若者チャレンジ ::: 若者の人間力を高める国民運動
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イベントレポート
地域イベントとして国民会議と地域団体とが共催した若者支援イベントのレポートです。
第6回 就職・離職に関するシンポジウム
実施場所 :  東京都議会議事堂6F第一会議室
共催 :  NPO人材アカデミー
後援 :  厚生労働省、文部科学省、経済産業省
協賛 :  社団法人東京青年会議所 社団法人日本私立大学連盟、社団法人全国学習塾協会、全日本私塾教育ネットワーク、NPO法人日本未来機構、私塾三田会
開催期間 : 平成19年12月20日
レポート
司会 東野 秀平
本日はお忙しい中を、このように多くの方にお集まりいただきまして誠にありがとうございます。
「第6回就職・離職に関するシンポジウム」をこれから開催させていただきます。
私は本日の司会を務めさせていただきます、東野秀平と申します。私の大学の先輩であられます大森理事長の活動趣旨に賛同いたしまして、NPO人材アカデミーの事業活動を陰ながら支援をさせていただいて参りました。陰ながらと言いましたけれども、本当に陰ながらということで、本日のように司会というお役を賜りました。非常に緊張をしております。不行き届きの点がございますればお許し願いたいというふうに思っております。
この、本日のシンポジウムは、「NPO人材アカデミー」と「若者の人間力を高めるための国民会議」の二つの共催で実施いたします。この運動は、若者が何度でもチャレンジできる社会作りの実現を目指しております。 昨今話題になっております、若者の就職の問題等々、本日はお時間が許す限り忌憚の無いご意見の交換をさせていただければというふうに思っております。
最初に、まず、当NPO法人の教育顧問、阿部進様より開会の言葉をいただきたいと思います。
それでは、阿部進様よろしくお願いいたします。

阿部 進
阿部でございます。歌手の森進一さんという方がいらっしゃいますが、彼の自伝の中に「私は生涯、約50回 職を転々とした」という話があります。その中にはわずか三時間で辞めて、ああこれは自分には合わないんだというんでスッと辞めたというのが中に書いてありました。言ってみれば50何回転職した中で 自分が行き着いた所が歌手であったと、これが自分の天職なんだということをつくづく実感したというふうに書いてあるんです。はたして森進一さんの、そういう、50回、自分の居場所を見極めるまでに至ったのか、それが現在における若い人たちの転職というのは、それと同じなのだろうかどうだろうか。
私は今、沖縄県でニート問題の件で委員をやっております。沖縄県は非常に深刻でございまして、ニートの数といいますか、それが全国平均のダントツで2倍なんですね。
飛び抜けているわけです。いったいこれは、沖縄県だけの問題なんだろうか、それとも全国的な共通の問題なんだろうか。私、その中で実際にニートと言われている人たちと一緒に勉強会や合宿をやっています。ところが、どうしてこの人達がニートなんだろうか、もう3年越しになるんですが、毎回受講生が替わるんですけれども、いったい何なんだろうと、やればやるほど分かんなくなっているんです。
とにかくニート問題というものが今日の離職の問題と大きく繋がっていくんじゃないかと思います。現に私は、幼稚園、小学校、中学校と月に10回くらい出前授業という形でやっているんです。そこでよく言われるのが、集中力がない、それから当然ながら持続力がない、今、小学校、中学校現場でも大きな問題点となっている。はたしてこれも離職問題とどう繋がっていくんだろうか考えております。
今日のシンポジウムは非常に素晴らしい方達です。
是非最後までご参加いただければありがたいと思います。

司会 東野 秀平
ありがとうございました。阿部進様、皆さんテレビでよくお会いする方で、テレビの中から飛び出して来たような感じでございますけれども、ご挨拶ありがとうございます。
それでは、NPO人材アカデミーの大森理事長より一言ご挨拶をお願い致したいと思います。

