総合福祉部会 第13回 H23.4.26 参考資料1 氏田委員提出資料 平成23年3月15日 障がい者制度改革推進会議総合福祉部会 部会長 佐藤 久夫様 重篤な強度行動障害者の地域生活の保障と権利の擁護について(要望書) 特定非営利活動法人 自閉症サポートセンター 理事長 松井 宏昭   (背景)  自閉症の人の中には、いろいろな要因が絡み合って通常では考えられないほど激しいパ ニックや、目を覆うほどの自傷・他害などの状態に陥る場合があります。その状態が半年 以上続き、強度行動障害判定基準表で10点以上を「強度行動障害」と言います。強度行動 障害になると一番辛いのは本人ですが、家族の負担も非常に大きく、心労でダウンするな ど、家庭生活が崩壊してしまう例も少なくありません。このような強度行動障害のある人 が地域で暮らすためには、適切な支援の手立て(地域で強度行動障害のある人の生活を保 障し権利を擁護するための仕組づくり)が必要です。  NPO法人自閉症サポートセンター(千葉県柏市)が柏市自閉症協会会員を対象に実施し た調査で、強度行動障害や引きこもりなど非常に厳しい事態にあるご本人や家族が少なく なく、その方たちへの支援は、まさに「待ったなし」の状態にあることがわかりました。 しかし、例えば千葉県では袖ヶ浦福祉センターと一部の施設しか支援の場がなく、強度行 動障害となった人の多くは地域から孤立し家族の献身によって家庭内で暮らす以外は、子 どもでも精神科病院等に入院を余儀なくさせられている状況にあります。また、これまで の取組みから、「二次障害への対策(手立て)が万全でなければ、いかなる自閉症支援であ っても不十分だ」ということも自明の事実です。 (強度行動障害に対する望ましい支援)  強度行動障害者に対する望ましい支援の一つとして、弘済学園(神奈川県泰野市)で実 施されている取組みがあげられます。すなわち、24時間365日支援が可能な環境のなかで、 医療との連携のもと薬物療法を活用しながら、許容的なリラックスできる環境を準備し、 強い刺激をさけた構造化された環境で、キーパーソンを軸にチームで取り組み、楽しい雰 囲気で、わかりやすいコミュニケーションを用いて情報提供と自己選択をしやすくし、そ の他様々な障害を理解した周囲が、次第にセルフコントロールを促し、安定した生活習慣 を積み重ねていくことが重要とされています。これらの支援では、個の状態に応じて時間 をかけ段階的にそして丁寧に成功経験を積み重ねていくことが望まれます。加えて、強度 行動障害を示す人の場合は、医療との連携が不可欠です。強度行動障害にも対応した自閉 症のある人の地域生活支援は、医療の関わりとともに居住施設がもつハード及びソフトの 機能をどう活かすかに尽きるように考えています。 (強度行動障害や自閉症のある人の地域生活の保障と権利の擁護)  以上を踏まえ、新法制定の検討において、強度行動障害を伴う自閉症のある人にも対応 できる支援として下記支援を位置づけていただきますよう切に要望します。  制度の整備に伴い、重篤な障害に対する相談支援の取組みと、既往の制度である入所施 設、グループホーム、ケアホーム、短期入所など居住に関する制度について抜本的に再検 討する必要があると考えています。  何とぞ、宜しくお願いいたします。 記  従来の施策では対応できない強度行動障害など障害の程度が重篤な人の地域生活支援を 保障し権利を擁護する基盤としての役割を担うものとして、拠点地域ごとに次を整備する。   1.強度行動障害に対応した専門的な相談・生活支援センター(仮称)の整備  強度行動障害など重篤な障害に対応するため、「強度行動障害支援」、「相談支援」、「権利 擁護」、「研修・啓発」、「医療(または医療機関との連携)」を行う相談・生活支援センター を整備し、都道府県の発達障害者支援センターと連携を図りながら、行政、相談機関、社 会福祉施設等と強力なネットワークのもとに支援を行う。ここでは、利用者の行動障害へ の対応だけでなく、利用者やご家族の心のリハビリテーション、周囲の誤解からダメージ を受けた心の回復支援を行う。 2.強度行動障害者を直接支援する施設として「リハビリテーションホーム(仮称)」の整 備  従来のケアホームやグループホームでは対応が困難な行動障害等の重い人を想定した 24時間365日対応の支援を行い、強度行動障害のある人を含めた利用者一人ひとりの地域 移行・地域定住に積極的に取り組む。利用者の行動障害への対応とともに、心のリハビリ テーション、周囲の誤解からダメージを受けた心の回復支援を行う。  また、地域のグループホームやケアホーム、さらに日中活動先の施設支援、生活支援の バックアップ施設として、いわゆる自閉症者支援の基盤的施設の役割を果たす。