平成17年10月28日
中央労働委員会事務局第一部会担当
審査官    西野 幸雄
電話 03−5403−2157
Fax 03−5403−2250

南労会不当労働行為再審査事件〔平成5年(不再)第25号〕、南労会(勤務時間変更等)不当労働行為再審査事件〔平成9年(不再)第37号〕、南労会(紀和病院)不当労働行為再審査事件〔平成11年(不再)第39号・第40号〕の再審査命令書交付について


 中央労働委員会(会長 山口浩一郎)は、平成17年10月27日、標記事件の各再審査命令書を関係当事者に交付しましたので、お知らせします。
 命令の概要等は、次のとおりです。


I 当事者
 1 使用者側  医療法人南労会(「南労会」)(大阪市港区)
 従業員数約190名(平成9年10月現在、以下同じ)

 2 労働者側  全国金属機械労働組合港合同(「組合」)(大阪市港区)
 組合員数約800名

  全国金属機械労働組合港合同南労会支部(「支部」)(大阪市港区)
 組合員数約30名

II 南労会不当労働行為再審査事件〔平成5年(不再)第25号〕
 1 事案の概要
 本件は、南労会が、(1)組合らから平成4年4月2日付けで申入れのあった分会事務所破壊事件に関する団交の拒否、(2)組合らから同月13日付けで申入れのあった支部のKへの事情聴取の通知等を議題とする団交の拒否が不当労働行為であるとして、平成4年4月22日、救済申立てがあった事件である。
 初審大阪府労委は、平成5年4月15日、上記1(1)及び(2)はいずれも労働組合法第7条第2号に該当する不当労働行為であるとして、南労会に対し、(1)についての団交応諾及び(2)についての文書手交を命じた。
 南労会は、これを不服として、同月27日、再審査を申し立てた。

 2 命令の概要
(1)主文要旨
 初審命令主文の一部を変更する。
(1) 分会事務所破壊事件に関する団交応諾命令を文書手交命令に変更する。
(2) 賞罰委員会の開設及びKに対する事情聴取の通知等に関する文書手交命令については、これを取り消す。
(2)判断の要旨
 分会事務所破壊事件に関する団交について
 一連の交渉の経緯をみると、南労会自身も問題を団交によって解決すべき労使関係上の事柄と捉え団交に応じていたといえることなどから、本件交渉事項(分会事務所破壊問題)は、労使が団交による解決を期待し、現に団交を行ってきたものであり、その意味で団交事項であるということができる。
 また、本件団交申入れのあった平成4年4月当時においても、組合事務所の維持管理に関する問題はなお存在していたのであるから、既に交渉が尽くされ、団交が行き詰まりになっていたということはできない。
 賞罰委員会の開設及びKに対する事情聴取の通知等を議題とする団交について
 本件再審査申立て後の平成5年6月26日、南労会は、初審が命じるとおりの文書を組合に送付しており、これによって履行されたと認めるのが相当である。
 救済方法
 分会事務所破壊事件に関する救済方法については、事件発生から既に長期間を経過し、現時点において団交を実施するよう命じる必要性は乏しいこと等から、団交応諾命令を文書手交命令に改める。
 賞罰委員会開設及びKに対する事情聴取の通知等を議題とする団交については、上記に判断したとおり履行されたと認められるので、これを取り消す。

 3 本件審査の概要
 初審救済申立日 平成 4年 4月22日
 初審命令交付日 平成 5年 4月15日
 再審査申立日 平成 5年 4月27日(使)
 再審査終結日 平成17年10月27日

III 南労会(勤務時間変更等)不当労働行為再審査事件〔平成9年(不再)第37号〕
 1 事案の概要
 本件は、南労会が、(1)事前協議合意協定を無視して、平成3年8月5日付けで勤務時間等の変更(「3年変更」)を強行したこと、(2)同7年5月2日、勤務時間等の変更等(「7年変更」)を強行したこと、(3)3年変更前の勤務時間に基づき勤務していた組合員の賃金をカットしたこと等が不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 初審大阪府労委は、同9年7月30日、南労会に対し、(1)3年変更及び7年変更がなかったものとして取り扱い、速やかに労使協議を行うこと、(2)3年変更及び7年変更を理由として行った賃金カットの明細を明らかにし、この間の賃金の差額に年率5分を乗じた金額を支払うこと、(3)上記(1)及び(2)に関する文書手交を命じた。
 南労会は、これを不服として、平成9年8月14日、再審査を申し立てた。