大森 淑子
ご紹介にあずかりました大森でございます。皆様、こんにちは。今回の就職・離職に関するシンポジウムは第六回目になります。 私どもNPO人材アカデミーの事業活動の中では「調査研究事業」に該当します。この活動は今から45年前に遡りますが、その時から私は多くの方々に支えられて、ずっと続けてやっておりますが、同年配の友人達からはバカじゃないのってあきれ顔で言われております。それでも少しでも世の中の役に立てばと思いまして若者のために頑張ってきました。 離職に関して申しますと、5年ほど前から七五三という現象がマスコミでも取り上げられるようになってきました。 七五三現象と申しますのは、ご存知のように、就職してから3年以内に辞める人数が中卒で7割、高卒では5割、大卒が3割もいるそうです。この状況は実は45年前から既に潜在しておりましたので、これを何とかしなければと思い、人材育成によって防止しようとがんばってきたのですが、やはり微力ですね、私ごとき者では世の中を変えるのは難しいなとつくづく感じながら、何度も挫折しそうになるんですけれども、活動に賛同してくださる方々に支えられ、諦めずに今までやって参りました。でも変わらないんですよ、今年も。むしろ悪いんですね。七五三の三が、三割ではなくて35パーセントだそうです。
もっと悪いことには、昨年4月に卒業して入社してからたった二ヶ月半後の6月半ばに、転職したいと 人材紹介会社に登録している人数が去年と同じ時期の2倍から4倍というんです。 昨年新卒の新社会人のタイプがデイトレーダー型といわれておりますが、このデイトレーダー型…お聞きになって、もうご存知の方、挙手願います。ちらほらいらっしゃいますね。有り難うございます。デイトレーダーと申しますのは、毎日株価を見てちょっとでも株価が上がるとすぐ売ってしまい、細かく利益を得ようとする個人投資家のことで、安定株主になりにくい人のことでございます。これが今年の卒業した新入社員つまり新社会人のタイプに当てはまるのだそうです。どういう理由で?「会社が合わない」「配属が不満」「仕事がきつい」「上司がひどい」「給与が不満」だから…。今年から就職氷河期が去って、就職活動で苦労していないから、希望と違うと思えば、自分にはほかの選択肢があると思ってしまう。 転職してもより良い職場がある訳ではない。一人前の働き手になるためにはある程度の歳月がかかるのではないでしょうか。ニート、フリーターとなる可能性もあります。それで、大変喫緊の問題であると存じ「若者の人間力を高めるための国民会議」と共催で、今回のシンポジウム開催のテーマとなりました。
各界の錚々たる有識者が重要なテーマであると認識なさり、年末の多忙な時期に大変無理して時間を調整してくださり、今日のシンポジウムに全員がご出席してくださいました。大いに議論を尽くしていただき、後日小冊子を作成して官界、政界、財界、教育界に提言いたします。そうして何とか世の中を良い方向に変えたいと、今後とも私どもは努力を続けて参ります。
少しでも変わるように頑張ります。 応援して下さい。
今日は会場の皆様もお忙しいところを遙々広島や富山からもご参加くださり、誠にありがとうございます。ご静聴有り難うございました。

司会 東野 秀平
どうもありがとうございました。それでは基調講演に入らせていただきたいと思います。
株式会社カジワラ代表取締役会長梶原徳二様より、基調講演の本日の講師でいらっしゃいます厚生労働省の大槻勝啓様をご紹介いただきたいと思います。
ちなみに、梶原様は多くの役職をお持ちの中、当法人の特別相談役として活躍されております。
それでは梶原様、ご紹介よろしくお願い致します。

