は必ずしも適切であったとはいえない。しかし、多くの許可申込みの事例にそのような事例が含まれているからといって、直ちに、会社が、他の組合と差別して、会社施設の一時使用許可の運用に関して、動労総連合やその傘下の組合を嫌悪し意図的に排除するという方針を採っていたとまでは言えず、会社の上記規程に基づく会社施設の一時使用許可の運用をもって、千葉動労に対する支配介入と判断することはできない。
(3) 結論
 上記のとおり、掲示板貸与と団体交渉員の勤務解放、さらに施設等の一時使用について、支配介入による不当労働行為の成立を認めた初審命令の判断は相当でなく、これらの部分について取消を免れない。

〔参考〕
 本件審査の概要
  初審救済申立日 平成2年3月6日(千葉県労委平成2年(不)第2号)
  初審命令交付日 平成9年2月20日
  再審査申立日 平成9年3月5日(使)
 初審命令主文要旨
  上記IIの2のとおり


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