平成16年8月20日
中央労働委員会事務局審査第二課
審査官   笹川 康二
Tel 03−5403−2172
Fax 03−5403−2250

西日本旅客鉄道(西労兵庫脱退勧奨)不当労働行為再審査事件
(平成14年(不再)第53号)命令書交付について


 中央労働委員会(会長 山口浩一郎)は、平成16年8月20日、標記事件に係る命令書を関係当事者に交付したので、お知らせします。
 命令の概要は、次のとおりです。

I 当事者
 再審査申立人 ジェーアール西日本労働組合(「JR西労」)(大阪市此花区)
   組合員 約1,500名(平成14年6月現在)
   同 ジェーアール西日本労働組合近畿地本(「近畿地本」)(大阪市天王寺区)
   組合員 約600名( 同 )
 再審査被申立人 西日本旅客鉄道株式会社(「会社」)(大阪市北区)
   従業員 約36,500名(平成14年4月現在)

II 事案の概要
 本件は、会社の助役が、JR西労及び近畿地本(以下、JR西労と近畿地本を併せて「組合」)所属の組合員らに対し、(1)加古川鉄道部において、JR西労青年部があっせん販売しているネクタイ(「オリジナルネクタイ」)を外すよう求めて別のネクタイを手渡し、また、人事異動における不利益を示唆したり、新たな昇進・賃金制度における賃金試算表(「賃金試算表」)を交付したりするなどして組合からの脱退を慫慂したこと、(2)姫路鉄道部において、転勤に際し、組合に所属していては異動先について希望がとおらないことを示唆して組合からの脱退を慫慂したことは、それぞれ会社の不当労働行為に該当するとして、救済申立てがなされた事件である。
 初審兵庫地労委は、本件申立てを棄却したところ、組合はこれを不服として再審査を申し立てた。
 当委員会は、初審命令の一部を変更し、一部救済を命じた。

III 命令の概要
 1 主文の要旨
(1) 組合員に対して組合からの脱退を慫慂することによる組合の運営に対する支配介入の禁止
(2) 上記に係る文書の手交
(3) その余の本件救済申立て及び本件再審査申立ては棄却
 2 判断の要旨
(1) 加古川鉄道部における助役(総務科長及び当直助役)の行為について
 総務科長の行為について
(ア) 総務科長が組合員A(「A」)に対し、オリジナルネクタイを外すよう求めて別のネクタイを手渡した行為は、交番担当に異動となり、乗務員に対する点呼の執行等の職務を行うようになったAにつき、オリジナルネクタイの着用は組合意識を感じさせるものであって好ましくないとの観点から行われたものと認めるのが相当であり、組合活動の抑制に当たるか否かはともかくとして、本件における事実関係のもとでは、組合から脱退させようとしてなされたものとまでは認められない。
(イ) 総務科長がAに対し、交番担当から外すことや転勤させることなどの発言を行ったことは、組合から脱退しなければ将来の昇進や異動において不利益に扱う旨を示唆するものであり、また、Aが昇格した場合の賃金試算表を手渡した行為は、組合を脱退すれば昇格において有利に扱う旨を暗黙のうちに示唆したものであって、これら二つの行為は両者一連のものとして、組合から脱退させることを企図したものと解さざるを得ない。
(ウ) (1)総務科長の上記(イ)の行為は、個人、あるいは別組合の組合員としての立場に基づくものとは認められないこと、(2)総務科長は、人事に関して一定の影響力を与えうる地位にあったことが認められ、従業員もそのように認識していたと推認されること、(3)当該行為はAの昇格試験の合否発表前等の時期に行われたこと、(4)会社は、JR西労に対し、その発足時点から批判的な立場を取り、その後もスト等をめぐり緊張関係を続けてきているほか、オリジナルネクタイの着用は組合意識を感じさせるものとして好ましくないという認識を持ち、そうした認識は総務科長も共有していたことが認められることなどを総合すれば、総務科長は、オリジナルネクタイを着用して交番担当に当たっていたAに対し、上記(2)のような職務上の地位を利用し、会社の意を体して上記(イ)の行為を行ったものと認めることができる。
 当直助役の行為
 当直助役がAを別組合に勧誘していたことは認められるものの、当直助役は別組合の分会副執行委員長であり、分会大会でAを勧誘する旨意思統一された後はAを勧誘する担当となっていたこと、Aを勧誘する際に、当直助役としての地位を利用して昇進や昇級などで有利に扱う旨をほのめかしたなどの疎明はなく、会社からの指示を受けて脱退慫慂を行ったとの疎明もない。
 以上のことからすると、当直助役の当該行為は別組合の組合活動としてなされた行為とみるのが相当である。
(2) 姫路鉄道部における助役(車両科長)の行為について
 車両科長が組合員B(「B」)に対し、個人面談以降3回にわたって転勤の話をしていることは認められるものの、その際に、Bがどのような意向を述べたか明らかではなく、また、車両科長が行ったとする組合に関する発言についても十分な疎明はなされていない。
 したがって、車両科長がBに対して脱退慫慂を行ったものと認定するに足りる疎明はないと言わざるを得ない。
(3) 結論
 以上の次第であるから、組合が不当労働行為であると主張する事実のうち、加古川鉄道部における上記(1)ア(イ)の総務科長の行為は、組合からの脱退を慫慂したものであり、労組法第7条第3号の不当労働行為に該当する

【参考】
 1 本件審査の概要
 初審救済申立日 平成12年 3月 1日(兵庫地労委平成12年(不)第2号)
 初審命令交付日 平成14年10月30日
 再審査申立日 平成14年11月11日(中労委平成14年(不再)第53号)
 2 初審命令主文 本件申立てを棄却する



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