平成17年10月17日
中央労働委員会事務局
第二部会担当審査総括室
審査総括官 神田義宝
Tel  03-5403-2162
Fax  03-5403-2250

西日本旅客鉄道(西労広島懲戒処分等)不当労働行為再審査事件
〔平成11年(不再)第32・33号〕
命令書交付について


 中央労働委員会(会長 山口浩一郎)は,平成17年10月17日までに,標記事件の再審査命令書を関係当事者に交付しましたので,お知らせします。
 命令の概要等は,次のとおりです。

I    当事者

 再審査申立人(11−32)・再審査被申立人(11−33)
    : 西日本旅客鉄道株式会社(鉄道業;従業員約4万8,000名)
 再審査申立人(11−33)・再審査被申立人(11−32)
    : ジェーアール西日本労働組合(大阪市所在;組合員約3100名)
    : ジェーアール西日本労働組合広島地方本部(広島市所在;組合員約800名)
ほか3名

II   事案の概要等

 本件は,西日本旅客鉄道株式会社(以下「会社」)広島支社(以下「支社」)が,ジェーアール西日本労働組合(以下「組合」)及び同組合広島地方本部(以下「地本」)並びに同地方本部の下部組織である広島運転所分会,下関運転所分会,徳山運転所分会所属の組合員に対して行った配転命令,懲戒処分,出向命令等がいずれも不当労働行為であるとして,平成6年12月15日から同10年2月4日にかけて,広島県労働委員会(以下「広労委」)に救済申立て,追加申立てを行った事案である。
 初審広労委は,平成11年8月5日付で,上記申立てのうち,広島運転所分会員ら計8名に対する配転命令,広島運転所分会員ら計7名に対する懲戒等処分についてはいずれも不当労働行為に当たらないとして棄却したが,徳山運転所分会長(当時)に対する懲戒処分(出勤停止),出向命令についてはいずれも不当労働行為に当たるとして,出勤停止処分の取消し及び期間分のバックペイ並びに出向命令に関する文書手交を命じた。
 会社,組合らは,いずれも上記初審命令を不服として,平成11年8月17日,再審査を申し立てた。

III   命令の概要等

 命令主文要旨
(1)  初審命令主文第1項(徳山運転所分会長にかかわる出勤停止期間分のバックペイ),第2項(文書手交)をいずれも取消し,これにかかる本件救済申立てを棄却する。
(2)  組合らの再審査申立てをいずれも棄却する。

 判断要旨
(1)  下関運転所分会員ら計7名に対する配転命令について
 会社は,平成5年12月に下関運転所所属の組合員2名について,同6年2月に同運転所所属の組合員6名について,それぞれ広島運転所への配転命令を発令しているが,本件各配転命令は,いずれも業務上の必要性が認められ,かつ,多数の人材を抱え,広域かつ多数の営業拠点を有する大規模会社として,長期的,広域的視野に立ちつつ実施されたものであって人事施策として不合理とは言えず,会社の組合員らに対する差別意思,組合らに対する支配介入意図等も認められないから,いずれも不当労働行為に該当するとは認定できない。
(2)  広島運転所分会員ら計7名に対する懲戒等処分について
 同分会員らは,平成6年8月に会社が実施した広島運転所所属の運転士に対する配転命令の事前通知書交付手続の際に行った言動がいずれも懲戒事由に該当するとして懲戒等処分を課せられたものであるところ,同言動は,組合活動として行われたものと認めることが出来,目的においては正当性であったものの,会社の施設管理権のほか,業務遂行に影響を及ぼしうる態様で行われた点不相当であって正当な組合活動の範囲を逸脱したものと言え,懲戒責任を免れるものではない。
 また,同分会員らにはそれぞれ懲戒事由が認められ,各人に対する懲戒等処分も各懲戒事由に照らして相当と言え,会社の組合員らに対する差別意思,組合らに対する支配介入意図等も認められないから,不当労働行為に該当するとは認定できない。
(3)  徳山運転所分会長に対する懲戒処分,出向命令について
 本件懲戒処分は,平成6年10月,徳山運転所分会長である組合員が運転士として営業列車に乗務中,指導運転士によるいわゆる指導添乗を拒否したことに端を発し,同乗務中の業務指示違反,報告義務違反,いわゆる日勤勤務時の業務指示違反等が懲戒事由に該当するものとして課せられたものであるが,同人の言動には懲戒事由に当たるものが認められ,懲戒処分の内容も同懲戒事由に照らして相当と言え,同人に対する差別意思等をもって行われた不当労働行為に当たるものとは認められない。
 また,会社は,同年11月,同組合員に対して関連会社への出向命令を発令しているが,会社では,従前から,企業の合理的効率的運営,社員の職種職場拡大や能力開発,また余裕人員の活用策等として有用であるとして積極的に社員の出向を実施していたものであり,本件出向命令もかかる人事施策の一環として関連会社からの出向要請に応じて行われたものと認められるから不合理とは言えず,会社の同組合員に対する差別意思,組合らに対する支配介入意思等に基づくものとは認められないから,不当労働行為に該当するとは認定できない。よって初審命令は取り消されるべきである。

【参考】
 ●本件審査の概要
 ・ 初審救済申立日  平成 6年12月15日(広島県労委平成6年(不)第7号)
 ・ 初審命令交付日  平成11年 8月 5日
 ・ 再審査申立日  平成11年 8月17日
 ・ 再審査結審日  平成13年 4月11日(当事者最終陳述終了)


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