梶原 徳二
ご紹介をいただきました梶原でございます。無名の中小企業の会長をやっておりますが、食品加工機械のメーカーでございます。 従業員は200名ちょっと、関連会社入れて250名ほどでございますが、このNPO人材アカデミーにつきましては、先程お話のあった大森先生のご熱意に賛同させていただいて、実は付き随っている一員でございます。どうぞひとつよろしく。
今日の大槻先生につきましては、お手元に資料があると思うんですけれども、お手元のプロフィールに書かれておりますように、現在、厚生労働省の職業安定局次長をされております。ご経歴は、1953年滋賀県にお生まれになりまして、京都大学法学部を御卒業になり、直ちに労働省にお入りになりました。2003年8月には中労委、中央労働委員会の事務局次長をご経験になりまして、2004年には厚生労働省の大臣官房審議官、更に2006年には東京労働局の局長をご経験されて現職にあられる訳でございます。
実は、私は大学時代、中山ゼミ、中山伊知郎先生のゼミに所属いたしまして、中労委にはとても懐かしい思い出があります。当時中山先生は中労委の委員長をされており、時折徹夜をなさっておりましたが、決して先生がゼミを休講にされることはありませんでした。時には休講されることを期待したわれわれでしたが。また、そのご縁ある中労委に三十数年前に私は呼ばれたことがございます。 中小企業の雇用問題について話をしてくれないかということで、たしか法政大学の学長をなさった清成先生とご一緒だったと思いますが、そこで、当時私どもは百人足らずの小さな会社でしたけれども、お話をしたことがございます。この雇用の問題は大企業だけではなく、特に中小企業の場合には企業の成長を左右するポイントになっております。そういう意味では、実は先週、大槻先生のところにおじゃまいたしまして、ちょっとお話を伺ったのですが、先生は大変手堅く、しかし着実に将来の労働問題を勉強されておられることとお見受け致しました。
今日は、先生がご用意されて皆さんのお手元に配布されておりますテキスト「若者の早期離職の現状と対策について」を拝見しますと素晴らしいテキストでございます。今日の基調講演の講師として最もふさわしいお方を選んでいただいたなと思っております。
どうぞひとつ、大槻先生のご講演をベースに皆さんには労働問題について一層のご理解を頂き、ご研鑽をしていただければ幸いでございます。
どうぞよろしくお願いします。

司会 東野 秀平
どうもありがとうございました。
それでは改めまして、第一部基調講演を開始させていただきます。
厚生労働省の大槻勝啓様よろしくお願いを致します。

東野秀平(とうの しゅうへい)1949年12月25日、いわゆる団塊の世代に神奈川県平塚市に生まれた。慶応義塾大学 法学部政治学科卒業(国際政治専攻)。目黒区立油面小学校、同第四中学校、都立大学付属高校卒業。外資系企業「日本テトラパック」勤務を経て、1993年6月公明党から東京都議会議員選挙に挑戦し、初当選。現在、4期目。都議会総務委員会理事、厚生委員会副委員長、公営企業委員会委員長などを歴任、現在、財政委員会所属。公明党東京都本部国際局長。夫人と2男に父親の5人家族、愛犬マイコ。東京都目黒区下目黒5丁目に在住。 NPO人材アカデミーの事業活動について、当法人設立当初から支援。「環境」と「福祉」に関わりたいとの思いを実現するため、政治の道を選んだ。

阿部進(あべ すすむ)1930年6月東京都生まれ。横浜市立平沼小、県立神奈川工業高校(機械科)、横浜国立大学学芸学部特別教員養成課程修了。川崎市内の小学校教諭を13年勤める。社会科の教科書編集委員、各種民間教育運動の事務局、特殊教育「手をつなぐ親の会」の結成などで活躍。1965年退職後は活「部進事務所・椛n造教育センターを設立し、教育全般の活動を展開。「癌からの生還」、「やせて元気になる食事」などの健康関連、並びに「現代子ども気質」「現代っ子採点法」「気質別教育法」などの教育関連他、著書多数。現職/椛n造教育センター代表、横浜子ども支援協議会会長、全国子ども居場所協議会会長、横浜だがしや楽校校長。NPO人材アカデミー教育顧問。

