総合福祉部会 第11回 H23.1.25 資料13 部会作業チーム(法の理念・目的)議事要旨(12月) 1.日時:平成22年12月7日(火) 14:00〜16:00 2.場所:厚生労働省低層棟2階講堂 3.出席者 藤井座長、藤岡委員、山本委員 4.議事要旨  今回は、『「障害者の社会生活の支援を権利として総合的に保障する法律」(案)』(以下、 法律案という。)と『「新法の理念・目的」分野に関する意見』(以下、意見書という。)に ついて、前回の論議を受けた修正の確認も含め、再度精査を行う。 【定住外国人について】  ・法の目的に「定住外国人」が対象とされているが、「定住」は削除すべき。不法滞在者 であっても支援が必要な者には支援をするべきである。意見書には国籍に関係なくとされ ており、「外国人」でいいのではないか。  ・「定住」と入れると排除される外国人がいるが、含めるかどうか議論はある。意見書に 「国籍に関係なく」と明記しているので「(定住外国人を含む)」は削除する。  ・昭和32年に出されている「矯正施設収容者に対する身体障害者福祉法の適用について」 という通知では、矯正施設内の障害者にも身体障害者福祉法は適用されるとされている。 【刑事司法との関係について】  ・刑務所で障害者手帳を申請する場合もあるが、意識のある弁護士がつく場合等でない と実際のところは支援に結びつくのは難しいのではないか。  ・福祉の立場から矯正施設等での問題を訴えていかないと司法の側の問題意識はあまり ないのではないか。  ・刑事司法における手話通訳については、福祉で対応すべきか、警察等で対応すべきか という議論もある。  ・障害者基本法には司法手続のことも書かれると思うが、どの法律に基づき予算を執行 するかという問題もある。  ・司法手続のようにどこが支援を行うかはっきりしないグレーゾーンに支援の手を伸ば す必要はあるが、一方、両方であいまいになってもいけない。  ・どこにいても支援が受けられるという意味で「総合」という言葉になっていると思っ ている。  ・どこにいても普遍的なニーズはあると思うが、日本においては、所管行政によって支 援の内容が変わる。例えば、視覚障害者は移動に困難があるが、通勤にはヘルパーは使え ないし、学校の中は文部科学省で完結している。  ・刑事手続に直結する部分は司法が支援を行うべきだが、逮捕中に生活支援が必要な場 合は福祉からの支援でよい。  ・コミュニケーション支援は決して障害者だけが受益者ではない。逮捕されている側と 捜査側の両方が利益を受けるものである。  ・接見時に聴覚障害の方が手話通訳を同行したところ、手話通訳の同席を禁じられたと いう話を聞いた。合理的配慮以前の問題として差別である。  ・障害者がどこにいても必要な支援が受けられるようにすることが大事である。特に刑 事手続および確定後被拘禁中では相談支援が重要である。  ・知的障害のある被疑者は多いが、問題意識がある弁護士はあまりいない。熱心に支援 する者がいても、前例がないのでといってなかなか支援につながらない。 【前回の修正の確認】  ・法律案について、前回からの修正点は「保護の客体」を「保護の対象」としたこと、 「福祉の現場で働く人」を「障害福祉分野の労働者」としたこと、および意見書に「合理 的配慮」の定義を追記したこと。 ◆合理的配慮の定義  ・「合理的配慮」については、「障害者が他の者と平等に基本的人権を享有し、行使する ために必要な、障害に伴う社会的不利益を埋めるために社会公共が果たすべきその人の個 別事情に即した最も相応しい支援」とした。  ・第2次意見の素案に「合理的配慮」の定義はあるのか。  ・差別の禁止の中に「相手方に均衡を失した又は過度の負担を課すものではないにもか かわらず、特定の場合において、障害のない人と等しく機会の均等を確保するための必要 かつ適当な変更及び調整である合理的配慮」とされている。  ・第2次意見では、「合理的配慮」について、障害者権利条約と同じような書き方をして いる。 ◆制度の谷間にこぼれおちない支援  ・意見書では、前回の議論も踏まえて、「制度の谷間からこぼれない支援」を「制度の谷 間にこぼれおちない支援」に修正した。  ・「制度の谷間」と言えば、委員の中では福祉的支援の対象にならない発達障害や難病と 分かるが、一般の人は制度の谷間というと例えば厚生労働省や文部科学省の施策の谷間と なっているものと受け取られるので、十分説明が必要である。 ◆精神障害者の医療について  ・意見書の第7において精神障害者に対する医療の話があるが、精神疾患患者に対する 医療については、医療法の特例扱いとなっているのが問題であり、一般医療として実施す べきである。  ・精神障害者についての医療を「医療法の分野」でと書いてあり、この「分野」に精神 保健福祉法も入ると言われるのではないか。  ・障害者に対する医療は一般医療に吸収し、福祉は総合福祉法で対応すべき。  ・「分野」と入れるとそのような可能性もあるので、「医療法において」に修正する。 ◆国と地方公共団体の責務について  ・障害者自立支援法ができ、公的責任が曖昧になった。意見書の第12に他の法律との 関係を書いているが、福祉的支援の最終責任が国と地方公共団体にあることを確認する必 要がある。この観点から、上位法的な意味もある社会福祉法を改正すべきである。  ・国や地方公共団体の資源整備の責任を拡大するのであれば、財源が絡むので難しい。 以前、自民党の中で基盤整備の時限立法の話があったが、財務省と調整がつかずにだめに なったことがあった。 ◆障害者問題をどう国民的課題にしていくか  ・未だに、障害者施設を建てようとすると反対運動が起きている。  ・障害者問題が常に重要な課題と思われるように予算をかけて啓蒙すべきである。  ・反対運動は昔よりも多くなっているのではないか。この点は差別禁止法の中でも議論 するべきである。  ・10年ぐらい前までは、厚生労働省は施設の整備に当たって、住民の同意書を持ってこ いと言っていた。自治体によっては、未だに求めているところもある。  ・人的、物的資源はある程度あるが、市民の意識を政策的に醸成していくということが 必要かもしれない。  ・テレビ等の媒体を活用することが重要である。障害者問題を理解するための番組をプ ロデュースすることも考えられる。映像の効果は大きい。  ・地域で暮らすには、周辺の理解がいる。講演をする機会もあるが、障害者権利条約を 知っている人は少ない。ムーブメントをおこしていかないといけない。 【今後のスケジュールについて】  ・今後は、今日の議論も踏まえ修正したものを早めに事務局に提出し、各委員に送付し てもらい、早めに意見をもらうようにしたい。  ・来年の夏に我々の提言を厚労省に出すが、その後は厚労省がそれを下に作成し、内閣 法制局と調整するのか、他の検討会を開催するのか分からない。  ・部会である程度条文を作って渡さないといけない。思いだけを渡すとどうとでも書か れてしまうのではないか。  ・各府省と調整を進めるにつれて我々の思いが薄まっていく可能性がある。  ・第1期の作業チームが解散するとこの後の議論を反映させる機会がなくなるので、ど のように進めるかなど座長会議で検討したいと思う。