総合福祉部会 第18回 H23.8.30 参考資料1 氏田委員提出資料 「支援つき意思決定制度」 〜自己決定権を保障する制度づくりを!〜  障がい者制度改革推進会議総合福祉部会 構成員 氏田照子    「障害者権利条約」では、障害のある人が物として見られるべきではなく、人として 平等な尊厳と待遇を受けるべきであるとしています。これまでのわが国の社会福祉の あり方は、障害のある人を保護的・管理的にあつかい、特に知的障害のある人たちは 「自分の事を自分で決める」ようにではなく、「人のいうことを聞く」ように育てら れてきました。私たち家族も、知的障害や、自閉症などの発達障害などへの誤解と偏 見があふれる社会の中で我が子を守りたいとの強い思いから、やがて本人が大人にな ってさえも保護的・管理的な本人への関わりとなっていたことは否めません。そうし た社会のありようは、社会的弱者を作り出してしまうことになります。後を絶たない 権利侵害の根本的な問題は、「障害」当事者が自己決定権を奪われているということ に他なりません。  新しい福祉法は、障害のある人たちの自分の事は自分で決める権利を保障し、知的 障害や発達障害の人たちも含めた「セルフマネジメント」を基本に据えた制度とすべ きだと思います。自分の生活に必要な支援の種類と量を自ら決定し、行政がその支給 を保障するものにしなければなりません。必要な支援の種類と量を決めるのは「障害 者」本人であり、専門家や相談支援事業者はあくまで助言者にすぎないことを明確に する制度が必要です。  一方、私たちは毎日さまざまなことを判断し決定しながら生活していますが、知的 ハンディのある人にとってはそれが難しい場面が多々あります。合わせて、知的ハン ディのある人の意思や希望を周囲の人たちが正確に汲み取れないこともたくさんあり ます。知的ハンディのある人がきちんと「自己決定」をしながら自分の生活を作って いくには、多くの困難を伴うのが実際のところです。知的ハンディのある人に対して は、セルフマネジメントそのものを支える支援が必要であり、その仕組みをつくる必 要があります。「自分の事は自分で決めたい」「情報を分かるように伝えて欲しい」 「意見を良く聞いて欲しい」「難しいことは助けて欲しい」「いっしょに考えて欲し い」というのが本人の声です。  2008年11月18日にカナダで開催された国際育成会連盟の総会で採択されたポジショ ンペーパー「支援つき意思決定制度の主要要素」においても、当事者だけでの意思決 定が難しい場合には、意思決定の際に支援をつけることとし、それを制度化しようと いう提起がされています。「自分の責任で決定しろ」と突き放すのでもなく、専門家 に判断を預けるのでもありません。本人が自分の意思に沿ってうまく決定できるため の手助けを制度化しようという提案です。  障害者権利条約を策定する際の合言葉「私たち抜きに私たちのことを決めるな」が、 総合福祉法(仮称)の中にも活かされなければなりません。セルフマネジメントやア ドボカシー、権利擁護を基盤としながらも、最も大切なのは「本人参加」です。自己 決定支援の過程のなかで、本人参加が求められます。また意思判断力の低下している 方々の一連の自己決定支援には、協働自己決定が必要となります。本人および本人の 声を中心に、支援者が自己志向、意思決定を支援していき、本人の参加を促しながら、 自己決定を確認していく過程の積み重ねが求められています。本人を中心に、相談支 援専門員、支援提供事業者、本人の側に立ち権利擁護をする第三者などが協働して、 地域の中で自分らしく生きていくために過不足のない支援を受けられるよう、セルフ マネジメントすることを支援していくシステムが構築されることを願っています。  障害者権利条約の批准に向けて整備される新法は、ぜひこの考え方を中心において さらなるブラッシュアップをはかってほしいと思います。 以上