 2 命令の概要
(1)主文要旨
 初審命令主文の一部を変更する。
(1) 勤務時間等に関し今後の取扱いについて速やかな労使協議を命じる。
(2) 3年変更及び7年変更を理由として行った賃金カットの明細を明らかにし、賃金の差額支払いについては組合らの一部取下げの限度で変更する。
(2)判断の要旨
 3年変更について
 第2次再建案及び新勤務案に関する協議状況についてみると、第2次再建案協議に関しては、夜間診療の縮小、紀和病院への配転等で合意されておらず、新勤務案に関しては、南労会は3年変更以降の組合員らの具体的な勤務パターンについても支部に説明していないことが認められる。加えて、3年変更当時には、労使間においては深刻な対立関係にあったことを併せ考えると、3年変更は誠実交渉義務に反するとともに、支部を嫌悪しその弱体化を企図したものと判断される。
 7年変更について
 7年変更を実施するに当たって、支部との団交において、南労会は使用者から示すべき事項である変形労働時間制度を導入する際の勤務時間の具体的な組み合わせを示すことなく、組合らの協議申入れにも実質的に応じなかったものと認められる。加えて、労使関係においては3年変更に従わないことなどから対立状態が続いていたことを併せ考えると、7年変更は誠実団交応諾義務違反であるとともに、支部の弱体化を企図したものであると判断される。
 3年変更及び7年変更に関連する賃金カットについて
 上記のとおり3年変更自体及び7年変更自体が不当労働行為に該当するから、これにもとづく勤務を組合員に強いることはできないと解される。よって、これらの変更に反対する組合らの活動を嫌悪して、本件賃金カットを続けることは、組合員らを不利益に取り扱い、これを通じて組合らの弱体化を企図したものと判断される。

 3 本件審査の概要
 初審救済申立日平成 3年 8月20日他
 初審命令交付日平成 9年 7月30日
 再審査申立日平成 9年 8月14日(使)
 再審査終結日平成17年10月27日

IV 南労会(紀和病院)不当労働行為再審査事件〔平成11年(不再)第39号・第40号〕
 1 事案の概要
 本件は、南労会が、(1)平成3年8月、支部紀和分会のHに退職を強要したこと、(2)平成4年3月14日、紀和分会の組合事務所破壊事件(分会事務所破壊事件)に関する調査を一方的に打ち切ったこと、(3)平成4年6月30日、Kを懲戒解雇としたことが不当労働行為であるとして、救済申立てがあった事件である。
 初審大阪府労委は、平成11年7月28日、南労会に対し、Kの懲戒解雇がなかったものとしての取扱いを命じ、その余の申立ては棄却した。
 これを不服として、南労会は平成11年10月19日、組合らは同月20日、再審査を申し立てた。

 2 命令の概要
(1)主文要旨
 Kの懲戒解雇にかかる救済命令を取り消し、本件救済申立てを棄却する。
(2)判断の要旨
 Kの懲戒解雇について
 分会事務所破壊事件の実地調査時において、Kが分会事務所階段上部の踊場で事務長を押した行為は、転落等による重大な人身事故を発生させる危険性を有するものであったこと及びその情状、さらに過去の譴責処分等を考慮すると、本件懲戒解雇処分には相当の理由が存するといわざるを得ない。Kの行為は、組合員であると否とを問わず懲戒に値するものであるから、本件懲戒解雇処分が、Kのこれまでの組合活動を嫌悪し、上記の事件等を奇貨として行われた不利益取扱いということはできない。また、その他に組合らの弱体化を企図したと認めるに足る特段の疎明はない。よって、本件懲戒解雇処分は不当労働行為には当たらない。
 したがって、南労会が行ったKの懲戒解雇処分は労働組合法第7条第1号及び第3号に該当する不当労働行為であるとした初審命令は、これを取り消すこととする。
 分会事務所破壊事件の調査の打切りについて
 組合らの主張する分会事務所破壊事件に関する団交拒否の事実をもって、本件の調査の打切り自体が支配介入に当たる理由とすることはできないし、その他の一連の事実をみても、この調査打切り自体が組合らの弱体化を企図したものとまではいえない。
 よって、この点に関する初審命令の判断は相当である。
 Hに対する退職の強要について
 当委員会においても、上記の初審命令の判断を覆すに足る疎明はなく、この点に関する組合らの主張は採用できない。

 3 本件審査の概要
 初審救済申立日平成 3年 8月22日他
 初審命令交付日平成11年10月 6日
 再審査申立日平成11年10月19日(使)、20日(労)
 再審査終結日平成17年10月27日


トップへ