総合福祉部会 第6回(H22.8.31) 参考資料4 斎藤委員提出資料 参考資料 「社会的事業所促進法」とは何か 共同連  斎藤 縣三  障害者の就労を考えるにあたって、それをより発展させるべきと考えるものにとっても、 またその必要を考えないものにとっても、現状の障害者の労働参加は極めて問題のあるも のといえることは共通していると思う。というのは、より重い障害者である程労働参加は 難しくなっており、労働をめぐる能力差別は明確であるからである。  わたし達共同連は、1984年の結成以来、より重い障害者の労働参加を重視し、いかに能 力差別を乗り越えていくのかを一貫した課題として取り組んできたといえる。ところが、 これまでの福祉政策を更に徹底して障害者自立支援法は障害者に対する能力による輪切り をより進め、一般就労―就労継続A型―就労継続B型―生介活護という序列形式にひたす ら励んできたといってよい。  D−4)項目でも記したように「福祉から雇用へ」という目標を掲げながら、実際には ほとんど前進はみられないといってよい。営利企業での雇用労働か、福祉施設での福祉的 就労しか選択肢がない中で、なかなか障害者の就労可能性は拡がっていかない。わたし達 はそれ以外の新たな選択肢を提示する中で、より多くの障害者の就労可能性を切り開いて いきたいと考えている。  この提案は既にイタリアをはじめとしてヨーロッパ全域に大きな流れとなっており、ア ジアにおいても韓国を皮切りに、徐々に東アジアにその拡がりははじまっている。この動 きは、労働の新しい可能性を示すとともに、これからの障害福祉のあり方を考えるにあた っても重要な示唆に富んでいると考えている。今後、福祉部会内の作業チーム及び推進会 議のとの合同作業チームの中により詳しく提起していきたいと考えるが、まずはその構想 を示したい。  この「社会的事業所」は、推進会議の論点表の雇用分野において「シームレスな支援」 の項目において「社会的事業所の法制度化についてどう考えるか」と記されていたが、充 分な認知を得られていないためと、推進会議でその内容が深められておらず、この総合福 祉部会でも早急に対応すべき課題の中では、「社会的事業所試行的事業」の実施がうたわれ ていたものであり、論点表原案D項目でも「社会的事業所や社会活動センター等」を指摘 されていたものである。 参考資料 特定非営利活動法人 共同連 社会的排除をなくす 第三の就労の道 社会的事業所促進法(仮称)制定へ なぜ社会的事業所が必要なのか 1)障害者自立支援法の廃止と障害者権利条約の批准 ・差別なき労働権保障の仕組みづくりが求められる ・17万人におよぶ福祉的就労者が存在するという構造そのものからの転換 2)労働市場からの排除の拡大 3)競争的労働市場とは異なる就労 =雇用機会の創出 一般就労でも福祉的就労でもない第三の道 障害者をはじめとする社会的不利な立場の人々にとって、就労における新たな選択の道で あり、営利企業と同様、一般市場の中でみんなと共に経済活動を行う場である。 働き方 ○営利企業 (雇用) ○福祉的就労(一部雇用) ○社会的事業所(雇用)                     社会的事業所とは @一般就労でも福祉的就労でもない 第三の道(障害者就労) A分けない、切らない、社会的排除をなくす労働参加の実現 B共働の働き方(就労・運営) 社会的事業所(ソーシャルファーム) ○社会的企業(ソーシャルエンタープライズ)である。 ○共に働く・社会的協同組合(ソーシャルコーポラティブ)の役割もする。                               社会的事業所の事業形態           ■障害者をはじめとして、ホームレス、ニート、ひきこもりの人、薬物・アルコール依存 者、シングルマザー、ひとり暮らし高齢者など様々原因により働きにくさ、生きにくさ抱 え、労働市場から排除されている人々の労働参加をすすめることで社会的排除をなくして いく事業体であり、特にそれらの人々の労働参加を実現していく。           ■社会的企業の一形態であり、ビジネス手法に基づく事業展開により、社会的目的を実現 していく事業体であり、利益はその事業や地域社会にすべて還元、再投資していく。           ■社会的事業所と社会的企業一般との違いは、単なる社会的サービスの提供を行うのでは なく、人々の労働の場をつくりだす事業体であり、特に社会的不利な立場の人々の労働参 加を促す事業体であること。 社会的事業所促進法とは @ 《どのような事業所か?》           ■事業所の性格 @どんな法人格であってもその事業所の内容によって認められる A働き方が競争的原理ではなく、人間的な相互扶助の原理で営まれる。 B事業内容は地域社会の発展に寄与し、かつ人間社会の福祉・環境の向上につながるもの である。           ■事業所に必要な要件 @社会的排除を受けている人々の割合が30%以上 A商業・工業・サービス業・農林水産業などあらゆる業種のどれかを行い、その事業によ る事業収入が 収入の50%以上を占めること。 B社会的排除を受けている人々も対等に労働参加、経営参加できること。 Cただし、特定の事業所が51%以上資本参加する特例子会社を除く。 D社会サービス提供事業所の場合 イ)働く人の10%以上が社会的に排除された人であること ロ)事業対象者の50%以上が社会的に排除された人であること 社会的事業所促進法とは A 《どのような人々を対象とするのか》 ■社会的排除により雇用の困難な人々を対象にする ○対象の定義が明確な人 ・障害者(どんな障害者も) ・ホームレス ・シングルマザー ・刑余者 ・薬物依存者、アルコール依存者 ・生活保護受給者 ○対象の定義が明確でない人    ・ニート、引きこもりの人 ・ひとり暮らし高齢者            等々 ■対象の定義 ……… 対象の限定などをどう決めるか ○対象の定義が明確でない人の場合は自治体の長の判断で認める   社会的事業所促進法とは B 《どのような支援を行うのか》 ○行政からだけではなく、民間からの支援もすすむようにする ・仕事支援  @公共団体による随意契約による優先発注  A総合評価入札制度の活用  B民間企業からの仕事提供の促進策 財政支援  @運営・経営への補助  A雇用継続により困難さを抱える人への加算 立ち上げ支援   @設備費への援助  A土地建物、運転資金への融資  B立ち上げ時の賃金  社会保険料の免除  税制措置            《どのような運用の仕組みをつくるのか》  事業認証を行う仕組みをつくる    ・認証を行う団体が事業所を規定するガイドラインをつくる   ・認証制度を導入することで「貧困ビジネス」と峻別する  ・事業報告は公開する