総合福祉部会 第11回 H23.1.25 資料7−1 【訪問系作業チーム報告案】 I はじめに −主な検討範囲と検討経過−  当チームの検討範囲としては、施策体系チーム共通の【D-1-1】【D-1-2】に加え、【D-2】 生活実態に即した介助支援等実態に即した介助支援等の全項目、並びに【D-3-1】が検討範 囲であった。  総じて、障害者権利条約・第19条に示されている「障害者の地域で生活する権利」を具 現化していくために、パーソナルアシスタンスの実現を含めて、現行の訪問系サービスに 関連した事項を取り扱った。  当チームの特色として、実際に訪問系サービスを利用して地域生活をしている障害当事 者やその家族、並びに支援者等で構成されている点があげられる。そうした特性をふまえ て、座長・副座長から構成員にテーマを割り振った上で発題をしてもらう形で検討を進め た。さらに、その中で、構成員以外からヒアリングが必要な項目について参考人からのヒ アリングも行った。ヒアリング項目は下記の通りである。 ●構成員からのヒアリング (1)障害者の地域自立生活とパーソナル・アシスタント・サービスの意義、(2)見守り支援、 (3)医療的ケアを含む支援、(4)シームレスな支援、(5)移動支援と行動援護 ●参考人からのヒアリング (1)学校における介護・医療的ケア、(2)精神障害者のホームヘルプサービスの現状と課題、 (3)知的障害者の移動と生活支援の実際 ※なお、参考人に対する謝金や交通費等の支給はなく、全くの手弁当という条件下での実 施となった。そのような条件にもかかわらず、ヒアリングに快く応じて頂いた参考人の皆 様に、心よりお礼を申し上げたい。  これらのヒアリングを通しながら、座長・副座長作成の論点項目にそって構成員で検討 を進めた。 II 結論とその説明 1.重度訪問介護の発展的継承による「パーソナルアシスタンス制度」の確立【D-1-1】【D-1-2】 【D-2-1】【D-2-3】【D-2-4】【D-2-5】 1) 「パーソナルアシスタンス制度」確立の方向性 結論 ○「パーソナルアシスタンス制度」の確立に向けて、現行の重度訪問介護を改革し、 充実発展させる。  障害者権利条約第19条において地域自立生活のために不可欠な援助として位置づけら れている「パーソナルアシスタンス」とは、「いわゆるホームヘルプサービスなどのケアワ ークのオルタナティブとして、1970年代以降の自立生活運動を中心とする障害当事者運動 のなかで求められ、…(中略)…基本的には(1)利用者による介護者の募集、(2)利用者と介 護者の雇用計画、(3)利用者の指示に従った介護、(4)公費による介護費用の提供といったこ とが前提とされるものである。」(岡部耕典「障害者自立支援法とケアの自律」p.104)  日本におけるパーソナルアシスタンス制度は、1974年に創設された東京都重度脳性麻痺 者介護人派遣事業や1975年に開始された生活保護他人介護加算特別基準適用を利用する 公的介護保障運動を嚆矢とする。それが自立生活運動における「介助」として継承され、 自立生活センターという「当事者主体のサービス提供組織」が既存の市町村ホームヘルプ サービス事業等を活用しつつパーソナルアシスタンスを提供するしくみが1990年代以降 全国に拡大していったのである。 これらの延長に、2003年開始の支援費制度における「日常生活支援」の全国制度化があり、 障害者自立支援法における「重度訪問介護」があることを忘れてはならない。こういった 歴史的・制度的経緯を踏まえ、障害者総合福祉法(仮称)における「パーソナルアシスタ ンス」の確立は重度訪問介護の発展的継承にあることをまず確認しておく必要がある。 2)「対象者」の拡大 結論 ○対象者は「重度の肢体不自由者」に限定されるべきではない。  ただし、現行の障害者自立支援法における重度訪問介護の対象者は、「重度の肢体不自由 者であって常時介護を要する障害者」(第5条2)、具体的には、脳性まひ、頸椎損傷、筋 ジストロフィ等による四肢麻痺があり、障害程度区分4以上の障害者に限定されている。  障害の社会モデルを前提とする障害者権利条約及び「谷間のない制度」をめざす総合福 祉法(仮称)の趣旨を踏まえれば、このようなインペアメントの種別と医学モデルに基づ く利用制限は不適切といえる。