平成17年11月18日
中央労働委員会事務局
 第二部会担当審査総括室
  室長    神田 義宝
Tel 03−5403−2162
Fax 03−5403−2250


伏見織物加工(12年団交)不当労働行為再審査事件
(平成13年(不再)第46・47号) 命令書交付について


 中央労働委員会(会長 山口 浩一郎)は、平成17年11月18日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。
 命令の概要等は、次のとおりです。

I 当事者
 13(不再)46 再審査申立人 伏見織物加工株式会社[従業員約80名(平成14年2月現在)]
47 京都―滋賀地域合同労働組合  [組合員3名(平成17年6月現在)]
 13(不再)46 再審査被申立人 京都―滋賀地域合同労働組合
47 伏見織物加工株式会社

II 事案の概要
 1 本件は、伏見織物加工株式会社(以下、「会社」)が、(@)京都―滋賀地域合同労働組合(以下、「組合」)から申入れのあった(a)平成12年7月28日申入れの夏季賞与等を議題とする団交に応じなかったこと、(b)同年10月7日申入れの組合員Sの失業保険(雇用保険及び厚生年金保険)・退職金・夏季賞与・解雇予告手当等を議題とする団交に応じなかったこと、(A)同年6月30日付けで契約期間が満了したSに、(a)解雇予告手当を支払わなかったこと、(b)退職金を支給しなかったこと、(c)平成12年度夏季賞与を支給しなかったこと、(d)雇用保険及び厚生年金保険の加入手続きを取らなかったこと、(B)救済申立てを行ったことにより(A)の各事項を是正しなかったことがそれぞれ不当労働行為であるとして救済申立てのあった事件である。
 2 初審京都府労委は、13年9月5日、上記1の(@)(b)については、厚生年金保険を議題とする団交応諾を命じ、その余の申立てについては棄却又は却下したところ、会社は救済部分の取消しを求めて、13年9月17日に、また、組合は棄却及び却下部分を不服として、13年9月20日に、再審査を申し立てたものである。

III 命令の概要
 1 主文    本件各再審査申立てを棄却する。

 2 判断の要旨
(1) Sに対する不利益取扱い及び報復的不利益取扱い並びに組合に対する支配介入について
 平成12年6月30日付で契約期間が終了したSに、(@)解雇予告手当を支払わなかったこと、 (A)退職金を支給しなかったこと、(B)平成12年度夏季賞与を支給しなかったこと、(C)雇用保険及び厚生年金保険の加入手続きを取らなかったことが不当労働行為であるとの組合の主張について、Sが組合結成当初からの組合員であるとの組合の主張は採用することができず、組合の救済申立てのうち、Sに対する不利益取扱い及び組合に対する支配介入については、組合が、当該行為が行われたと主張する6月30日時点で、Sが組合員であるとは認められないので、組合に救済を求める利益はない。
 Sは、退職後の7月27日から9月26日までの間に組合員であったと推認されるが、(@)解雇予告手当について、会社はSの退職予定日の30日前に雇用契約を更新しない旨を通知したことが認められ、解雇予告手当の支払義務は生じないこと、(A)退職金について、Sはパートタイム職員であるが、雇用契約書には、退職金がないことが記載されていることが認められ、また、会社が過去、パートタイム職員に対して退職金を支給したとの事実もないこと、(B)平成12年度夏季賞与について、就業規則に定めはないものの、支給日に在職している者のみに支給するという慣行が成立していたことが認められること、(C)雇用保険及び厚生年金保険について、会社は、雇用保険の手続きについては速やかに行ってたほか、被保険者の手続きを怠ったことによる減額相当分についても支払ったことが認められ、厚生年金保険の取扱いについては、組合が社会保険事務所に対し会社への指導を要望したものの、社会保険事務所も会社に対して指導したとの事実はなく、会社が京都府労委に申立てを行ったことを理由にSの厚生年金保険の被保険者確認を妨害しているとまではいえないことから、報復的不利益取扱いに当たらない。
(2) 平成12年7月28日申入れの団交拒否について
 平成12年7月28日、組合が会社に申し入れた団交について、Sが組合員であることを明らかにしたのは9月26日であり、その他会社と雇用関係にある組合員がいるとの事実もないことから、会社が当該団交の申入れに応じないことをもって、不当労働行為に当たるとはいえない。
(3) 平成12年10月7日付けの団交申入れについて
 Sの失業保険、退職金、夏季賞与、解雇予告手当等に関する団交申入れについて、Sは、退職後、社会通念上合理的な期間内に労働組合に加入しており、かつ、社会通念上合理的な期間内に団交の申入れがなされているということができるから、労組法第7条第2号の「雇用する労働者」と認められ、Sとの労働関係の清算に関する事項について組合が団交を申入れている以上、会社は団交に応じる義務を負う。
 Sの雇用保険の失業給付問題については、会社は、減額された雇用保険の基本手当の算定根拠について伏見職安に聞いたとおりSに支払っているが、少なくとも支払額の算定根拠についての説明を行う必要があると認められる。
 Sの厚生年金保険の加入問題については、Sが厚生年金保険の被保険者であることの確認を受けるために会社が講ずるべき措置について団交を通じて説明を行う義務がある。
(4) 救済方法について
 以上のとおりであるから、Sの退職金、解雇予告手当、平成12年度夏季賞与の支払いについては、会社に支払い義務がないと認めることが相当であり、審査の過程において、支払い義務がないことが組合に対して示されたと言うべきであるほか、会社には他に組合員はいないことから、団交を行う意義は失われている。よって、この部分については団交を命じないこととし、雇用保険及び厚生年金保険加入問題については、団交応諾を命じることとして、初審命令主文第一項を維持することが相当である。

 【参考】
 1 本件審査の概要
 初審救済申立日 平成12年8月4日(京都12不6)、同年10月18日及び同月27日(追加申立)
 初審命令交付日 平成13年9月5日
 再審査申立日 平成13年9月17日(使)、20日(労)

 2 初審命令主文要旨
(1) 申立人の申立てのうち、平成12年10月7日団交申入れの下記事項について申立人との団交応諾
 Sに係る雇用保険失業給付のうち基本手当の支給日数60日分相当額の取扱いについて
 Sが厚生年金保険の被保険者であることの確認を受けるために被申立人が講じるべき措置について
(2) 申立人の申立てのうち、労組法第7条第1号の不利益取扱い及び同条第3号の支配介入に係る申立てを却下する。
(3) 申立人の申立てのうち、平成12年7月28日の団体交渉申入れに係る救済申立てを却下する。


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