平成17年12月16日
中央労働委員会事務局 第三部会担当
  審査官 武田 徹
 電話 03-5403-2265(ダイヤルイン)
 Fax 03-5403-2250


東新潟自動車学校不当労働行為再審査事件〔中労委平成16年(不再)第28号〕
命令書交付について


 中央労働委員会(会長 山口浩一郎)は、平成17年12月16日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。
 命令の概要等は、次のとおりです。

I 当事者
 再審査申立人株式会社東新潟自動車学校(新潟県新潟市)
 従業員数約40名(平成15年5月現在)
 再審査被申立人全国一般労働組合新潟県本部
 組合員数約1,300名(平成15年5月現在)

II 事案の概要
 1 本件は、会社が、a.支部の組合員Xに対して、副管理者への昇格に際して支部を脱退させようとし、これに従わないことをもって退職を強要するような発言を行ったこと、b.Xに対して、支部を脱退しなかったことを理由として職務変更を行い、さらに懲戒処分を行ったこと、c.支部の役員又は組合員に対して、支部を辞めないXを非難する言動を行ったことが不当労働行為であるとして、組合より救済申立てがあった事件である。
 2 初審新潟県労委は、会社に対し、a.Xに対する教習業務全般の停止措置及び懲戒処分がなかったものとしての取扱い、教習・検定業務に就かせること及びバックペイ、b.Xに対する組合脱退強要及びこれに応じない場合の退職強要の禁止、c.支部組合員に対する脱退示唆の禁止、d.文書手交を命じたところ、これを不服として会社が再審査を申し立てたものである。

III 命令の概要
 1 主文
 本件再審査申立てを棄却する。

 2 判断の要旨
 (1) 副管理者と組合員資格について
 副管理者の行っている業務等について、a.人事面については、あくまで役員への推薦や意見を付するに過ぎず、雇入れ、昇進等を決定する直接の権限までは有していなかったことが認められ、b.賃上げ又は賞与の支給については、その決定過程に副管理者は直接参画しておらず、労務の機密の事務を取り扱っているとの具体的な疎明がないこと、c.教習に関する問題について協議していたことは認められるが、これはいわゆる本来の経営業務とは異なるものであることから、いずれも利益代表者性を肯定する事実とみることはできない。
 副管理者5名のうち3名が支部組合員であったことについて、会社は特例措置であると主張するが、うち1名は長期間にわたり支部を脱退せずに副管理者の業務を続けていること及び副管理者の半分以上の者が支部組合員であったことを会社が問題視して対応策をとっていたという事実は認められず、管理者であるY校長も、副管理者が支部組合員であっても問題はないと考えていたことが認められる。
 以上を総合的に判断すると、副管理者は労組法第2条に規定する利益代表者に該当するということはできない。

(2) 組合脱退強要及び退職強要について
 会社において、副管理者は「使用者の利益を代表する者」と認めることはできないから、組合員資格を有したまま副管理者に就任することも認められるべきところ、Z専務の「副管が組合員ではだめだ。そういう考えであれば会社を辞めてもらわなければならない」等の言動は、就業上の不利益を示唆して支部からの脱退を迫ったものであって、組合の組織運営に対する支配介入に当たる。
 なお、会社はZ専務が退職強要の発言をした事実はないと主張するが、X及びZ専務の証言等を総合的に判断すると、退職強要の発言があったとする認定に誤りはない。

(3) 本件職務変更及び本件懲戒処分について
 職務変更
 Xに教習・検定業務を遂行することが危険になるほどの精神的不安定があったことを認めるに足る疎明はない。
 Z専務は、支部を辞めて副管理者に就任するようにとの命令をXが了承しなかったことに憤慨し、教習・検定業務を外すとともに、通常はローテーション又はタクシーの運転手によるアルバイトで行われていた送迎バスの運転業務に専属させることにより、同人にことさら不利益を課したものとみるのが相当であり、本件職務変更は、組合からの脱退拒否に対する報復措置といわざるを得ない。
 懲戒処分
(ア) 副管理者は、使用者の利益代表者とはいえないものであり、副管理者に就任するに当たって支部を辞めなければならない理由はないのであるから、Xの態度は、直ちに業務命令を拒否した行為とまで評価することはできない。
(イ) XがZ専務に提出した文書は、単にXの意思を表明したものであり、これを提出したことは何ら会社秩序上の問題となるものではない。また、会社が主張する事実は職場紊乱とは到底いえず、その他に職場に混乱等が発生したとの疎明はないから、Xの同文書の提出を職場紊乱行為と評価し、懲戒処分をしたことは、組合への所属意思の表明に対する不利益措置といわざるを得ない。
(ウ) さらに、就業規則で開催することを定められている査問委員会及び幹部会をどちらも開催せず、社長及びZ専務など一族の3名だけで構成される取締役会のみで懲戒処分を決定したことについては、慎重かつ適正な手続きであるとは到底いえない。
 Xの不利益性について
 Xの時間外労働時間が支部組合員平均を下回っているほか、運転手当、食事手当、休日出勤手当についても支部組合員との格差が認められ、これらは、いずれも本件職務変更及び本件懲戒処分に伴い発生した経済的不利益であると認められる。
 また、今回の職務変更によって本来業務から外され、送迎バスの運転要員とされたことなどにより精神上の不利益も生じていたと見るのが相当であるほか、本件懲戒処分により、停職及び班長からの降職等の処分が科せられることとなったのであるから、職務上の不利益が認められる。
 不当労働行為意思について
 一連のZ専務の言動からすると、報復的ともいえる職務変更さらには懲戒処分を命じたことは、Xが支部組合員にとどまることを問題視したうえで、組合脱退への圧力をかけたものであって、組合組織に対する支配介入行為であり、組合に対する敵意に基づく行為といわれてもやむを得ないものである。
 以上のとおりであるから、本件職務変更及び本件懲戒処分は、組合員であることを理由とする不利益取扱いであり、併せて組合の弱体化を企図した支配介入に当たる。

(4) 会社が支部組合員を呼び出し、Xの態度を非難し、意見を求めたことについて
 Z専務の発言は、副管理者に指名されながら組合員にとどまりたいとするXを非難することにより、他の組合員を動揺・威嚇させ、組合や支部の組織、運営に影響を及ぼそうとするものであるから、支配介入に該当する。

 【参考】
  本件審査の概要
    初審救済申立日  平成15年5月 6日(新潟県労委平成15年(不)第5号)
    初審命令交付日  平成16年3月31日
    再審査申立日  平成16年4月 2日


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