総合福祉部会 第6回 H22.8.31 参考資料3 君塚委員提出資料          全国肢体不自由児施設運営協議会 君塚葵  平成22年8月10日 肢体不自由児施設による地域・在宅支援  平成21年度福祉医療機構研究報告書より 肢体不自由児施設の施設外業務に関する調査    施設外での業務は、障害のある児童やその家族にとって、自宅から近い身近な地域で療 育支援や各種の指導が受けられる、あるいはその地域における療育能力の向上が得られる という点で、在宅児の家族支援という点からはいずれも大きな役割を果たしていると考え られる。  今回のアンケート調査からは回答施設の91.8%(45施設)が、在宅児を対象とした施設 外業務を行なっており、各地において肢体不自由児施設が地域療育という 点から積極的に 家族支援を行っている現状が明らかとなった。  理学療法士、作業療法士、言語聴覚士による個別の訓練、指導は全回答施設の83.7%が 行っており、対象としては肢体不自由児が31.9%を占めたが、発達障害児も28.7%と多く、 肢体不自由者11.7%、重症心身障害者10.4%、知的障害児7.2%、重症心身障害児5.7% と多様であった。そのほかにグループを対象とした訓練、指導も実施していた。  すべてにでかけている肢体不自由特別支援学校などの学校以外での施設外で、医師が個 別の診察、指導を行っているのは、全回答施設中61.2%で、対象としては肢体不自由児が 35.1%、重症心身障害児18.5%、発達障害児7.9%などであった。「その他」が22.3%を 占めたのは、障害の早期発見のための疑い例が含まれるためと思われる。  心理士や心理判定員等による個別の相談、カウンセリング、指導については、34.7% が施行していた。対象としては発達障害児が51.9%と多く、保護者を対象としたカウ ンセリング等も26.9%を占め、家族に対する精神面でのサポートの機会となっている ことが伺い知れた。  相談支援専門員や児童指導員による個別の相談、支援は、42.9%の施設で実施されてい た。この対象も発達障害児25.0%、肢体不自由児24.7%、重症心身障害児15.5%等と、 発達障害児の占める割合は高かった。相談内容は様々であり、家族にとっては有益な支援 になっていると推察された。   施設外で障がいに関する講演や講義を行っている施設は、81.6%(40施設)で、 その対象聴講者の内訳は、学校教員17.9%、保育所・幼稚園の職員、療育関係者がいずれ も13.8%で、障がいのある児童の家族が13.3%であった。 講演を行っている職員の内訳は、医師23.4%、理学療法士19.5%、作業療法士15.2%、 言語聴覚士14.1%、心理士・心理判定員9.8%、看護師8.2%と医療系職員が多かったが、 相談支援専門員や児童指導員などの福祉系職員も13施設で、保育士も10施設で実施して いた。講演のテーマとして頻度として高いのは、発達障害、肢体不自由、障害がい全般に 関する内容、重症心身障害の順であった。  全般的には学校や地域における療育機能の向上に寄与している現状がうかがいしれるが、 家族を対象とした講演も比較的多く行われており、これらは障がいの受容や養育支援とい う点で有益と考えられる。 施設外で療育グループや父母の会などの団体の開催する催しへの人的支援については、23 施設(46.9%)が実施しており、これらのグループや団体の主催する講演会が最も多く (36.9%)、他にはキャンプ(26.4%)、年次総会への参加(13.1%)などであった。発達 障害、肢体不自由がそれぞれ26.4%、重症心身障害21.0%、知的障害17.5%などであっ た。こうした業務は、保護者同士の交流の促進を支援する意味で重要であるほか、施設職 員との信頼関係を築くという点でも意義のあるものといえる。   施設外業務のうち、入所児の家族支援と考えられる内容としては、退所に向けての 家庭訪問による家庭環境整備などの助言や指導があり、回答施設の53.1%が行っていた。 相談支援専門員や児童指導員などの福祉職種が32.1%と多く、医師は5.4%と少なかった が、機能訓練士34.0%、看護師12.5%であり、実際には複数の職種の職員が担当すること が多かった。            全国肢体不自由児施設運営協議会  平成22年8月10日  平成20年度肢体不自由児施設における短期入所数と課題  実施施設数   47 / 59施設(79.7%)    総延べ件数 29、698件 平成20年度に断った人数   (回答:41施設)    総件数 931 件        受け入れを断った主な理由         利用者の病状等により・・・・・・・・・・・・・ 34施設         空きベッドがない(定員に達した)・・・・・・・  27施設         利用希望者が対象外であったため・・・・・・・・ 22施設         職員体制の都合により・・・・・・・・・・・・  21施設         設備面の都合により・・・・・・・・・・・・・・ 14施設   利用者からの要望・クレーム           (回答:37施設)         ・ 希望する時間帯で受け入れて・・・・・・・・・・18施設         ・ いつでも申し込みと利用ができるようにして・・・16施設         ・ 希望する日数(期間)を受け入れて・・・・・・・14施設         ・ 定員を増やしてほしい・・・・・・・・・・・・・14施設         ・ 対象者以外でも受け入れて・・・・・・・・ ・・13施設         ・ 