平成17年10月7日
中央労働委員会事務局審査課
特定独立行政法人等審査官
黒田 正彦
Tel 03−5403−2166
Fax 03−5403−2250

郵政省藤沢郵便局等不当労働行為事件(平成10年(不)第6号)
命令書交付について


 中央労働委員会(会長 山口浩一郎)は、平成17年10月7日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。
 命令の概要等は、次のとおりです。

I 当事者
 申立人 (1)郵政産業労働組合(組合員約2,400名 平成16年9月現在)
  同 (2)郵政産業労働組合関東地方本部(組合員約60名 平成16年9月現在)
  同 (3)郵政産業労働組合相模原支部(組合員12名 平成16年9月現在)

 被申立人 (1)日本郵政公社(東京都千代田区)(職員数約27万名 平成16年4月現在)
  同 (2)日本郵政公社関東支社(埼玉県さいたま市)
  同 (3)日本郵政公社相模原郵便局(神奈川県相模原市)

II 事案の概要
 本件は、藤沢郵便局及び相模原郵便局において、申立人郵政産業労働組合(以下「郵産労」という。)の各支部に対して組合事務室を貸与されないことが、組合事務室が貸与されている他組合と郵産労の各支部を差別するものであり、労働組合法第7条第3号の不当労働行為に該当するとして、平成10年11月6日、救済申立てのあった事件である。
 なお、藤沢郵便局に係る申立ては、組合事務室が貸与されたことにより取り下げられた。

III 命令の概要
 1 主文
(1)被申立人日本郵政公社(以下「公社」という。)は、申立人郵産労相模原支部(以下「組合」という。)に対して、相模原郵便局の施設内に組合事務室の使用を承認しなければならない。
 また、公社は、組合事務室の場所、広さ等の具体的条件について組合と誠意をもって速やかに協議し、合理的な取決めをしなければならない。
(2)公社関東支社長及び相模原郵便局長に対する申立ては却下する。
(3)その余の申立てを棄却する。

 2 判断の要旨
(1)組合事務室の貸与における使用者の中立保持義務について
 複数組合の併存下において、一方の組合には組合事務室を貸与しておきながら他方の組合に対して貸与を拒否することは、組合間で取扱いを異にする合理的な理由が存在しない限り、使用者が他方の組合の弱体化を図ろうとする意図を推認させるものとして、労働組合法第7条第3号の不当労働行為に該当すると解される。
 郵政事業の公共性及び施設の性質を考えると、利用可能な施設の状況は、合理的な理由の存否の判断に当たって重要要素であるといえるが、本件のように新たに結成された組合が長期にわたって組合事務室の貸与を要求した場合には、使用者は、その組合にも、同じような措置(組合事務室の貸与)を講ずる方策を、状況に応じ検討する義務があるのであり、局舎に貸与できる余裕があったか否かという絶対的な事情(不使用又は遊休施設の存在)だけではなく、他組合への組合事務室貸与時と比較した相対的な施設の推移の状況(他組合への組合事務室貸与後の増改築の状況、使用方法の変更、業務量の変動等による施設状況の推移)も考慮して、中立保持義務との関係から、上記合理的な理由の存否を判断すべきである。

(2)相模原郵便局における組合事務室の不貸与について
 相模原郵便局では、現局舎の使用開始時に他組合に対して組合事務室が貸与された後、局舎のスペースが広くなるような増改築は行われていないが、平成8年9月の橋本郵便局の分局は、3分の1を超える職員の異動を伴う大きな組織変更であり、取扱業務量にもそれなりの変動が生じたと推定され、局舎事情も改善していたと判断される。また、これ以降、相模原郵便局の局舎には、使用方法を変更した例がかなり認められる。
 このような施設の状況からすれば組合事務室の貸与について検討の余地があったにもかかわらず、当局がその可能性について何らの検討も行ったとは認められない。しかも、組合の当面の措置要求である鉄庫等の貸与すら一顧だにしていない。これらからみると、当局は、局舎事情の如何にかかわらず、組合の組合事務室貸与要求を一貫して拒否する方針であったとみられてもやむを得ないものである。
 したがって、相模原郵便局において、他組合に組合事務室を貸与し、組合に組合事務室を貸与しないことに合理的な理由があるとはいえず、本件は、組合の弱体化を図ろうとする意図を推認させるものとして、労働組合法第7条第3号の不当労働行為に該当すると判断される。

(3)被申立人適格について
 不当労働行為救済命令の名宛人とされる使用者は法律上独立した権利義務の主体であることを要すると解されるから、本件の被申立人は法人である公社と判断する。公社関東支社長らは、法人である公社の一組織の長にすぎない。

(4)救済方法について
 救済方法については、複数の組合間に、組合員数、組織率等の点において明白な違いが認められる場合には、組合事務室の貸与にまで至らずとも、中立保持義務を果たすものとして相当の合理性ある措置を命ずることで足りる場合もあると考えられる。
 本件については、組合と組合員数が近似している他組合とを比較すると、結審時の組合員数はほぼ同規模であること、また、組合の組合員数は一応組合活動をまとまって行うに足りる数と判断されるので、主文のとおり命ずるのが相当である。
 なお、申立人は、謝罪文の掲示も求めているが、当委員会は、主文のとおりの命令をもって足りるものと認める。


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