総合福祉部会 第15回 H23.6.23 資料2−1             「地域移行」部会作業チーム報告書の概要             1.地域移行の支援、並びにその法定化 (1)「地域移行」とは何か  「地域移行」のもつ意味は、単に住まいを施設や病院から移すことではなく、障害者 個々人が市民として、自ら選んだ住まいで安心して、自分らしい暮らしを実現すること である。当然、すべての障害者が、障害の程度や状況、支援の量等に関わらず、地域移 行の対象となる。なお、「地域移行」は、住まいを施設や病院から地域に移すことのみ ではなく、家族との同居から独立し、自分の住まいを設けることも含み捉える必要があ る。 (2)「特定の生活様式を義務づけられないこと」を確保するうえでの課題と地域移行の 法定化について  障害者本人の意志や希望、選択が尊重される支援の仕組みと選択肢を作ることが早急 に必要である。これは地域で生活する障害者についても同様である。地域移行を進める ためには、地域社会で暮らすための基盤整備が最重要課題である。入所定員や病床数の 減を法定化は、それを前提としたものでなければならない。さもないと、家族の不安や 負担を強いる危険性と混乱を招きかねない。基盤整備を積極的に進めるためには、例え ば、時限立法として、「障害者の地域移行を促進するための基盤整備に関する法律」の 制定が望まれる。少なくとも、国としての「地域基盤整備○ヵ年戦略」(仮称)を策定 する必要がある。 (3)入所施設や病院からの地域移行に関して具体的な期限や数値目標、プログラムなど について  期限や数値目標は、退所・退院に向けたものだけではなく、地域での資源整備計画に こそ必要である。特に、入所者・入院者に対して定期的にそのニーズを把握し、社会的 入所・入院の軽減を図らなければならない。地域移行のプログラムは、入所者・入院者 が自ら選ぶことを前提とし、個々人の状況に合わせ作成することが重要である。プログ ラムは施設や病院の職員だけではなく、外部者が関わりながら進める仕組みが必要であ る。 (4)地域移行を進めるためのピアサポートや自立体験プログラムなどについて  ピアサポートを地域移行推進のための重要な人的資源と位置づける必要がある。地域 移行に向けた体験プログラムにはさまざまな選択肢が必要で、施設・病院と地域支援者 等の連携のもとで進めるべきである。地域での体験に際して、地域の福祉サービスも利 用でき、経済的に困難な人にはその費用を助成する仕組みが不可欠である。 (5)保証人を確保できず地域移行が出来ない人への対応としての公的保証人制度について  公的保証人制度は必要であり、自治体が保証人となるべきである。住居確保以外の場 合は、地域支援の一部として位置づける制度が望ましい。 (6)地域移行をする人に必要な財源が給付されるような仕組みについて  経済的な支援が必要な人については、新居への入居時等にかかる費用等を支援する仕 組みは重要である。これは、在宅から一人暮らし、グループホーム等に移行する障害者 についても同様である。 (7)地域移行における入所施設や病院の役割、機能について  入所施設や病院と地域生活を単純に対立軸とし、その役割、機能を論ずることは妥当 ではなく、また、現実的ではない。特に、濃密な医療ニーズが継続的にある人たちにつ いては、充分な議論が必要である。入所・入院の長期化を避けるために、「個別支援計 画」を充実させるとともに、セイフティネットとしてのニーズに対応できる専門的な支 援機能を提供する一方、地域生活に向けた支援を強化すべきである。 2.社会的入院等の解消 (1)精神科病床や入所施設からの大規模な地域移行を進めるための特別なプロジェクト について  国が特別プロジェクトとして予算を確保することが重要である。例えば、「地域基盤 整備○○カ年戦略」のように、一定期間集中的に国が主導し取り組むことが考えられ る。 (2)現実に存続する「施設待機者」「再入院・入所」問題への取り組みについて  施設待機者は、さまざまな福祉サービス利用の待機者であるとの視点に立ち、具体的 な地域基盤の整備を進めることが必要である。再入所・再入院についても、地域支援の 不足・不備からくるものとして検証し、再び地域移行にむけて支援を行うことが必要で ある。 (3)「施設待機者」「再入院・入所」者への実態調査とそれらのニーズ把握の具体的な 取り組みについて  在宅調査とともに入所者・入院者実態調査も重要である。施設に求める機能、地域で の支援の現状や課題等を把握する必要がある。その際には、障害者本人への聴き取りを 行うことが重要である。特に、全国的な調査として、地域性や地域間格差の把握が重要 であり、国としての地域移行に向けた取り組みの根拠となる。 (4)上記の調査を具体的な施策に活かすためのシステムについて  調査結果を踏まえ、「地域基盤整備○○カ年戦略」(仮称)などを策定し、一定期間 集中的に国が主導し取り組むことが必要となる。また、上記の調査を国の定期的な調査 として位置づけることで、具体的な施策を検証し、効果的な施策を講じていくことが可 能となる。  (5)スウェーデンと同様に、我が国における強力なインセンティブを持った政策の必要 性とその内容について  民間施設や民間病院に依存してきた我が国では、同様の取り組みは難しい面がある。 市町村・都道府県が社会資源開発のための戦略を障害福祉計画等に盛り込み、国は、社 会資源開発を、省庁を超えた広域事業として位置づけ推進することが求められる。地域 支援の予算の大幅な増など、地域資源を飛躍的に増加することが強力なインセンティブ になる。