食事や入浴等のサービス内容に不満・・・・・・・10施設         ・ 職員に関する不満・・・・・・・・・・・・・・・10施設         ・ クレームなし・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3施設     利用の上限を設定しているか            (回答: 37 施設)         ・ 設定していない :           25 施設 (67.6%)         ・ 設定している :            12 施設 (32.4%)         ・1回の利用時間に上限・・・・・・・・・・・・ 6施設         ・ 1人あたりの利用回数に上限・・・・・ ・・・ 2施設         ・ 利用時間帯を限定・・・・・・・・・・・・・・ 1施設         ・ 利用が集中する時期に制限設定・・・・・・・・・1施設         ・その他・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2施設              全国肢体不自由児施設運営協議会  平成22年8月10日 肢体不自由児施設による地域・在宅支援例     平成21年度福祉医療機構研究報告書「 肢体不自由児等の障害児を持つ家族支援モデル事 業」より             (全国肢体不自由児施設運営協議会が作成した100頁以上の報告書) 北海道における地域支援旭川療育センターの派遣支援事業を中心にー               北海道立旭川肢体不自由児総合療育センター:長 和彦 <概要>  全国で他に類をみない広大な地理的特殊性をもち、地域の過疎化、医療・療育資源が乏 しい 北海道の道北・道東地域を圏域にしている旭川療育センターの地域支援の現状と課題につ いて 報告した。   北海道の地域支援事業には、大きく北海道が主催する道立施設等専門支援事業専門研 修事業と 市町村や福祉団体が主催する巡回療育相談や療育キャンプなどがあり、それらが補完的役 割を果たしている。当療育センターはその両方に職員を派遣し、地域の子ども発達支援セ ンターの職員の知識や技能の向上に寄与するだけでなく、療育の光が当たりにくい地域の 障害児やその家族への支援を行っている。平成20年度の地域支援延べ日数は326日であっ た。その間、医師や訓練士が不在となり、年間1000名強の障害児の診察や訓練に影響がで ると推定された。その一方で、種々の支援事業を通して450名前後の障害児の診察や訓練 指導、家族支援をしてきた。さらに、150名以上の地域の療育関係職員への教育的支援も 行うことができた。  これらのことは、北海道において大変重要な意味を持っており、肢体不自由児施設が地 域療育支援の砦としての役割を担っていることが再認識された。      全国肢体不自由児施設運営協議会  君塚葵   平成22年8月10日 総 合福祉部会資料 障害児の家族支援―長崎県における取り組み       長崎県立こども医療福祉センター(肢体不自由児施設)所長   松阪哲應   791と離島の多い長崎県は、社会的資源が乏しい地域が多く、障害児の家族支援は十 分ではない。巡回療育相談は昭和56年からスタートし、最初は整形外科医が肢体不自由 児・重症心身障害児を主に診ていたが、平成13年から小児科医も参加し、発達障害児な どを診ている。巡回療育相談を頻回に行い、地域の児童デイサービスを支援することで、 できるだけ本土に近い療育と家族支援を目指してきた。  しかし、発達障害児のニーズが増加するにしたがい、対応が困難になってきている。 専門家による家族支援が困難な地域に、ペアレント・トレーニングを導入し、子育てに 困難さを感じる親を地域にある社会資源で支援し、また、親同士のサポートの「場」を 作る計画を立て、関わってきた。    21年度からは「障害児の家族支援」を重点課題にあげ、障害児の子育て困難感に 寄り添い、医師やコメディカルスタッフが連携しながら個別の対応策を提案し、主 に心理士が家族支援をすすめている。これらの一連の取り組みとその成果を報告する。 巡回療育相談は、巡回により障害に関する各種の相談に応じ、地域の保健・医療・福祉・ 教育などの関係機関と連携して、地域の療育体制づくりを推進する。巡回先は西彼、県央、 県北(平戸、松浦)、五島、上五島、壱岐、対馬保健所である。巡回頻度は 各保健所に年 3回(1回、通常5日間:年間約100日)である。派遣スタッフはこども医療福祉セン ターから医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、保健師、心理、社会福祉士がグル ープを作り、巡回する。  事業内容は市町保健師・県保健所などから情報を把握し、障害児・保護者からの各種相 談に応じる。診察、検査・評価、療育指導などを行う(地域施設と連携)。カンファランス を通し、現地スタッフ・療育関係者への専門的指導や方決定、支援内容への助言、各種ア ドバイスを行う。現地の関係職員への研修会や意見交換会を行う。  巡回療育相談と児童デイサービス支援の問題点として、一カ所年3回(合計15日) の巡回療育相談のみでは十分な療育支援ができないため、児童デイサービスへの療育専門 職(OT,ST)派遣も行ってきた。 その結果、地域での療育指導が可能となり、療育効果も 明らかに認められる地域も出 てきた。しかし、市町村によって通園療育に対する意識・熱意に 格差があり、療育専 門職(心理、OT、ST)を確保しない地域も存在する。今後、地域医療機関からの専門職の 派遣ができないか等を検討していきたい。