「身体介護、家事援助、日常生活に生じる様々な介護の事態 に対応するための見守り等の支援及び外出介護などが、比較的長時間にわたり、総合的か つ断続的に提供されるような支援」(2007年2月厚生労働省事務連絡)を難病/高次脳機 能障害/盲ろう者等を含む「日常生活全般に常時の支援を要する」(同)すべての障害者に 対して利用可能としなくてはならない。  特に、(1)重度自閉/知的障害者等で行動障害が激しい(2)中軽度知的//発達/精神障害 であっても「触法行為」に通じかねない行為やトラブルが絶えない等の理由で、これまで 入所施設や病院からの「地域移行」が困難とされてきた人たちが、地域生活を継続するた めには、常時の「見守り支援」を欠かすことはできない。また、現行制度においては重度 訪問介護の対象となっていない児童についても、少なくとも介護に欠ける場合や将来親元 からの自立を目指す場合には対象とされるべきである。 3) パーソナルアシスタンスの基本条件と利用制限の撤廃 結論  ○パーソナルアシスタンスとは、(1)利用者の主導(含む・支援を受けての主導)、(2)個別の 関係性、(3)包括性と継続性を前提とする生活支援である。 ○重度訪問介護の利用に関する利用範囲の制限をなくし、支給量の範囲内で通勤・通学・ 入院時・1日の範囲を越える外出・運転介助にも利用できるようにすべきである。  新たなパーソナルアシスタンス制度の在り方については、(1)「個々の障害者が自己選択、 自己決定し行おうとすることをサポートする人がパーソナルアシスタント」「保護し、管理 するのではなく、支援する」「当事者本人に主体性がある」「(非当事者・専門家の相談援助 ではなく)当事者のピアカウンセラー」(以上【D-2-1】に関する構成員からの発題10月 26日報告)、(2)「見守り」「手伝ってもらう」「いっしょに」「どっかに行くとき、キップを 買うとき、わかりやすくしてくれる人」「むずかしい話があったらそばで支援者に教えても らいたい」(以上【D-2-3】に関する構成員からの発題10月26日報告)、(3)「通勤中や勤務 中での介護」「通学中や学校内での介護」「通院時」「入院時」…「ヘルパー制度が別建てと なっているのは不都合」「自分の体にあった特殊な介護方法に熟練したヘルパー」(以上 【D-3-1】に関する構成員からの発題10月26日報告)などの見解が、実際にパーソナルア シスタンスを利用している当事者委員より表明されている。  すなわち、重度訪問介護の発展的改革にあたっては、(1)利用者の主導(ヘルパーや事業 所ではなく利用者がイニシアティブをもつ支援)、(2)個別の関係性(事業所が派遣する不特 定の者が行う介護ではなく利用者の信任を得た特定の者が行う支援)、(3)包括性と継続性 (援助の体系によって分割・断続的に提供される介護ではなく利用者の生活と一体になっ て継続的に提供される支援)が確保される必要がある。また、現行のような代理受領のし くみを前提としつつこれらの基本要件を担保するためには、サービスの提供やコーディネ ートにおいて、「利用者主体のサービス提供組織」(副座長11月19日報告より)を積極的 に位置づけ活用することが重要である。  また、包括性と継続性といった点から、現行の「通年長期」や「一日の範囲で用務を終 えるもの」「社会通年上適切でない外出を除く」、運転介助等の制限が大きな問題となって いる。  こうした制限をなくし、支給量の範囲内で通勤・通学・入院時・障害者の自家用車等の 運転時・宿泊外出等にも利用できるようにすべきである。(6.シームレスな支援と他分野 との役割分担・財源調整の項参照)   2.「他の者」との平等な社会参加の確保と移動支援の個別給付化【D-2-2】 結論 ○視覚障害者・児のみならず他の障害者・児の移動支援も基本的に個別給付として、国の 財政責任を明確にすべきである。 ○個別給付化を行うに当たっては、「他の者と平等」な参加ができるよう、対象者・利用目 的(通所や通学や入院・入所者等の外出を含む)・支給決定量や方法・ヘルパー研修等、先 進的な自治体の取り組みをふまえて柔軟にできるようにすべきである。 ○当面、地域生活支援事業の中の移動支援部分のみ別枠で、国1/2・都道府県1/4の補助 金清算という仕組みにする等、国・都道府県の財政支援を強化すべきである ○車を使っての移動介護は不可欠な場合があり、報酬の対象とする  知的障害者等の地域での自立生活や移動支援に取り組んでいる支援者から、参考人ヒア リングを行った。その中で、ガイドヘルプについて、「本人は自らの世界を拡げ、外出にと どまらず生活全体の家族からの自立を展望するようになりました。また、その姿をみた家 族も入所施設しか将来展望を見出していなかったことを見直す契機とすることもできまし た。いわば移動介護は社会参加を行いながら、「自立の一歩」の意味合いの意義をもってき た」と、その意義が確認された。  「地域生活支援事業への国の不十分な補助金で地方自治体の自己負担は増大し、その結 果移動支援の時間数や支給対象の絞込みや様々な利用制限が行われてもいるし、市町村格 差は拡大」したとの自治体の調査結果とともに、地域生活支援事業化に伴う問題点が指摘 された。  こうした点をふまえて、今後、移動支援を個別給付とし国の財政責任を明確にすべきで ある。ただし、その際、「他の者と平等」に社会に参加できるよう、柔軟な利用ができるよ うに、以下のような仕組みとすべきであるとの指摘があった。  (1)対象は「必要とする人」に拡げる、(2)通学・通所支援、入院時の支援ができることを 明確にする、また、自立生活に向けた体験時利用も可とする、(3)個々人の必要に応じて支 給すべきで、一律の上限を設けるべきではない、(4)支給方法は自治体にまかせる(月をま たいでの支給決定など)、(5)ヘルパー要件については、当事者を講師とすることを組み込ん だ簡易な研修を最低限の必須研修とする等。  いずれにせよ、当面、予算措置を行い、地域生活支援事業の中の移動支援部分のみ別枠 で、国1/2・都道府県1/4の補助金清算という仕組みにする等、国・都道府県の財政支援 の強化が必要である。 また、車を使っての移動について、現在、ヘルパーが運転する時間は報酬算定外となって いることについて、障害者所有の自家用車等は運送法上に合法であるので対象にするべき との提起も、作業チーム構成員からあった。 3.現行の居宅介護(身体介護・家事援助)、並びに行動援護の改善【D-1-1】【D-2-2】 結論 ○重度訪問介護の充実・発展によるパーソナルアシスタンス制度の確立の一方、組み合わ せ型の支援として居宅介護や行動援護も改善をしていくべきである。 ○居宅介護(身体介護・家事援助)においても、各障害特性やニーズをふまえた柔軟な利 用ができ、評価される仕組みにすべきである。 ○行動援護は、サービス利用に当たっての段取り的役割を評価し、居宅介護などと組み合 わせて家族同居やGH・CHでの生活にも積極的に活用可能とするべきである。  精神障害者のホームヘルプに関する研究プロジェクトに携わった研究者より参考人ヒア リングを行ったが、「自立支援法下では、精神障害者へのホームヘルプの大半が家事援助に 切り換えられ混乱が生じている」との問題指摘があった。精神障害者のホームヘルプの支 援内容の実態から、「単なる家事援助ではなく、見守りも含めた、利用者の精神的安定のた めの配慮や適切な対応を行なっていることが評価される必要がある」との提言があった。 また、利用者の症状の波による「急なキャンセル」にも、玄関先での待機や安否確認等が 評価されるべきである。  また行動援護については、構成員より「移動介護を個別給付に位置づける際、特別な配 慮の元での支援を必要とする方へ本人の行動を適切に援護していく専門性を提供する支援」 とされた。加えて、「特別な配慮に含まれている専門性は、子育て、保育、教育、専門療育、 地域活動、就労といったあらゆる場面で活かされる必要がある」と、その意義と、障害児 の段階から利用できる支援としての重要性も提起された。特に、具体的なサービス利用場 面までに至る、事前の見通しや段取りの部分での役割が期待される。そうした点から、家 族同居やGH・CH等での生活の時に、居宅介護等と組み合わせて活用し、その後パーソ ナルアシスタンスの活用に移行していくこと等が想定されるとの提起もあった。 4.見守りや安心確保も含めた人的サポートの必要性【D-1-1】【D-2-3】 結論 ○現行の重度訪問介護を知的障害者や精神障害者等にも拡大する際には、家事援助・身体 介護・移動支援的対応だけでなく、金銭やサービス利用の支援、さらには、見守りも含め た利用者の精神的安定のための配慮や適切な対応等が提供される便宜の内容として位置づ けられるべきである。 ○重度訪問介護だけでなく、居宅介護等においても、利用者の症状の波による「急なキャ ンセル」や玄関先での待機や安否確認等の障害特性をふまえた柔軟な見守り対応が評価さ れる仕組みが必要である。  知的障害者の当事者委員からは、「現状では認められないので、見守りが少ない。家の掃 除、電球の取り替え、家電の故障、家の扉の修繕、家の足りないものの買い物、家の回り の掃除、大家さんなどに謝る場合、など介護者がいるといないで大分違う」といった具体 的な実例を踏まえ、「見守り支援」の重要性が提起された。また、「行動援護相当の重度の 知的障害者に加えて中軽度の人も見守りが必要な人が少なくない」ことも指摘されている。 知的障害者の地域生活においては、「(1)排泄、入浴、着替え、服薬等の身体介護」「(2)買い 物、食事、洗濯、掃除、整理整頓等の家事援助」「(3)買い物や外食、余暇活動等の移動支援」 とあわせて、「(4)上記(1)〜(3)を含めた見守り支援」が必要である。  また、精神障害者のホームヘルプに関するヒアリングにおいても、実際に提供されてい る「サービスの内容としては、『家事全般』『生活環境の整備』に留まらない生活スキルの 獲得、困りごとの解消、社会参加の促進、権利擁護等、『家事援助』ではくくりきれない様々 なことを行われており、他機関・他サービスでなかなか提供しにくい内容も含む貴重なも の」であることが確認されている。  さらに、個別の介助支援において見守りも含めた支援の充実を前提にして(その代替と してではなく)、ピアカウンセリングや自立生活体験、障害者本人のエンパワメントや自己 決定のプロセス(支援をうけた自己決定)等の充実の必要性、並びにヘルパーによる支援 との連携も提起されている。 5.地域における医療的ケアの確保【D-2-4】 結論 ○「パーソナルな関係性の中で、個別性を重視して、特定の者に対して行う地域生活に必 要な医療的ケア(吸引等の他に、カニューレ交換・導尿・摘便・呼吸器操作などを含む)」 が、本人や家族が行うのと同等な、「生活支援行為」として、居宅や学校、移動中など、地 域生活のあらゆる場面で確保されるべきである。 ○一方で入院が必要な場合には、慣れた介護者(ヘルパー)によってサポートが得られる ようにして、必要な医療を得ながら、地域生活が継続できるようにしていくことが必要で ある。 ○なお、上記の論点に関する議論や資料を、現在進められている「介護職員によるたんの 吸引等の実施のための制度の在り方に関する検討会」等にも提供し、調整を図る必要性が ある。 ※さらに、医療的ケアに関する検討を、第2期の医療と障害児チームで検討してもらえる よう提案する(III おわりに参照)  自ら医療的ケアを受けながら地域生活をしている作業チーム構成メンバーから、「介護職 員によるたんの吸引等の実施のための制度の在り方に関する検討会では議論にされていな いが、医療行為と日常生活の支援である医療的ケアを分ける必要がある」との指摘がなさ れた。その上で、「(1)日常生活の支援としての医療的ケアは、医療行為をヘルパーが行うと いうことではなく、普通であれば本人や家族が行うことをヘルパーが本人に代わり行って いるということである。(2)シームレスな支援であるパーソナルアシスタンスの中で医療的 ケアができるようにするためには、よく知っている介助者が無理なく医療的ケアができる 仕組みにする必要がある」との提起がなされた。  学校における医療的ケアについて取り組んでいる学校関係者からの参考人ヒアリングで は、特別支援学校、通常学校それぞれでの課題について報告がなされた上で、上記の「介 護職員による…」検討会で、それまでの研究会での「この報告書に書かれていない行為は 全て禁止であるというような反対解釈をされるべきではない」とされていた了解事項が正 しく引き継がれておらず調整が必要との指摘があった。  両方のヒアリングから共通して言えることは、「パーソナルな関係性の中で、個別性を重 視して、特定の者に対して行う医療的ケア」が、本人や家族が行うのと同等な「生活支援 行為」として確保されるべきであるということである。  