平成17年8月1日
中央労働委員会事務局
 第二部会担当審査総括室長 神田 義宝
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西日本旅客鉄道(西動労戒告処分等)不当労働行為再審査事件
(中労委平成16年(不再)第35号)命令書交付について


 中央労働委員会(会長 山口浩一郎)は、平成17年7月29日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。
 命令の概要等は、次のとおりです。

I 当事者
 再審査申立人 国鉄西日本動力車労働組合(「組合」)  
  組合員6名(平成17 年2月3日現在)
 組合員K
 再審査被申立人 西日本旅客鉄道株式会社(大阪市北区)(「JR西日本」)
  従業員32,850名(平成16年4月1日現在)

II 事案の概要
 1 本件は、JR西日本が、(1)平成12年4月1日付け人事異動において、鉄道業務への復帰を希望している組合の組合員Kに対して、同人の希望と異なる人事異動(以下「本件人事異動」という。)を行ったこと、(2)同人の立席呼名点呼時の暴言を理由として戒告処分を行い(以下「本件戒告処分」という。)、同処分に基づき、同年冬季一時金を減額したこと、(3)同人が車掌科入学試験(以下「車掌試験」という。)の願書を提出したところ、上記の懲戒処分等を理由に受験推薦者として推薦しなかったこと(以下「本件車掌試験非推薦」という。)が、不当労働行為に当たるとして、(1)本件人事異動の撤回と同人の鉄道業務への復帰、(2)本件戒告処分の撤回及び一時金減額分の支払、(3)同人に対する車掌試験における今後の不利益取扱いの禁止等を求めて、大阪府労働委員会(以下「大阪府労委」という。)に救済が申し立てられた事件である。
 2 初審大阪府労委は、本件救済申立てを棄却したところ、組合及び組合員Kは、これを不服として、再審査を申し立てた。

III 命令の概要
 1 主文
 本件再審査申立てを棄却する。
 2 判断の要旨
(1) 本件人事異動について
 JR西日本は、本件人事異動は、組合員Kが氏名札及び社員徽章の不着用(組合員Kは、氏名札及び社員徽章の不着用を繰り返し、現場長らの再三の注意にもかかわらず、これを改めようとせず、不着用を理由に幾多の厳重注意や訓告を受けた。)や事務所への私物放置(勤務していた事業所の休憩室や講習室に私物を持ち込み、会社からこれを整理整頓するよう繰り返し注意指導されているのに、一向に応じず、この撤去のために2日間の勤務免除まで受けた。)をしていたことから、同人を鉄道業務に配属するのは職場規律の遵守等の観点から適格性を欠くとして行ったものとしている。
 JR西日本の行う鉄道業務は、乗客を安全に輸送するという重大な責務を負っており、このため同業務に従事する従業員にも規律の遵守が強く求められているといえるから、JR西日本が規律遵守を鉄道業務に従事する者の適格性判断において重視したことを不当ということはできない。そうすると、JR西日本が、社員徽章等の不着用や私物を放置するなど、職場規律についての遵守意識が著しく低いといえる同組合員を鉄道業務に配属しなかったことには理由があり、本件人事異動は、労働組合法第7条第1号の不当労働行為には当たらない。
(2) 本件戒告処分について
 組合員Kは、平成12年4月11日の会社の立席呼名点呼時に、自席に座ったままで点呼に応じず、経営理念等の唱和の指示にも従わなかったが、本件戒告処分は、その際、同組合員が管理職に対し行った発言が、管理職を中傷誹謗し著しく非礼である等として、JR西日本の就業規則の懲戒基準「その他著しく不都合な行為を行った場合」に該当するとしてなされたものである。
 再審査申立人らは、点呼を受ける社員4名に対し、支社管理者を含む3名の管理者により、自席を離れ横並び立席の態様で行われた本件呼名点呼は、組合員Kの処分理由を作出するため行われたものであると主張するが、当該主張を認めるに足る疎明はない。
 また、会社の経営理念等には、組合の方針に反する内容を含んでいるから唱和しなかったものであると主張するが、その内容は、会社の目的・経営理念、業務遂行上のあり方等を確認し、業務の適切な運営を図るための努力目標が掲げられたものであり、組合の存在ないし組合の活動を否定するような不当な内容が含まれているとは認められないものであるから、これを従業員に唱和させることを不当とまではいえない。
 組合員Kの当日の発言についてみると、組合員Kが会社の行う点呼等の態様には行き過ぎがあると感じたことには無理からぬものがあるとしても、「幼稚園や軍隊じゃあるまいし」と発言したほか、少なくとも「お前らはなぁ」、「会社の言いなりになって恥ずかしくないのか」と発言したことを同人は認めており、これらの発言は、本件人事異動に対する抗議であるとは認め難く、また、会社の行う点呼等の態様への抗議であったとしても、相当性を欠くものであると認められる。
 再審査申立人らは、本件戒告処分は、処分事由とされた行為に比して著しく重い処分であって、処分の相当性を欠くと主張するが、組合員Kへの本件処分は会社の懲戒処分のうち最も軽い戒告処分であり、本件組合員Kの言動の内容、態様、他の処分例との均衡等に鑑みれば、その相当性を欠くということはできない。
 よって、本件戒告処分は、労働組合法第7条第1号の不当労働行為に当たらない。
(3) 本件車掌試験非推薦について
 JR西日本は、本件車掌試験受験非推薦について、本件戒告処分及び私物放置等を理由としているが、JR西日本が規律の遵守を重視することには相当な理由があるのであるから、同社が、同試験の受験者の推薦に当たって、これらのことを斟酌することにも理由がある。そして、同戒告処分は上記(2)のとおり不当労働行為とは認められず、上記(1)のとおり組合員Kの私物放置にも問題があったのであるから、本件車掌試験非推薦は、労働組合法第7条第1号の不当労働行為に当たらない。

 【参考】
   本件審査の概要
    初審救済申立日 平成13 年3月5日(大阪府労委平成13年(不)第13号)
    初審命令交付日 平成16年5月11日
    再審査申立日 平成16年5月21日


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