平成17年8月24日
中央労働委員会事務局
 第二部会担当審査総括室
   審査総括官 神田義宝
Tel 03-5403-2162
Fax 03-5403-2250

ノテ福祉会事件不当労働行為再審査事件〔平成15年(不再)第40号〕
再審査命令書交付について


 中央労働委員会(会長 山口浩一郎)は、平成17年8月23日、標記事件の再審査命令書を関係当事者に交付しましたので、お知らせします。
 命令の概要等は、次のとおりです。

I 当事者
 再審査申立人社会福祉法人ノテ福祉会(札幌市所在)〔特別養護老人ホーム等運営 従業員約250名)
 再審査被申立人(1)北海道福祉ユニオン(札幌市所在 組合員約1,400名)
   同(2)札幌中小労連・地域労働組合(札幌市所在 組合員約3,100名)

II 事案の概要等
 1 本件は、ノテ福祉会(以下「法人」)が、(1)北海道福祉ユニオン(「福祉ユニオン」)及び札幌中小労連・地域労働組合(「地域労組」)の傘下組合である札幌地域労組ノテ福祉会支部(「ノテ支部」)を誹謗中傷する内容の「法人本部ニュース(以下「ニュース」)No.1」、「同No.3」及び「同No.4」と題する書面をそれぞれ回覧し、掲示した、(2)ノテ支部組合員Mの重大ではない業務上のミスをとらえて、ことさら重い処分を科すとして脅した、(3)平成14年2月27日結成されたUIゼンセン同盟オール・ノテ・ユニオン(以下「別組合」)の組織拡大を支援したり、「ニュース」などの媒体を使って別組合を美化したり、別組合の役員が職務上の立場を利用して、職員を別組合に加入させる行為を容認するなどした、として、両組合が、支配介入の禁止並びにポスト・ノーティス及び同文の新聞紙面への掲載を求めて、上記(1)については平成13年12月27日に救済申立てを行い(以下、この救済申立てを「第一次救済申立て」という。)、また、上記(2)及び(3)については平成14年5月15日に第一次救済申立てに追加して救済申立てを行った事件である。
 2 初審北海道労委は、平成15年8月4日付で、前記1の(1)については、ニュースNo.1及びNo.3の回覧、掲示について不当労働行為の成立を認め、正当な組合活動を批判したり抑制する内容の「ニュース」の回覧、掲示による支配介入の禁止を、1の(2)及び(3)については、それぞれ不当労働行為であるとして、(2)については、ことさら重い処分を科すと言って脅し、また、組合員の心理的動揺をねらうなどして組合の弱体化を図るなどによる支配介入の禁止、(3)については、別組合の組織拡大を支援したり、別組合役員が職務上の立場を利用して加入勧誘を行うことを容認する等による支配介入の禁止、並びに上記(1)ないし(3)に関するポスト・ノーティスを命じ、その余の申立て棄却した。
 3 法人は、この初審命令を不服として、初審命令の取消し及び救済申立ての棄却を求めて、平成15年8月25日、再審査を申し立てた。
 4 争点
(ア)
@ 法人がした「ニュースNo.1」及び「同No.3」の掲示、回覧が労働組合法(以下「労組法」という。)7条の禁止する支配介入に該当するか(争点(1)ーa)
A 初審命令主文第1項が命ずる内容は、使用者の表現の自由を無視したものであって、違法な命令として取り消されるべきものであるか(争点(1)ーb)
(イ) Mの業務上のミスに対する法人の対応が労組法7条の禁止する支配介入に該当するか(争点(2))
(ウ) 法人が、別組合を美化し、同組合の役員が職務上の立場を利用して職員を同組合に加入させる行為を容認するなど同組合の組織拡大を支援したか、また、これらの行為が存在する場合、労組法7条が禁止する支配介入に該当するか(争点(3))

III 命令の概要等
 1 命令主文要旨
@ 初審命令主文第3項(Mに関する部分)を取り消し、同第4項(ポスト・ノーティス)中Mに関する部分を削除する。
A その余の本件再審査申立棄却
 2 判断要旨
 「ニュースNo.1」及び「同No.3」の回覧、掲示について(争点(1)-a)
 法人は、「ニュースNo.1」及び「同No.3」の回覧、掲示によって、法人と組合が厳しい対立関係にある中で、組合が「横暴」で「行き過ぎた」、「歪んだ」行動をしており、「現場の荒廃を進行させ」ているとの印象を職員に植え付けようとしたものとみることができ、このような法人の行為は、組合を批判する言動としても行き過ぎたものであり、法人の行った本件「ニュース」の回覧、掲示は組合の運営に対して支配介入するものである。
 初審命令主文第1項は表現の自由を無視するものか(争点(1)-b)
 初審命令主文第1項が一般に「ニュース」の回覧、掲示を禁ずるものではなく、「正当な組合活動を批判したりする内容のニュースの回覧、掲示などによる支配介入の禁止」を命じていることは明らかであるから、法人の主張は採用できない。
 M処分問題にかかる法人の対応について(争点(2))
 法人は、Mに対する処分について、組合との労働協約に基づいて事前協議を行い、その過程で組合の意見に照らして処分内容について再検討を重ね、さらに団交による折衝の結果処分しない旨を表明し、結果としてはMの不適切な行為にもかかわらず何らの処分も行っていない。また、法人が「ニュース」を回覧、掲示したのは、組合が処分問題等についての申入書を組合掲示板に掲示したことに対し、法人としての説明を回覧、掲示したものといえ、これによって法人が組合員に心理的動揺を与え、また、弱体化を図ったものとみることはできない。したがって、Mの処分問題に関する対応において、法人が支配介入を行ったとまで断ずることはできない。
 別組合に対する法人の支援等について(争点(3))
 法人は、ことさらに別組合を賞賛して、組合と別組合との法人における取り扱いの差を職員に知らしめ、組合の職員に対する影響を減殺し、また、別組合の組織拡大を支援して法人内における組合の組織力、交渉力を削ぎ、組合の弱体化を図ったものといわざるをえず、それによって組合運営に対する支配介入を行ったとみざるをえない。
 以上のとおり、M処分問題に係る法人の対応はこれを不当労働行為とまで断ずることはできず、この点に関する初審命令は取消しを免れないが、その余の点に関する法人の主張はいずれも理由のないものであるので、これらの点に関する法人の再審査申立ては棄却を免れない。

【参考】
 ●本件審査の概要
 ・初審救済申立日 平成13年12月27日(第2次申立日は、平成14年5月15日)
 ・初審命令交付日 平成15年8月19日
 ・再審査申立日 平成15年8月25日
 ・再審査結審日 平成16年9月10日
 ・再審査終結日 平成17年8月23日


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