また、一方で入院が必要な場合には、慣れた介護者(ヘルパー)によってサポートが得 られるようにして、必要な医療を得ながら、地域生活が継続できるようにしていくことが 必要である。 6.シームレスな支援と他分野との役割分担・財源調整【D-3-1】 ○どんなに障害が重度であっても、地域の中で「他の者」と平等に学び、働き、生活し、 余暇を過ごすことができるような制度が必要である。 ○例えば、重度訪問介護等において支給量の範囲で「通勤・勤務中、通学・授業中、通院・ 入院中、1日を超える外出、通年かつ長期にわたる外出、自動車運転中」をサービス利用 の対象に位置づけるべきである。 ○シームレスな支援を確保するために、障害者雇用納付金や介護保険、教育など関連分野 の財源を調整する仕組みの検討が必要である。 日本における介護制度では、通勤・勤務中、通学・学校内、入院中等の介護が対象外とな り、並びに「一日の範囲内の用務」を超える泊まりがけの外出も原則認められていない状 況にある。そのことが、障害者の地域生活と様々な分野・場面における参加制約の大きな 要因となっている。  「他の者との平等」の視点からどんなに障害が重度であっても、地域の中で「他の者」 と同じ生活を営み、共に育ち、学び、「他の者」と同じ職場で仕事をこなし、「他の者」と 同様に余暇を過ごすことができるような制度が必要である。  そのためには、例えば、重度訪問介護等において支給量の範囲内で「通勤・勤務中、通 学・授業中、通院・入院中、1日の範囲を超える外出、通年かつ長期にわたる外出、自動 車運転中(道路運送法違反にならない障害者の自家用車等の場合)」をサービス利用の対象 に位置づけるべきである。当面、現在の「通年長期」や「一日の範囲で用務を終えるもの」 「社会通年上適切でない外出を除く」といった制限を早急に取り除き、また入院中の利用 も認められるようにすべきである。  その際、シームレスな支援を確保するために、障害者雇用納付金や介護保険、教育など 関連分野の財源との調整をする仕組みも必要である。 7.パーソナルアシスタンスと資格等のあり方【D-2-1】他 結論 ○資格等については、第2期の報酬・人材確保チームで検討が行われることになるが、特 に、パーソナルアシスタンスをめぐる資格等について、以下の点をふまえた検討がなされ るべきである。 ○パーソナルアシスタンスの資格については、従事する者の入り口を幅広く取り、OJT を基本にした研修プログラムとすることや、OJTを基本にすることから同行研修期間中 の報酬等も検討される必要がある。 ○外形的な資格ではなくて、実際に障害者の介護に入った実経験時間等の評価方法等の検 討も必要である。 ○居宅介護、行動援護等に関しても、よりOJT的な研修を重視する方向で見直しがなさ れるべきである。  1.で「パーソナルアシスタンス」制度の確立に向けた重度訪問介護の発展的改革の内 実として、(1)利用者の主導(含・支援を受けての主導)、(2)個別の関係性、(3)包括性と継続 性の3点をあげた。 これまでの研修は、主に事業者が不特定多数の者を対象に派遣を行う際に一定の「質」を 担保することを主眼にされている。それに対し、パーソナルアシスタンスで求められる「質」 は、その利用者の主導性の下、個別の関係性の中で、個別性の強い支援に対応できるかが 主眼となる。当然、研修のあり方は、この点をふまえたものでなければならない。 パーソナルアシスタンスの資格については、現在の重度訪問介護研修よりも従事する者の 入り口を幅広く取り、OJTを基本にした研修とする必要がある。また、慣れたヘルパー との同行訪問研修期間が、他の類型よりも長期間に及ぶことから、同行研修も評価される 必要がある。  また、居宅介護や行動援護等に関するヒアリングでも、これらの研修について、OJT 的な研修が重視されるべきであるとの提起がなされた。 8.支援(サービス)体系のあり方や名称、その他【D-1-2】 結論 ○現行の介護給付、自立支援給付、地域生活支援事業とのサービス体系は根本的にあらた めて、障害者の生活構造の中で果たす機能や役割にそって整理される必要がある。 ○「介護給付」の中には居宅介護や重度訪問介護等のいわゆる訪問系サービス、生活介護 等の日中活動支援、共同介護等の居住支援等が混在しており、整理が必要である。