平成17年12月19日
中央労働委員会事務局
 第二部会担当審査総括室長 神田 義宝
Tel 03−5403−2162
Fax 03−5403−2250


日本貨物鉄道(配属等)不当労働行為再審査事件(中労委平成9年
(不再)第51号)命令書交付について


 中央労働委員会(会長 山口浩一郎)は、平成17年12月16日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。
 命令の概要等は、次のとおりです。

I 当事者
 再審査申立人 個人K(「再審査申立人」又は「K」)
 再審査被申立人 日本貨物鉄道株式会社(東京都千代田区)(「会社」)
  従業員7,734名(平成17年4月1日現在)

II 事案の概要
 1 本件は、会社が、申立外国鉄労働組合の組合員であるKに対して、(1)平成元年12月4日付けで、運転士から車両技術係に職名変更したうえ、吹田機関区関連事業室(「関連事業室」)で関連補助業務に従事することを命じ、車両技術係の本来の業務である構内運転業務等から外したこと、(2)同3年から同6年までの各年末手当並びに同4年、同5年及び同7年の各夏季手当を減額したこと、(3)同4年度、同5年度及び同7年度の各定期昇給において、原則4号俸引き上げるところ1号俸減俸し3号俸の引上げとしたこと、(4)Kが本件で初審大阪府労働委員会(「大阪府労委」)に証人として出頭した時間を欠務として取り扱い、同人の賃金をカットしたことが、不当労働行為に当たるとして、同4年12月9日から同8年1月18日にかけて、大阪府労委に救済が申し立てられたものである。
 2 大阪府労委は、上記申立てのうち(4)については、不当労働行為に当たるとして賃金相当額(年率5分加算)の支払を命じ、その余の救済申立ては棄却した。
 3 再審査申立人は、上記棄却部分を不服として、再審査を申し立てた。

III 命令の概要
 1 主文
 本件再審査申立てを棄却する。
 2 判断の要旨
(1)当委員会も、再審査申立人の本件各救済申立てには理由がないものと考える。その理由は、当審における再審査申立人の主張に対し、下記(2)のとおり判断を付け加えるほかは、本件初審命令理由記載の判断(下記【参考】「1 初審命令の判断の概要」の(1)〜(3)参照)と同じであるから、これを引用する。
(2)当委員会が付加する判断(概要)
 再審査申立人(K)の構内運転業務の適格性について
(ア)再審査申立人は、初審命令は当時の指導助役の伝聞証言のみを採用してKが構内運転業務不適格であるとの判断をしていると主張するが、会社のKの運転技量に関する疎明は具体的かつ明確なものであり、再審査申立人は、初審において、会社が主張する事実を概ね認める供述をしていること、同助役の証言等の内容の信憑性を否定するに足りる反証はなされていないことからすると、初審命令が同理由記載の事実を認定したことに誤りはない。
(イ)再審査申立人は、機関車等の運転免許を有するKを構内運転業務から排除したことは不当であると主張するが、同人は電車及び電気機関車の運転免許を有し、6年間電車運転士として勤務したことが認められるが、電車と電気機関車とは必要な運転技術が異なるものであり、また、免許を所持しているからといって電気機関車についての運転技量が十分備わっているとは必ずしもいえないものである。そして、Kが列車誘導等の構内業務を担当した際や一人乗務訓練中の同人の行為をみると、重大な事故に直結する著しく危険なものが認められるから、会社が同人を一人乗務のみならず構内運転業務に従事させることに強い懸念を持ち、同人を運転業務から外したことには理由がある。
 関連事業室における関連補助業務への担務指定について
 再審査申立人は、関連事業室の業務は不当配属を合理化するために敢えて行っているような業務であり、その業務の必要性は極めて薄いものであって、Kにこのような関連補助業務への従事を命じたことに合理的な理由があるとした初審命令は誤りであると主張するが、会社関連事業室における業務は会社経営上必要のない業務とは認められないと判断され、また、Kの運転技量等については上記アのとおりの事情が認められるのであるから、会社が同人に関連事業室における関連補助業務の担当を命じたことを不当であるとすることはできない。

【参考】
 1 初審命令の判断の概要
(1)会社がKの運転技量等を総合的に考慮して、同人を構内運転業務に従事させなかったことは相当であると認められ、会社がKに対し、関連事業室における関連補助業務への従事を命じたことには合理的な理由があり、会社に不当労働行為は認められない。
(2)Kの言動は、就業規則等の服務上遵守すべき事項に反しており、また、業務上の指示に従わないものであり、会社がKの執務態度について、会社賃金規程上年末手当又は夏季手当が減額となる「勤務成績が良好でない」と判断したことは相当であり、会社に不当労働行為は認められない。
(3)定期昇給の調査期間にわたってKの勤務成績は良好でないと認められ、会社が、同人が会社賃金規程の昇給欠格条項の「勤務成績が特に良好でない者」に該当すると判断したことは相当であり、会社に不当労働行為は認められない。
(4)Kの労働委員会への出頭は、会社就業規則条項にいう職務上の事件について証人として召喚された場合に該当するものというべきであり、したがって、会社が本件審問において、一方で会社側申請証人として出頭した他の会社社員を有給扱いにしながら、他方で申立人側申請証人として出頭したKを無給としたことに合理的理由は認められず、同人に対するかかる取扱いは当委員会への申立てを嫌悪したがゆえの不利益取扱いであり、労働組合法第7条第4号に該当する不当労働行為に当たる。
 2 本件審査の概要
  初審救済申立日 平成4年12月 9日(大阪府労委平成4年(不)第52号)
 平成6年 7月 1日(大阪府労委平成6年(不)第42号)
 平成7年 1月10日(大阪府労委平成7年(不)第2号)
 平成8年 1月18日(大阪府労委平成8年(不)第4号)
  初審命令交付日 平成9年12月 4日
  再審査申立日 平成9年12月17日


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