総合福祉部会 第11回 H23.1.25 資料6−1 相談支援・支給決定作業チーム報告 I.はじめに  作業チーム検討範囲  当作業チームでは、第一期の検討範囲として、自己決定支援・相談支援(論点C−1) について、現状の問題点や課題を明らかにし、新法においてのあるべき姿について検討を 行った。現在の障害者の相談支援事業については、おもな問題点としては、 (1) 地域支援事業に位置付けられていること等により、市町村による格差が大きいこと【市 町村格差】 (2) 相談支援事業についての十分な理解が定着していないために、問い合わせや情報提供と いった「一般相談」をイメージした体制整備にとどまり、具体的な生活を支援するための 踏み込んだ訪問相談や同行支援、継続的な支援を行うのが難しい状況にあること【相談支 援体制の不備】 (3) 各相談事業の守備範囲により、対象や制度に合わせて対応せざるをえず、限定的な支援 となってしまうか、または他の相談機関に「たらいまわし」になりがちであること【限定 的な支援】 (4) 手帳を所持していない谷間の障害に十分に対応できていないこと【谷間の障害への未対 応】 (5) 横断的な課題をもった複雑なニーズをもつ人の相談支援に十分にこたえきれないこと 【横断的な対応の不備】 (6) 難病(難治性慢性疾患)、高次脳障害、発達障害など、障害特性に応じた専門的な相談 支援が必要な場合に、身近な地域での相談支援が整備されていないこと【障害特性に応じ た専門相談体制の不備】 (7) 前記(4)〜(6)を支えるための他職種・機関の連携・調整の制度的な保障がないこと【他職 種・機関との連携調整体制の不備】 (8) これらの相談支援体制にかかわる専門職を含めた人材が大幅に不足していること【人材 の不足】 などがあげられた。 また現在の支給決定と相談支援の関係においては、 (1) 本人の希望やニーズを聴ききとり、必要な支援についての計画を立案する以前に支給決 定がおこなわれているため、ほとんど計画策定のための相談支援に至らない。 (2) 障害程度区分により国庫負担基準が定められているため、市町村によっては、これが上 限設定となってしまい、ニーズがあっても支給に反映されない場合がある。  などがあげられた。  今回の報告では、これらの現状の課題をふまえて、地域で暮らすために、障害のある本 人のセルフマネジメント、また支援付き自己決定を支える相談支援の在り方について、そ の役割と機能、および相談支援体制について示した。  さらに、「協議・調整による選択と決定のプロセス」(C−3−1)についても、合わせ て検討した。なお、第一期の検討にあたっては、以下の点に留意した。 (1) 目的の順守 本人の思いに添う支援体制づくり (2) 目標 目的に添って機能しやすい支援体制づくり    当事者参画によるシンプルでわかりやすい仕組み   II.結論 新たな相談支援の在り方について 相談支援のあり方の抜本的な見直し(質と量)、エンワパワメント支援、ピアカウンセリン グ、ピアサポートの充実についての検討結果は以下のとおり。 論点表(C-1-1)、C-1-2) C-1-3)、C-1-4)  1「自己決定支援」及び「相談支援」の目的と内容 ○障害の特性や状態によって、コミュニケーションや自己表現の在り方は異なることはい うまでもないが、相談支援は、「障害のある人が地域で暮らし、社会参加していくための自 己決定や選択を、その人の立場にたって支援する」ことが目的である。 ○さらに、障害のある当事者、家族自身が支援を通じてエンパワメントされていくことも、 相談支援の重要な目的として位置づける。 ○相談支援の対象は、福祉制度を利用する際の相談のみでなく、障害、疾病などの理由が あって生活のしづらさ、困難を抱えている人びとに、福祉・医療サービス利用の如何に関 わらず幅広く対応する。 ○当事者の抱える問題全体に対応する包括的支援の継続的なコーディネートを行う。 ○障害のある人のニーズを明確にするとともに、その個別のニーズから、新たな地域での 支援体制を築くための地域への働きかけも同時に行う。⇒障害のある個人に対する働きか けと、地域への働きかけを行う。(自立支援協議会との連携の在り方を明確にする。) 2.相談支援の機能と体制について(図1参照) (1)多層的相談支援体制の整備充実と各相談機関の役割と機能 ○地域相談支援センター、総合相談支援センター、広域専門相談支援センターの配置を基 本とし、多層的な相談支援体制を整備する。 ○地域相談支援センター、総合相談支援センター(総称して、以下相談支援事業所とする) は、障害当事者の側に立って支援することから、給付の決定を行う市町村行政やサービス 提供を行う事業所からの独立性が担保される必要がある。そのため、都道府県・政令市が 指定することを基本とし、地域の実情に合わせて障害保健福祉圏域単位や市町村域の単位 で障害当事者や障害福祉関係者、行政関係者が参画する運営委員会の設置などを通じて、 必ず運営のチェックが実施されることを担保する。