平成17年9月30日
中央労働委員会事務局
審査総括官 熊谷正博
Tel 03−5403−2172
Fax 03−5403−2250

エッソ石油(油槽所閉鎖)不当労働行為再審査事件
(平成3年(不再)第37号)命令書交付について


 中央労働委員会第三部会(部会長 荒井史男)は、平成17年9月30日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付しましたので、お知らせします。命令の概要等は、次のとおりです。

I 当事者
 再審査申立人 スタンダード・ヴァキューム石油自主労働組合エッソ大阪支部(豊中市)
   組合員数4名(17年5月17日現在)
 再審査被申立人 エクソンモービル有限会社(東京都港区)
   従業員数約1,300名(17年1月31日現在)

II 事案の概要
 本件は、会社が、昭和60年3月31日付けで野田油槽所を閉鎖し、組合員を配転したことが不当労働行為であるとして争われた事件である。
 平成3年7月5日、初審大阪府労委は救済申立てを棄却し、支部はこれを不服として、同月17日に再審査を申し立てた。

III 命令の概要
 1 主文
 本件再審査申立てを棄却する。
 2 判断の要旨
 下記(1)及び(2)については、初審命令の一部を改めた外はその判断を引用したので、以下にその概要を記載する。
(1) 野田油槽所の閉鎖に関する支部との協議について
 昭和59年11月13日、会社は組合に対し、同60年2月末をもって野田油槽所を閉鎖する旨通知するとともに、支部に対しても同通知書の写しを送付した。以後、9回にわたる団交で会社は、同油槽所の閉鎖の背景や代替案等について説明していた。一方、組合は、同油槽所の閉鎖を撤回せよと繰り返すのみであり、また、団交には支部役員も出席していた。これらからすれば、会社は、同油槽所の閉鎖について誠実に団交を行っていたと認められ、しかも団交には支部役員が出席していたのであるから支部の意見も反映されていたと推認され、会社が別途同議題について支部と団交を行う必要性は認められない。
 したがって、会社が支部と団交を行わずに同油槽所を閉鎖したことをもって支部の団結権を侵害したものということはできない。
(2) 野田油槽所の閉鎖及びこれに伴う組合員U、Mの配転について
 野田油槽所は、(1)昭和57年を最後に輸入重油の受入れがなくなったこと、(2)昭和30年代は50〜70万キロリットルであった年間出荷量が、40年代に20万キロリットル台、50年代に入ると10万キロリットル台となり、59年には約8千キロリットルと最盛期の100分の1となったこと、(3)会社は団交において、同油槽所の規模を縮小して運営する等の代替案を検討したが、いずれも経営効率上採用し難い旨具体的数字を挙げて組合に説明したこと、(4)昭和55〜61年までの間、会社は、同油槽所以外に17か所の油槽所及び出荷事務所を閉鎖し、同時期には同業他社も油槽所の統廃合を進めていた状況であったことがそれぞれ認められる。
 野田油槽所閉鎖に伴う組合員の配転については、(1)会社は、第1回団交において、Uについては通関業務のベテランであるとして鶴見油槽所を、Mについては以前から現業職を希望していたことを考慮して袖ヶ浦油槽所を提示したが、組合は野田油槽所の閉鎖の撤回に固執し、第6回団交において初めて配転条件を示したものの、単に大阪支部内への転勤を考慮すべきであるとするにとどまり、同人らの個別、具体的な事情は指摘しなかったこと、(2)会社は、第7回及び第8回団交において、組合員の転勤先についてそれぞれ候補地を追加して組合ないし個人の選択を入れることができる旨述べたが、組合はこれに応えることなく野田油槽所閉鎖を撤回せよと繰り返すに止どまったこと、(3)他組合(エ労)は、労使協議会において組合員の個別、具体的な事情を指摘し、エ労から要請のあった緊急融資を会社が決定したことにより、エ労組合員の大阪充填所への転勤が了解されたこと、(4)組合は会社に対し、Uらについて鶴見油槽所に暫定的に就労するよう指令を出す用意がある旨述べ、同人らは同油槽所に勤務していること、(5)会社は、野田油槽所の現地において、同油槽所の縮小及び閉鎖に関する団交を行っていたこと、(6)会社が野田油槽所の閉鎖を通知するに際し、支部に写しをもって通知したと同様に、エ労の下部組織にも写しをもって通知しており、このような取扱いは他の閉鎖された油槽所においても同様であり、会社は他の組合と差別した取扱いをしていなかった。
 以上のことからすれば、会社は、野田油槽所の出荷量が大幅に落ち込んでいる状況に鑑み、その対応策を検討した結果、同油槽所の閉鎖を決定したもので、かかる会社の決定は企業維持を図るための経営政策上の判断であったと解するのが相当である。
 また、組合員の配転は、配転先について選択の余地を与えるなどした上で、ある程度当事者の事情も考慮されたもので、不合理なものとはいえないのに対し、組合は、具体的な転勤の条件を示すことなく、閉鎖の撤回に固執したものであり、更にエ労との比較においても、同配転について差別的取扱いがなされているとの特段の事情は認められない。
 したがって、野田油槽所の閉鎖及びこれに伴う組合員の配転は、専ら経営政策上の判断で行われたものであって、支部の組合活動を嫌悪し、支部組合員を不利益に取り扱うことによって、その団結を破壊する意図をもってなされたものとはいえないから、労組法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるということはできない。
(3) 支部の補足主張について
 支部は、ホテル阪神会議の出席者が同会議の内容をメモしたノートの記載内容から、同会議が組合員を解雇するための段取りを話し合ったものであり、このこと自体不当労働行為であると主張するが、同会議において、大阪支店長らが組合員の職場における問題行動とその対策について検討、協議する過程で、組合員の配転ないし解雇などの話が出たことまでは窺えるが、それ以上に配転ないし解雇について結論が出たとか、「支部潰し」が「謀議」されたなど、同会議の内容が支部が主張する趣旨のものであったとは認め難く、他にこれを認めるに足りる証拠はない。ましてや、会社が支部潰しの一環として、野田油槽所の閉鎖とこれに伴う組合員の配転をしたとはいえないことは上記(2)のとおりであるから、組合の主張は認められない。

【参考】 本件審査の経過
  初審救済申立日  昭和61年 3月28日 (大阪府労委 61年(不)第14号)
  初審命令交付日  平成 3年 7月 5日
  再審査申立て  平成 3年 7月17日


トップへ