平成17年6月14日
中央労働委員会事務局
第二部会担当審査総括室
審査官  藤森 和幸
Tel 03−5403−2175
Fax 03−5403−2250

東海旅客鉄道(掲示物撤去)不当労働行為再審査事件
(中労委平成10年(不再)第34号)命令書交付について

 中央労働委員会(会長 山口浩一郎)は、平成17年6月14日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。
 命令の概要等は、次のとおりです。

I  当事者
 再審査申立人  東海旅客鉄道株式会社(愛知県名古屋市)
 〔従業員約21,000名(平成15年3月31日現在)〕
 再審査被申立人  ジェイアール東海労働組合
 〔組合員約700名(平成14年10月31日現在)〕
 ジェイアール東海労働組合新幹線関西地方本部大阪第一車両所分会
 〔組合員55名(平成14年10月31日現在)〕

II  事案の概要
 本件は、東海旅客鉄道株式会社(会社)が、(1)新幹線鉄道事業本部関西支社大阪第一車両所(大一両)の助役らの管理者をして、ジェイアール東海労働組合新幹線関西地方本部大阪第一車両所分会(分会)の組合掲示板から掲示中の掲示物を延べ18回にわたり撤去したことが、分会及びジェイアール東海労働組合(組合)の運営に対する支配介入であるとして、平成7年12月1日に組合等から大阪府労働委員会(大阪府労委)に救済申立てがあった事件である(平成8年7月4日に申立ての追加を行っている)。
 初審大阪府労委は、会社による分会掲示板からの掲示物撤去行為が不当労働行為であるとしてその旨の文書手交を命じたところ、会社は、これを不服として再審査を申し立てたものである。

III  命令の概要
 主文
 文書手交についての初審命令を一部変更するほか、本件の再審査申立てを棄却する。

 判断の要旨
(1)  本件のように、組合に使用を許諾した組合掲示板からの掲示物撤去が組合に対する支配介入になるか否かについては、その使用を許諾する際における使用者と組合との間の合意が基本となり、その合意の内容は、労働協約の規定を合理的に解釈して判断すべきである。
 具体的には、本件の協約第227条第1項は、「組合は、会社の許可を得た場合には、指定された掲示場所において、組合活動に必要な宣伝、報道、告知を行うことができる。」とし、同第228条は、「掲示類は、組合活動の運営に必要なものとする。また、掲示類は、会社の信用を傷つけ、政治活動を目的とし、個人を誹謗し、事実に反し、又は職場規律を乱すものであってはならない。」としている。
 さらに同第229条は、「会社は、組合が前2条の規定に違反した場合は、掲示類を撤去し、掲示場所の使用を取り消すことができる。」と規定している。
 したがって、会社は、自らの一方的な判断によって恣意的に掲示類を撤去することができるわけではなく、協約第229条の撤去要件に該当するか否かについては、協約第227条及び第228条を合理的に解釈して判断すべきである。
 すなわち、会社は、組合に対し、あらかじめ指定した掲示場所において、組合活動に必要な宣伝、報道、告知を行うことを許諾した以上、当該掲示類を掲示することについての組合活動としての必要性を十分考慮し、協約第229条の要件に該当するか否かを判断する必要がある。
 特に本件においては、初審判断が指摘するように、職場に交代制勤務がとられていることからして、組合あるいは組合員にとって掲示板による連絡・情報共有の必要性が強いこと、掲示物が会社関係者以外の一般公衆の目に触れる機会が少ないことを併せ考えると、会社が当該掲示板から掲示物を撤去することについては、掲示板貸与の趣旨を十分考慮すべきものである。
 したがって、掲示物の内容について、それが組合の本来の関心事に関する主張である場合には、誹謗中傷の程度が行き過ぎていたり、個人のプライバシーに深く踏み込んでいるものでない限り、記載内容が全体として概ね真実に沿っていれば、許容すべきものと考える。
(2)  さらに、本件のように使用者が貸与条件に反するものとして組合掲示板から掲示物を撤去することが支配介入として不当労働行為を成立させるか否かについては、撤去の手続・手順も一つの考慮要素となると解される。すなわち、掲示板貸与に関する労働協約の円滑な運用のために、労働組合に対し、撤去を求める理由を説明し理解を得るよう努めたり、労働協約に違反すると判断する箇所を削除ないし訂正するよう求め、これら使用者の申入れに対し、組合に釈明の機会や相応の措置を取り得る時間的猶予を与える等の手続を踏んでいる場合にあっては、労使関係上の配慮がなされたものとして、支配介入としての評価をなしえない場合もあるものと考えられる。
(3)
 以上のような観点から、撤去された掲示物の内容を見ると、個々の掲示物の中には、団結権や労働条件、組合の方針と直接関係のないもの、関係があっても誹謗の程度が行き過ぎているもの、個人のプライバシーに深く踏み込んだものであって、当時、会社と組合間に多数の係争事件があり、組合と申立外の東海ユニオン(別組合)は厳しい対立の状況にあって、組合においては、組合員間の連絡・情報共有の必要性が高かったこと、及び掲示物が一般公衆の眼に触れにくいものであること等を考慮しても、撤去されてもやむを得ないと判断されるものがある。本件審査対象となった14点の掲示物のうち、3点の掲示物は、個人に対する誹謗・中傷の程度が行き過ぎであり、協約第229条にいう撤去要件に該当するものといえる。
 これに対し、上記イで検討した3点以外の11点の掲示物については、個々の記載内容には、不適切な表現や、表現に多少の誇張はあるものの、ただちに協約上の撤去事由に該当するとまではいうことはできない。そこで、これらの掲示物に対する会社の撤去行為が不当労働行為に当たるか否かについては、さらに会社が掲示物の撤去に際して、上記(2)に述べた手続・手順のうえで支配介入を否定するに足る労使関係上の配慮をしたと言えるか否かを検討する必要がある。
 協約上の撤去事由にただちに該当するとまではいえない11点の掲示物を全体として見て、撤去の経緯を検討すると、確かに会社は掲示物を撤去するに当たって、組合に対して一連の撤去要請は行っている。しかしながら、これらの撤去要請は、組合の抗議に対して、当初から耳を傾ける態度を示すことなく行われ、具体的に掲示物のどの箇所がどの様な理由で協約に違反するかを明示せず、時間的にも、ほぼすべて概ね1時間から半日後には撤去に至り、組合に対応の暇を与えていない。
 以上のことから、会社の上記撤去行為は、全体としてその手続・手順を見ても支配介入を否定するだけの労使関係上の配慮をしたとは認め難い。
(4)  以上を総合するに、本件14点の掲示物のうち、11点の掲示物を撤去した会社の行為は、協約第229条に定める撤去要件に該当するとまではいえず、全体としてみると組合結成以来の厳しい労使の対立関係の中で、自らに都合の悪い掲示物を一方的に撤去したものと認めることができるのであり、組合に対する支配介入として、労働組合法第7条第3号に該当する不当労働行為であると判断できる。

【参考】
 本件審査の概要
  初審救済申立日   平成 7年12月 1日 (大阪府労委平成7年(不)第78号)
  初審命令交付日   平成10年 9月29日
  再審査申立日   平成10年10月12日


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