また、 その名称も介護保険の「介護保険給付」との混同がされやすく、見直しが必要である。 ○現行の訪問系サービスを「個別生活支援」として再編し、その下に(1)個別包括支援=重 度訪問介護を充実・発展させた類型、(2)居宅介護=身体介護、家事援助、(3)移動介護(社 会参加や余暇支援を含む)=移動支援、行動援護、同行援護、といった類型を位置づけて 整理・発展させる。 ○GH・CHを居住支援の一形態として位置づけ、GH・CH利用者が居宅介護等を併給 できるようにすべきである。  今後の支援体系について、障害者権利条約をふまえ障害当事者主体(自律・自己決定) のもと、地域生活が可能(施設・病院から地域自立生活への移行を含む)となるような支 援体系として構築する必要がある。  また、現行の「介護給付」「訓練等給付」「地域生活支援事業」といった体系は、「介護保 険との統合」を視野においたものと言わざるをえない。そのため、例えば、重度訪問介護 や居宅介護等の個別ケア的な支援、生活介護等の日中活動的な支援、ケアホーム等の居住 支援等が「介護給付」の下に一括りになっており、障害者の生活構造の中での機能や役割 からの整理とは異なっている。さらには、「介護給付」という名称も、そのニードと支援実 態を適切に表しているとは言い難い上に、介護保険の「介護保険給付」との混同も生みか ねない。2010年の障害者自立支援法訴訟団との基本合意文書においても「国(厚労省)は …現行の介護保険制度との統合を前提とはせず」と明記されている点からも、その名称も 含めて、サービス体系の大幅な見直しが必要である。  また、支援体系の見直しの中で、GH・CHは多様な住まい方支援の一つとして位置づ けなおすならば、他の在宅障害者と同様に居宅介護・行動援護等を併給できるようにすべ きである。そのことにより、ケアホーム等から単身生活への移行準備につながるという効 果が得られる。 III おわりに  以上のように、障害者の地域生活の権利を具現化していく支援として、パーソナルアシ スタンスを含めた現訪問系サービスのあり方の見直しを行ってきた。ただ、その地域生活 の権利を実現していくために、以下のような点について第二期チームの中での検討をお願 いしたい。 (1)24時間の支援を含む長時間利用者の市町村負担の低減のための財政調整、国・都道府県 の財政責任強化と国庫負担基準廃止も含めた見直し  重度訪問介護の発展類型である個別包括支援は、長時間の支援が確保されるように、長 時間部分の市町村負担(現状25%)の低減のための市町村間の財政調整、国・都道府県 の財政責任の強化の仕組み、並びに現行の国庫負担基準について廃止も含めた見直しが必 要である。 (2)人材確保ができるような報酬単価とOJTを重視した資格や研修  自立支援法施行以降、ヘルパーの人材確保は困難を究めた。未だに重度訪問介護を提供 できる事業所がない自治体もある。人材確保ができる報酬単価の設定と、パーソナルアシ スタンスの特性をふまえたOJTを重視した資格や研修の検討が必要である。また、現行 の重度訪問介護は、パーソナルアシスタント化で単価が下げないことが必要である。さら に、重度訪問介護(8時間を基本とした単価設定)を短時間で区切って利用するように強 要する市町村も後を絶たないため、連続8時間以上の利用を原則とし、それ以下の1回あ たり短時間のサービスの場合は身体介護等と同じ単価にすることが必要である。 (3)本人や家族が行うのと同等な「生活支援行為」として医療的ケア確保  先述の通り、「パーソナルな関係性の中で、個別性を重視して、特定の者に対して行う医 療的ケア」は、例えば、施設職員が入居者に対して行うそれとは相当異なった特質を持つ。 そうした点をふまえた検討がなされるとともに、他部局で行われている検討会等との調整 を図るようにするべきである。また、学校等での医療的ケア確保の検討も必要である。 (4)「介護保険優先」原則の見直しに関連して  どの支援を使うかを本人が選択できるようにすべきであり、例えば、介護保険からの給 付金額相当を重度訪問介護に利用できるようにするなどが検討されるべきである。少なく とも地域生活の継続が損なわれることのないよう、それまで使っていた支援が使えない、 支給量が減らされるといったことが生じないようにすべきである。