平成17年11月18日
中央労働委員会事務局
 第二部会担当審査総括室
  室長    神田 義宝
Tel 03−5403−2162
Fax 03−5403−2250


伏見織物加工(通告書送付等)不当労働行為再審査事件
(平成15年(不再)第28号) 命令書交付について


 中央労働委員会(会長 山口 浩一郎)は、平成17年11月18日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。
 命令の概要等は、次のとおりです。

I 当事者
 再審査申立人 京都―滋賀地域合同労働組合 [組合員3名(平成17年6月現在)]

 再審査被申立人 伏見織物加工株式会社 [従業員約80名(平成14年2月現在)]

II 事案の概要
 1 本件は、(@)伏見織物加工株式会社(以下、「会社」)の専務取締役が、京都―滋賀地域合同労働組合(以下、「組合」)が当委員会に提出した組合員S作成の陳述書によって名誉を毀損されたとして、Sに対し、損害賠償請求等を行う旨の通告書を送付したこと、(A)会社が、通告書に関して、組合が申し入れた団交に応じなかったことがそれぞれ不当労働行為であるとして、救済申立てのあった事件である。
 2 初審京都府労委は、15年6月11日、上記いずれも不当労働行為には当たらないとして、組合の本件各申立てを棄却したところ、組合はこれを不服として、15年6月12日、再審査を申し立てたものである。

III 命令の概要
 1 主文
 本件再審査申立てを棄却する。

 2 判断の要旨
(1) 通告書の送付について
 組合員Sが作成し当委員会に提出した陳述書によって、会社専務が名誉を毀損されたとしてSに対し損害賠償請求等を行う旨の通告書を送付したことについては、会社の行為であるとは認められない。すなわち、専務が労働組合対策としてどのような役割を負い、具体的にどのような行為に及んだかとの疎明はなく、また、通告書は会社代理人弁護士により作成されているが、専務の代理人として差し出すとのことわり書きがあり、他に会社の行為と判断できるものはなく、その他疎明もないから、会社が通告書の送付を行ったとする組合の主張は採用できない。
 組合は、会社には本件陳述書を意図的にビラと偽り、労働組合の基本的な活動の一つであるビラまきを妨害する意図があると主張するが、専務は虚偽事実を掲載したビラを配布したことではなく、虚偽事実を記載した書面を公の審理の場に出したことを問題にしているのであって、本件陳述書がビラと誤認されたものであるか否かは、本件判断に影響を与えない。また、事件と関連性のない事実や推測を取り上げて、個人の名誉を損なう行為に対しては、訴訟等を通じて救済を受ける権利も尊重されなければならない。
(2) 通告書の送付に関する団交について
 通告書の送付に関する団交の申入れを会社が応じなかったことについて、前記(1)アのとおり、通告書の送付行為は、会社の行為と認めることはできず、また、通告書の送付は、Sの労働関係の清算にかかる事項に含まれないから会社は団交に応ずる義務はない。
 また、組合は、通告書の送付に関して、その行為が脅迫行為となって別事件の証人尋問に圧力を与え、S本人の労働関係の清算にかかる団交にも影響を与えたのであるから、団交応諾義務が生じると主張するが、通告書の送付が脅迫行為に当たらないことは前記(1)イのとおりであるから、組合の主張は採用することができず、会社が団交に応じる義務はないとした初審判断は相当である。

 【参考】
 1 本件審査の概要
 初審救済申立日 平成14年2月4日(京都14(不)1)
 初審命令交付日 平成15年6月11日
 再審査申立日 平成15年6月12日(労)

 2 初審命令主文要旨
 本件申立てをいずれも棄却する。


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