総合福祉部会 第5回(H22.7.27) 参考資料1―1 岡部委員提出資料 論点B-1-2) にかんする参考資料 岡部耕典「知的障害者の「生活の自律」を前提とする福祉政策と支給決定システム ―ア メリカ・カリフォルニア州の制度と実践を踏まえて」(障害者の自立生活と『合理的配慮』 に関する研究 ―諸外国の実態と制度に学ぶ障害者自立支援法の可能性(H-20―障害―一 般―001 研究代表者勝又幸子)平成21年度総括研究報告書(2010年3月)より抜粋  利用資格    ランタマン法においてRCの利用資格(eligibility)の要件となる「知的/発達障害 (developmental disability)」とは、18歳以前に発症し無期限に続くことが考えられる@ 精神発達遅滞A脳性まひBてんかんC自閉症あるいはD精神発達遅滞と密接に関係のある 障害をもたらす状態もしくは精神発達遅滞のある人に必要なものと同様の障害サービスを 必要とする状況1があり、かつそれがその人にとって「実質的な障害(substantial disability)」2となるものとされ、2003年の法改正以降、「身辺自立(Self-care)」「言葉 による理解と表現(Receptive and expressive language)」「学習(Learning)」「移動 (Mobility)」「自己管理(Self-direction)」「自立生活の能力(Capacity for independent living)」「経済的自立(Economic self-sufficiency)」の7種類のインペアメント (impairment)3のうち3つ以上を持つことが要件となっている。  なお、知的/発達障害になる「リスクが高い(high risk)」児童や知的/発達障害児をも つリスクのある親もRCのサービスを受けることができる4。 〔第5区分〕  精神発達遅滞も自閉症も脳性まひもてんかんもないのに、ランタマン法で知的/発達障 害があると見なされる場合がある。それが「第5区分(the fifth category)」である。@ 精神発達遅滞に「密接に関連する(closely related)」状態5にある、あるいはA精神発達 遅滞のある人に「似た(similar)」サービス6が必要である、のいずれかにひとつ(両方で なくてもよい)に該当する状態であることが証明できれば、「第5区分」としてリージョナ ルセンターのサービスを受けることができる。  「精神発達遅滞に密接に関連する状態」にあると認められるためには、認知能力が実質 的に(substantially)損なわれており、何かをすること(機能)が精神発達遅滞のある人の ようになっているということを示さなくてはならない。また、「精神発達遅滞のある人に似 たサービスが必要である」と認められるためには、必要としている支援が精神発達遅滞の ある人への対応とどれくらい似ているかを示さなくてはならない。  しかし、ランタマン法には、精神発達遅滞に「密接に関連する」とか「似ている」こと の定義はなく、また「第5区分」の状態像の説明もない。そこで判例7なども踏まえ現在 ではRCにおける「第5区分」の判定には以下のような規準が用いられている。   @ ランタマン法実施規則の中にある「認知能力(cognitive skill)」の定義8 A ランタマン法実施規則の中にある「実質的なハンディキャップ(substantial handicap) の定義9 B リージョナルセンター協会(ARCA)作成の「カリフォルニアのリージョナルセンターが “第5区分”を決めるための指針」10 〔実質的な障害〕  利用資格を得るためには、この5つの条件のどれかに当てはまるだけではなく、そうし た診断や状態が「実質的な障害(substantial disability)」となっていなくてはならない。  「実質的な障害」とは「認知的もしくは社会的な機能の著しい損傷」11である。認知 的な機能12あるいは社会的な機能13のどちらかが(両方でなくてもよい)著しく損傷 されていることが「実質的な障害」を有すると認められるためには必要である。具体的に は、主な生活活動の中から3つ以上14に大きな問題があることが条件とされている。  ・身辺自立(Self-care)  ・言葉による理解と表現(Receptive and expressive language)  ・学習(Learning)  ・移動(Mobility)  ・自己管理(Self-direction)  ・自立生活の能力(Capacity for independent living)  ・経済的自活(Economic self-sufficiency)    「実質的な障害」のある状態においては、様々な支援が必要となると同時に、サービス の調整も必要となる。長期的な人生の目標や夢を叶えるのを助けるためにどういった支援 が必要かということを考えるのがIPPミーティングである。 〔利用資格とならない障害〕  「単に身体的に社会的不利をもたらす状態」しかない人たちはRCのサービスを受けられ ない15。ただし、「身体障害しかない脳性まひの人」は利用することができる16。また、 DDSは、知的/発達障害に「単に学習障害(solely learning disability」や「単に精神障 害(solely psychiatric disorder)」に当たる状態は含まれないとしている17。 従って、 精神発達遅滞、自閉症、てんかん、脳性まひもしくは「第5区分」のどれにも当てはまら ず、学習障害や精神障害しか持たない場合はRCの利用資格はない18。 (注) 1「第5区分(fifth category)」 2 第4512条(a)。 3 この文脈では、インペアメント=機能障害=「できないこと」である。 4 第4642条、第4644条。 5 精神発達遅滞に「密接に関連する(closely related)」かどうかの判断のチェックリス トとしてAPPENDEX F 。(文末に【資料1】として収録)。 6 精神発達遅滞に似た(similar)状態にある人に必要なサービスのリストとして APPENDEX G。 7 「メイソン対行政審判事務所(Mason v.Office of Administrative Hearings))裁判。 8 「個人が洞察力を使って問題解決をしたり、新しい状況に対応したり、抽象的に物事を 考えたり、経験から学んだりすること」(Cal. Code Regs., tit. 17, 第54002条)。 9 「認知的あるいは社会的機能の著しい損傷があって、その人が潜在能力を最大限発揮す るのを助けるために発達障害サービスや一般的なサービスを相互の立場から計画したり調 整したりすることを必要とすること。そして、主な日常生活活動、言葉による理解と表現、 学習、身辺自立、移動、自己管理、自立生活の能力、経済的自立の中から3つ以上に重大 な機能上の制約があること」(Cal. Code Regs., tit. 17, 第54001条(a))。 10 http://www.arcanet.org/pdfs/5th.category.guidelines.pdf (10/1/30)。 11 Cal. Code Regs..,tit.17、第54001条。 12 cognitive functioning. 「考えること(thinking)とか知性(intellect)」(第2章 p.12) 13 social functioning. 「どう他人とつながるか(how you relate to others)」(第2 章p.12)。 14 2003年8月11日の法改正以降1つから3つに条件が変更となった。 15 第4512条(a)。 16 Cal. Code Regs.,tit.17、第54000条(c)(1)及び(2)。 17 PAIの見解としては、「ランタマン法ではこうしたことは書かれていないので、この 規則は無効である。…(中略)…しかし、時が経つにつれて、学習障害や精神障害を排除 するこうした規則は有効なものとみなされるようになっている。」(“Rights Under the Lanterman Act”第2章p.16)。 18“Rights Under the Lanterman Act” 第2章p.16。