財源は出来高払いではなく、人件費相 当の義務的経費による。(相談支援の事務所等の確保・整備にかかる費用も含む) ○相談支援事業所は、市町村ないしは広域連合、及び都道府県・政令市の自立支援協議会 の運営(事務局)の任を行政とともに担い、相談支援から見えてきた新たなニーズに対応 する地域資源開発を行う。(これについては、地域資源整備チームにおける検討内容との調 整が必要) ○相談支援事業所間の連携を目的とした、対応困難事例を含めた情報交換や相談が可能と なる仕組みを構築する。 (2)地域相談支援センターの規模と役割 ○地域相談支援センターは、もっとも住民の生活に身近な圏域(人口3〜5万人に1ヶ所 を基準とする)を単位に、都道府県が市町村と協議して一定の条件を満たした事業者に事 業を委託して設置する。(都道府県指定、国庫補助事業とすることについては、第二期で継 続検討とする) ○本人に寄り添った相談支援(アウトリーチを含む)、継続的な相談支援を行う。具体的に は、下記のような人への対応を想定する。 [1]支援を受ければ、ある程度希望の実現やニーズの解決が想定できる人 [2]生活の質の維持や社会参加に継続してサービスを利用する必要があり、また希望の表明 や制度手続き、サービス調整などに一貫した支援を希望する人 [3]社会資源の活用をしておらず、生活が困難な状態にあり社会参加が果たせていない人(手 帳をもたない人も含む) [4]部分的にサービス等を利用しているものの、生活の立て直しを必要としている人 [5]既存のサービス等では解決困難な生活課題を抱えている人 [6]家族等の身近な関係のなかで問題を主体的に相談できる人がおらず、踏み込んだ支援を 必要としている人(虐待を含む) [7]その他、相談支援を希望する人 ○地域相談支援センターのみの支援では困難な場合は、総合相談センターおよび広域専門 相談機関に協力や助言、直接の対応を要請する。具体的には上記のうち、[3][4][5][6]を想定 する。 ○一定の研修を受講した相談支援専門員(仮称)3名以上を配置する。(相談支援専門員の 条件、研修等の在り方については第二期で検討する) ○所属する相談支援専門員は、希望する人を対象に本人中心支援計画・サービス利用計画 を策定できる。 (3)総合相談支援センターの規模と役割 ○総合相談支援センターは、15万〜30万人の圏域を単位に、都道府県が市町村と協議して 一定の条件を満たした事業者に事業を委託して設置する。(都道府県指定、国庫補助事業と することについては第二期で継続検討とする) ○一般相談のなかで、特に複雑な相談事例について対応する。具体的には地域相談支援セ ンターからの要請に応じて[3][4][5][6]の対応にあたる他、長期に入院・入所をしている人の 地域生活への移行の相談、刑務所等から出所してくる人の相談等に対応する。 ○地域相談支援センターへの巡回を含めた相談支援専門員のスーパービジョン、および人 材育成(研修)を行う。 ○一定の研修を受講した相談支援専門員5名以上を配置する。 ○所属する相談支援専門員は、希望する人を対象に本人中心支援計画・サービス利用計画 を策定できる。 (4)広域専門相談支援センターの規模と役割 ○広域専門相談支援センターは、都道府県を単位として設置された、障害特性に応じた専 門相談を担う。具体的には、身体・知的障害者総合相談センター、精神保健福祉センター、 発達障害者支援センター、視覚障害者支援センター、聴覚障害者支援センター、難病相談 支援センター、地域定着支援センターなどを含む。 ○障害種別、特性に応じた専門的な総合相談を実施する。 ○地域相談支援センター及び総合相談支援センター等への専門的助言や専門的人材の養成 支援を行う。 ○本人中心支援計画・サービス利用計画策定にあたっての助言を行う。 (5)地域におけるエンパワメント支援(C−1-2)について ○身近な地域での相談支援体制(市町村、広域圏、人口5万〜30万人)に最低1ケ所以 上、障害のある当事者等によるピアサポート体制(エンパワメント支援事業)を位置づけ る。 ○エンパワメント支援事業は、障害のある人たちのグループ活動、交流の場の提供(たま り場機能)、障害当事者による自立生活プログラム(ILP)、自立生活体験室、ピアカウ ンセリングなどを提供することで、地域の障害者のエンパワメントを促進することを目的 とする。 ○エンパワメント支援事業を実施できるのは、当事者やその家族が過半数を占める協議体 によって運営される団体とする。 ○エンパワメント支援事業は、地域相談支援センターに併設することができる。 3.相談支援に基づく本人中心支援計画、サービス利用計画の策定について(図2参照) ○本人中心支援計画(本人のニーズに基づく総合的な生活プラン)、サービス利用計画(法 が求めるサービス利用計画)を定義する。 ○本人中心支援計画とは、本人の希望に基づいて、相談支援事業所(地域相談支援センタ ー、総合相談支援センター)の相談支援専門員が本人とともに立案する生活設計の総合的 なプランとする。本人の希望を聴き取り、その実現にむけた本人のニーズとその支援のあ り方(インフォーマルな支援も含めたもの)の総合的な計画策定となる。) 本人中心支援計画立案の対象となるのは、セルフマネジメントが難しい支援付きの自己決 定が必要な人で、相談支援専門員は本人に寄り添い、本人の思いや希望を明確化していく。 ○サービス利用計画とは、法律による福祉サービス等を利用するにあたって、市町村に提 出する計画。 本人のニーズに基づいて、福祉サービス等の利用希望を明らかにする計画となる。 (本人自身による策定、または相談専門支援事業所が、本人とともに策定することができ る。) ○サービス利用計画の提出は、法律によるサービスを利用申請する際に必須とする。      4.支給決定の仕組みについて(図3参照) C−3−1協議・調整による支給決定プロセス 第一期は、その概要について示すこととし、より詳しいシステム(特にガイドラインの在 り方など)などは、第一期のサービス体系の提案などをもとに、第二期でより具体的に検 討をすることとした。 ○支給決定の仕組みについては以下のとおりとする。 (1) 支給決定にあたっては、本人(または相談支援機関)と行政の協議調整を前提とする。 実施主体である市町村が支給決定についての決定権(責任)をもつ。 (2) 本人、または本人と相談支援事業所が、本人のニーズをもとに「サービス利用計画」を 策定し市町村に申請する。 (3) 市町村は、まずガイドラインに基づいてアセスメントを行う。 (4) ガイドラインは、市町村がサービス利用計画の内容に基づいて支給決定をするためのア セスメントの「水準・モデル」であって、基準や上限を示すものではない。ガイドライン は、全国レベルの方向性をふまえて、市町村で策定する。 (ガイドラインの指針などのより詳細な内容等は、第二期でさらに検討する) (5) 個別のニーズに応じて、本人、本人及び相談支援専門員と市町村間で「協議・調整」を 行い、市町村が支給決定をする。協議調整は、「障害のない人の地域生活の水準」及び、「支 援事例」に基づいて検討する。 (6) 支給決定内容に関して、ガイドライン及びこれまでの「支援事例」等では判断 が 困難 な事例に関して、市町村は「合議機関」にその意見を求めることができる。(合議機関の詳 細については第二期で検討する。) (7) 支給決定内容に対して、本人は「市町村ごとに設置された不服申し立て機関」に申し立 てをすることができる。(不服申し立て機関の詳細は第二期でさらに検討) (8) サービス実施後モニタリングを行い、支援困難事例などについて、相談支援専門員は自 立支援協議会に報告する。 (9) 個別のサービス実施状況のモニタリング結果を受けて、自立支援協議会において、ガイ ドラインの見直し、社会資源開発などについて検討する。 III.第二期作業チームでの検討事項 第1期の相談支援体制を踏まえて、協議調整による支給決定システムの明確化を行う ○論点は C−2−1現行の支給決定・障害程度区分の評価 C−2−2国庫負担基準の評価 C−3−2支給決定にあたっての必要なツール C−3−3自治体担当者のソーシャルワーク機能 C−3−4不服審査やアドボカシーの仕組み ○そこで以下の事項について、第二期で検討する。 (1)現在の障害程度区分や支給決定についての評価と問題点の検討 (2)支給決定にあたって必要なツール(ガイドライン・支援の必要度や支給決定のためのア セスメントなど)のあり方と策定の指針について (3)支給決定に際しての「合議機関」の設置や役割についての検討 (4)不服審査やアドボカシーの仕組み (5)相談支援専門員(仮称)の役割や位置づけおよび研修体制(当事者相談員も含む) の在り方 (6)障害者自立支援法改正法(つなぎ法)」における相談支援の関する、基幹相談支援セ ンター等の施行規則や運用基準等が、今後の新法の方向性と矛盾することがないよう、「つ なぎ法」の施行規則や運用基準等を精査するとともに、その整合性について検討する。 尚、(2)(3)については、委員から、ニーズアセスメント調査の実施や支給決定モニタ リング委員会の設置という具体的な提案が出ていることから、この提案についても検討を しっかりと行う。 他の作業チームへの申し送り・調整事項  ○法の範囲にある障害を有するか否かの判断については、    法の範囲チームの「B−2手続き規定」の結果による。  ○相談支援機関から、地域に対する働きかけを担保する仕組み(自立支援協議会の役割 と相談支援機関との関係性について)を設定する  ○児童分野、就労分野の相談支援体制(現行の就業・生活支援センター等のあり方の再 検討を含む)との関係についての調整が必要  ○長時間介護の財源調達は、地域生活資源整備チームで検討する(C−2−2)