総合福祉部会 第9回 H22.11.19 資料7 合同作業チーム(就労(労働及び雇用))議事要旨(10月26日分) 1.日時:平成22年10月26日(火)14:00〜17:00 2.場所:厚生労働省低層棟2階講堂 3.出席者   松井座長、駒村副座長、伊東委員、勝又委員、倉田委員、近藤委員、斎藤委員、新谷 委員、竹下委員 4.議事要旨 (論点1(「障害の種別・程度によって雇用義務の有無、さらには雇用の機会等に格差があ るなど」(「第一次意見」第3−4−1)の現状の改善、および障害者の労働者性や権利性 の確保との関連でどのような基本理念を盛り込む必要があるか。)について)  ・ 労働権を中心に、障害者がどういう生活をするのが幸せなのかという点を念頭に議 論すべき。  ・ 「労働」「就労」「仕事」「働く」といった言葉が、それぞれ何を意味するのか。  ・ 「労働権」とは、「働く機会」のことなのか、「労働三法など働く上での権利」のこ となのかについて共通認識を持った上で議論すべき。  ・ 「福祉的就労」と「保護雇用」の言葉のイメージも、はっきりさせないといけない。  ・ 労働法を全面適用すべきと考えるが、一気には実現するのは難しいので、賃金補填 や社会的事業所が必要となる。  ・ 障害者権利条約第27条の理念にいかに近づくかがポイント。  ・ 障害者の労働については、ただ労働法規の保護下に置けばいいというものではない。 様々な支援を組み合わせる必要がある。  ・ 障害者は誰でも「労働する権利」を持っているとうたうことが重要。障害者の労働 権が保護されていない現状を具体的に示さないと、基本法に障害者の労働権を書くことは できない。  ・ 障害者の労働には社会参加という面もあり、他者と関わりながら賃金を得るものと して重要。  ・ 「働く」ことを「社会参加」としてしまうと、意味があいまいになる。労働とは有 償労働であることを明らかにして、権利性をはっきりさせるべき。  ・ 憲法では、障害者も含めたみんなの権利として定められているが、障害者以外につ いても「働く権利」も法律には定められていない。あえて障害者の働く権利だけを法律に 書くのであれば、相応の裏付けが必要である。「権利」の裏には「義務」があることも意識 すべき。  ・ 障害者の労働権を基本法に書く方向で。「働きたい人が働ける場の確保」「あらゆる 働き方の保障」「障害者が対等に働けるための条件整備」についても、基本法で対応する方 向で。  ・ 障害者は労働能力がないのではなく、労働できる状態までにする教育、医療等の支 援が行われていないだけ。あらゆる障害者の可能性を引き出して労働につなげていくとい う視点が必要。 (論点2(障害者の労働者性の保護と福祉的就労から一般雇用への移行をすすめる上で、 どのような見直しが必要と考えるか。)について)  ・ 福祉的就労と一般就労の間を埋める仕組みが必要。箕面市で取り組んでいる「社会 的雇用」では国の制度にないものとして賃金補填が最も特徴的。  ・ 「社会的事業所」は仕事を確保し、障害者が労働して賃金をもらう仕組み。賃金補 填は絶対ではない。イタリアでは公的機関が優先的に仕事を発注するなど、金を補助する のではなく、仕事を融通する仕組みとなっている。  ・ 賃金補填、人的支援、仕事の振興策が主な提案。民需喚起策として発注促進税制の 見直しのほか、みなし雇用制度、共同受注窓口組織への財政的支援を行い、事業所におい て最低賃金の3分の1以上の賃金を払えるようにすべき。最低賃金に足りない部分を賃金 補填すべき。  ・ 福祉的就労の場でも労働の実態がある。福祉的就労という考え方をやめ、労働者性 を認め権利を保障すべき。事業所の自助努力だけでは最低賃金は払えない。社会支援雇用 制度をつくり、労働者としての権利が守られていない障害者の権利を守るべき。  ・ 福祉的就労をやめたらどう変わるのか。労働法制の何を適用すべきか。就労継続A 型・B型で障害者の労働者性を認めると、何が具体的な権利として認められるのか、共通 認識が必要。  ・ 職業教育、職場支援、通勤支援、住宅支援、所得保障等のサポートが機能していな い中で、福祉的就労がなくなると行き場がなくなる。障害者の労働を支援するプログラム が必要。  ・ 障害年金や事業所への報酬を出している中、さらに賃金補填で工賃と最低賃金の差 を埋めることは国民の理解を得られるのか。政策的に妥当かどうか。  ・ 労働者性というなら福祉的就労の下で事業所に出されている補助金は出ない。それ で障害者は守られるのか。障害者の「労働の権利」を明確にしなければ、社会的に受け入 れられない。  ・ 基本法に何を書くか。今まで出たのは「多様な働き方の保障」「仕事を確保する仕組 み」等。 (論点3(多様な働く場としての自営や起業、社会的事業所や協同組合、および保護雇用 (社会支援雇用)のあり方をどのように考えるか。)について)  ・ 賃労働でなくても、NPOなどの社会的に有意な活動については、生活できる糧を 得られるよう評価すべき。社会的事業所、協同労働などにNPOが含まれるか。  ・ NPOなど多様な活動を評価することは重要だと思うが、資本主義においては経済 性が必要なので、社会的事業所も経済活動を伴うものを前提に考えるべき。  ・ 基本法に書く「障害者の労働の権利」は「働く場の保障を含め、原則として全ての 福祉的就労に労働法規が適用されることの宣言」と「経済活動と認められるものに対し、 賃金補填を行い最低賃金を公的に保障」の2つの側面を持つという理解になるか。  ・ まだ福祉的就労は残さざるを得ないが、社会的事業所に向けて進んでいくという方 向性を基本法に書くことはできないか。  ・ 支援措置で労働法規を適用できるところまで底上げし、可能な限り労働法規を適用 すべき。具体的には、賃金補填や優先発注等による事業者への支援が考えられる。  ・ 福祉的就労で働く人は能力が低いと決めつけている。一般企業で障害の重い人は働 けるのか。対等といっても一般には受け入れられていない。障害者の働き方について考え 直す必要がある。  ・ 就労移行、就労継続、地域活動支援センターなどの再編成についても議論が必要。 雇用のあり方についても議論が必要。社会的事業所はハードとして捉えるのか、それとも、 通常の企業における支援によって働けることも含むのか。 (論点4(障害者に対する就労保障と所得保障との関連をどのように考えるか。)について)  ・ 福祉的就労のうち最低賃金の3分の1が支払われている人が約3万人だとすると、 社会的事業所で吸収できるのではないか。あとは、残された人たちにどういう支援が必要 かという議論になるか。社会的事業所と社会支援雇用の違いは何か。賃金補填の有無も含 めて議論したい。  ・ 障害者は、最初にどこに行ったかで人生が変わってしまう。どこに行っても就職に 至る支援がなされるべきだが、ワンストップの相談窓口がない。人的支援、移動支援、コ ミュニケーション支援に、賃金補填を組み合わせて労働を支援する仕組みが「社会支援雇 用」である。  ・ 社会支援雇用にしても、社会的事業所にしても、様々な状況や支援ツールを組み合 わせて支援を行うことで賃金補填が必要かどうか決まるのではないか。  ・ 就労支援はハローワークでやっておりそれを活用すれば良い。社会支援雇用は、障 害者でなくても使えるものではないのか。  ・ 将来的には、社会支援雇用に若年者やホームレスを含むのはよいと思うが、現時点 で同列に論じるのは早計。まずは、障害者に合った支援の仕組みを作り上げることが重要。  ・ 賃金補填と所得保障との違いは何か。むしろ所得保障ができてればよいのでは。  ・ 所得保障の中に賃金補填がある、というイメージ。賃金補填による雇用創出といっ た社会的メリットをどう評価するか、ということ。  ・ 賃金補填は、働いている人に対する賃金の上乗せ。働くことによって能力の向上や 可能性の拡大が期待でき、社会的にもよいメッセージが送れる、という点で意味がある。  ・ 所得保障だけなら、事業所への報酬10万円をそのまま本人にあげればよいが、そ れでは意味がない。障害者が社会に出て、働いて生活することに意味がある。  ・ 障害者が能力を発揮できる場を確保すべきであり、そこで最低賃金が保障されるべ き。それを支えるべき社会的事業所は、補助金なしでやっていけるのか。  ・ 人的支援、賃金補填、仕事の確保が確保されないと、重度の障害者は救われない。  ・ 働くことができる人には賃金補填で保障していき、働くことができない人には所得 保障の仕組みも必要。  ・ 基本法第15条、第16条は、大幅な改正が必要。障害者の多様な働き方の創出と いう方向性をしっかり打ち出すべき。ハート購入法や官公需の優先発注があっても、事業 体の規模が小さければ、小規模の仕事しか受けられない。事業体を育てることが必要。  ・ 年金改革で障害年金も最低保障がつく方向で変わるのではないか。  ・ 全体を通して、基本法においては、障害者の労働権の保障をうたう方向で。「多様な 働く場を確保する仕組み」「賃金補填を含めた、働く場に関わらず生活できる仕組み」「仕 事を確保するための仕組み」が必要。 以上