平成17年7月1日
中央労働委員会事務局
 審査総括官 熊谷 正博
 Tel  03(5403)2172
 Fax  03(5403)2250

鴻池運輸(解雇)不当労働行為再審査事件(平成14年(不再)第43号)
命令書交付について


 中央労働委員会第一部会(部会長 山口浩一郎)は、平成17年7月1日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。
 命令書の概要等は、次のとおりです。

I  当事者
 再審査申立人  関西合同労働組合
 (組合員137名(平成15年6月6日現在))
 関西合同労働組合兵庫支部
 (組合員 90名(同上))
 再審査被申立人  鴻池運輸株式会社(大阪市中央区)
 (従業員6,080名(平成14年6月3日現在))

II  事案の概要
 本件は、鴻池運輸株式会社(以下「会社」という。)が、関西合同労働組合(以下「組合」という。)の下部組織である関西合同労働組合兵庫支部(以下、組合と合わせて「組合ら」という。)の組合員であって会社の従業員のSを無届欠勤が多いことなど勤務成績が不良であることを理由に平成13年2月5日付けで解雇したことが労働組合法第7条第1号及び第3号の不当労働行為に当たるとして、また、本件解雇は、団体交渉拒否の当否が争われた本件当事者間の前件不当労働行為事件の再審査中に行われたものであって、組合が平成12年3月8日に再審査を申し立てたことによる労働組合法第7条第4号の不当労働行為に当たるとして、平成13年3月5日に組合らが兵庫県労働委員会(以下「兵庫県労委」という。)に救済申立て(Sの解雇がなかったものとしての取扱い)をした事件である。
 兵庫県労委は、平成14年8月28日、本件救済申立てを棄却する命令書を交付した。これを不服として、同年9月12日、組合らは再審査を申し立てた。

III  命令の概要
 主文
 本件再審査申立てを棄却する。
 判断の要旨
(1)  組合らは、会社がSを排除するために策をめぐらし、同人が通勤災害に被災し労災申請をせずに自賠責保険による手続を選択したことを奇貨として、出勤不良となるように「はめ込んだ」ことは明らかと主張する。
 しかしながら、十川の出勤状況をみるに、平成11年3月30日から解雇されるまでの所定労働日数479日のうち、就労日数が237日であって半分に満たず、不就労日数が、有給休暇を除いても199日に及び、しかもそのうち無届欠勤日数が143日であることが認められ、Sが勤務していた六甲営業所の他の従業員と比較しても、極端に出勤率が低いといえる。また、会社の就業規則によれば、公傷病及び行政官庁の認定を受けた通勤災害について、診断書に基づき会社が認めた日数の特別休暇を与える旨規定されているところ、Sは当時、通勤途上の交通事故について、労働者災害補償保険法による請求手続をしていない。したがって、会社がSを就業規則第22条第1項第2号に規定する「勤務成績または能率が著しく不良のため、就業に適しないと認めたとき」に該当するものとして、平成13年2月5日付けで解雇したのは、相当な理由があるというべきであるから、組合らの上記主張は採用できない。
(2)  組合らは、会社が組合らを嫌悪し、会社から組合らを排除するため十川を解雇したと主張する。
 確かに、会社と唯一交渉団体約款及びユニオン・ショップ条項を含む基本労働協約を締結している申立外鴻池労組(会社従業員により組織)が存するところへ、Sが組合に加入したことに対して、会社が好ましからざる感情を持っていたことは推認するに難くない。しかしながら、会社と組合らとが、ある程度の緊張関係にあったことは認められるとしても、このことがSの解雇の決定的な動機であったとは認められないから、組合らの上記主張は採用できない。
(3)  組合らは、会社が、前件不当労働行為事件の再審査の和解交渉の過程において、組合を協定締結当事者として認めざるを得なくなるところまで追いつめられたため、Sを解雇して組合らを会社から排除しようとしたものであると主張する。
 しかしながら、当委員会は、本件当事者に対して和解を勧試し、和解案を提示したが、当委員会の和解案を受諾するか否かは当事者の意思に委ねられており、前件不当労働行為事件の再審査における組合の活動とSの解雇との間に因果関係があるとは認められないから、組合らの上記主張は採用できない。
(4)  以上のとおりであるので、本件再審査申立てには理由がない。

【参考】
 本件審査の概要
  初審救済申立日  平成13年3月 5日(兵庫県労委平成13年(不)第2号)
  初審命令交付日  平成14年8月28日
  再審査申立日  平成14年9月12日


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