平成17年8月29日
中央労働委員会事務局
第三部会担当審査総括官 熊谷正博
Tel 03−5403−2172
Fax 03−5403−2250

明和運輸不当労働行為再審査事件
(平成15年(不再)第41号)命令書交付について


 中央労働委員会(会長 山口浩一郎)は、平成17年8月29日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付しましたので、お知らせします。命令の概要等は、次のとおりです。

I 当事者
再審査申立人 明和運輸有限会社【福岡県遠賀郡】
   従業員数35名(16年2月26日現在)
再審査被申立人 全国一般労働組合全国協議会北九州合同労働組合(ユニオン北九州)【北九州市】
   組合員数115名 (16年2月26日現在)

II 事案の概要
 本件は、明和運輸有限会社(以下「会社」)が、ユニオン北九州明和運輸分会の分会長F、副分会長A、元分会長のUを、運転日報への稼働時間不正記入・業務妨害言動・始末書提出拒否等があったとして、Aを平成13年5月31日付けで3日間の、Fを同年6月15日付けで3日間及び同年11月13日付けで5日間の、Uを同年7月9日付けで3日間の出勤停止処分に付したことなどが、不当労働行為として争われた事件である。
 平成15年8月20日、初審福岡地労委は、各出勤停止処分の撤回と同期間中の賃金相当額の支払いを求めた部分の救済申立てを認容し、その余の申立ては棄却したところ、平成15年8月29日、会社はこれを不服として再審査を申し立てた。

III 命令の概要
 1 主文
 本件再審査申立てを棄却する。
 2 判断の要旨
(1) 本件出勤停止処分の前後における労使関係について
 会社に組合の分会が結成されて以降、労使関係は険悪な状況となっていたが、その後、争議状態解決のための協定を締結したことに伴い、労使関係は比較的安定した状況となった。しかしながら、組合事務所設置問題で、組合が会社提案を受け入れず、13年4月1日から、暫定組合事務所として使用することを合意していた会社事務所2階の集会室兼仮眠室に泊まり込みを始めたことから、会社は、集会室兼仮眠室の使用を認めず、その明け渡しを求める仮処分申請を行った。これに対し、組合は強く反発し、抗議行動を繰り返し、会社における労使関係は一挙に対立を深めていった。そして、F分会長外2名の組合員に対する出勤停止処分は、このような労使関係の最中に行われたものであったが、組合はこの処分の撤回を求め、会社敷地内での抗議行動や社長の自宅前での街宣活動などを繰り返し、F分会長の第2回目の出勤停止処分が行われた同年11月頃の労使関係は従前にも増して険悪化していた。これらのことからすれば、会社は激しい組合活動を繰り返す組合を次第に嫌悪し、とりわけ組合活動の中心的役割を担っていた分会幹部に対する嫌悪感を強めていたと推認される。
(2) 本件出勤停止処分について
 会社は、本件出勤停止処分について、個々の組合員の非違行為に対して適正になされたものと主張した。命令は、本件出勤停止処分が適正に行われたかについて、Aの出勤停止処分、Fの第1回・第2回出勤停止処分及びUの出勤停止処分の処分通知書に処分事由として掲げている事実を個別に検討し、更に手続が適正であったかについても検討を加えた上で、下記ニのとおり判断した。
 Aの出勤停止処分及びFの第1回出勤停止処分について、処分事由として掲げている事実の中には、A及びFも反省自戒しなければならない点もある。しかしながら、会社がそれに対して解雇に次いで重い出勤停止処分で臨むことは重きに失し、懲戒処分として相当性を欠くものである。その余の処分事由として掲げている事実は、従前は問題としていなかった事実や事実としての存在が認められないか、疎明がない、又は処分事由に該当するとは認めることができないものであり、これらを理由にA及びFを出勤停止処分とすることは肯認できない。
 次にUの出勤停止処分及びFの第2回出勤停止処分について、処分事由として掲げている事実は、いずれも処分事由に該当するとは認めることはできないものである。
 手続が適正であったかについては、会社はAについて社内賞罰委員会、F及びUは役員会の審議の結果としており、会社が一定の手続を経た上で決定したと推認できるが、本件審問において会社側証人は、社内賞罰委員会については、それらしきものがある旨を、また、役員会の審議結果としている点については、特別深い意味はない旨を証言している。このことからみて、社内賞罰委員会の存在自体に疑義がある上、役員会との役割の違いも曖昧であり、これらの機関において適正な審議が行われたか極めて疑わしい。
 以上のとおりであるから、本件出勤停止処分が、個々の組合員の非違行為に対し、適正になされたものであるとする会社の主張は到底認めることはできない。
(4) 不当労働行為の成否について
 上記の判断に加え、本件審問における会社側証人の証言によれば、会社も組合事務所の設置問題を巡る組合の対応が本件出勤停止処分の契機となったものと認めている。しかも、処分理由とされるものは、事実としての存在が認められないものが多く含まれるなどいい加減で杜撰なものであった。以上のことを併せ考えると、本件出勤停止処分は、組合を嫌悪する会社が、組合に対する反撃、報復手段として行ったものと思料されるから、かかる会社の行為は、労組法7条1号の不利益取扱いであり、同条3号の支配介入に当たる。

【参考】
 本件審査の経過
  初審救済申立日  平成13年11月 8日 (福岡県労委 平成13年(不)第6号)
  初審命令交付日  平成15年 8月20日
  再審査申立て  平成15年 8月29日


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