大森淑子(おおもり よしこ)1955年慶応義塾大学経済学部を卒業。 (株)三越に入社。
総務部人事課で、主に人事管理評価と事務処理開発、百貨店業界初のコンピュータ導入、大卒入社試験英語問題作成、新入社員教育、監督者訓練研修などを担当。
退社後、大学受験塾を経営する傍ら、卒塾生に職場体験をさせるために(有)中央企画を設立後、1986年アイ・エス株式会社を設立、代表取締役社長に就任。データベースソフト「アシストカード」「アシストパワーベース」「アシストカード フォー ウインドウズ」などを製作、販売。日本初のデータベースのウインドウズ製作に成功するなど事業家としての才覚を発揮。自ら体験し、実感してきたことをふまえて、現在の就職状況を看過出来ず、人材育成によって若者の就職を支援するのが第一の目的である特定非営利活動法人NPO人材アカデミーを設立。現職/NPO法人NPO人材アカデミー理事長、講師、アイ・エス株式会社取締役会長、私塾三田会会長。

梶原 徳二(かじわら とくじ)1933年7月29日東京都生まれ。
1957年3月一橋大学法学部卒業、1959年3月同大学経済学部卒業。1967年8月梶原工業株式会社・代表取締役社長を経て、2005年7月同社代表取締役会長。
1977年4月株式会社カジワラキッチンサプライ設立・代表取締役社長。1998年4月株式会社カジワラ設立・代表取締役社長を経て、2005年7月同社代表取締役会長。 その他、現職/東京都台東区少年少女発明クラブ・副会長。東京商工会議所台東支部・副会長。日本製パン製菓機械工業会・理事長。東京商工会議所・産業人材育成委員会副委員長、中小企業委員会副委員長、税制委員会委員。日本商工会議所・税制小委員会委員。社団法人発明協会・東京支部副支部長。社団法人発明協会・監事及び評議員。財団法人東京都中小企業振興公社評議員。受賞歴として、科学技術庁長官表彰受賞、黄綬褒章受章、発明振興功労賞(社団法人 発明協会)。NPO人材アカデミー特別相談役、講師。

第一部:基 調 講 演
「若者を巡る雇用問題について」
資料配布:若者の早期離職の現状と対策について
講師:厚生労働省職業安定局次長 大槻勝啓

ただ今ご紹介をいただきました、厚生労働省の大槻でございます。本日は多数の方がお見えになっている訳でございますが、皆様には私どもの厚生労働行政に対しましていろいろな面でご支援ご協力をいただいていることにつきまして厚く御礼を申し上げる次第でございます。
本日は若者の雇用をめぐる問題についてのシンポジウムということでございます。テーマもご覧の通りのものでございまして、誠に時宜を得たものと思います。ぜひご熱心なご議論をいただきまして、私ども行政の参考にさせていただきたいと考えているところでございます。この若者の雇用問題、いわば国民的な課題と申しますか、大テーマであろうと思っております。私自身は、このNPO人材アカデミーの大森理事長のご依頼を受けまして参加をすることができたということでございまして、そうした機会を与えていただいたことにつきまして感謝を申し上げる次第でございます。
この若者の雇用問題、いわゆる長期不況の中で非常に深刻化を致しまして大問題となった訳でございます。そういった中で政府全体として、国、地方、教育界、産業界、労働界、様々な分野の方々にご協力をいただいて対策を講じてきたところでございます。私ども厚生労働省の関係のところで申し上げますと、ハローワークというところを所管しているところでございまして、ハローワークの第一線において若者の雇用問題に対応しているということでございます。私などが話すより、まさに若者と対面して頑張っている職員などが来れば2時間でも3時間でも話題がある訳です。また、我々の関係団体に独立行政法人の労働政策研究・研修機構というものがございまして、ここでは労働政策に係わる政策研究を行っておる訳でございますが、ここは若者の雇用問題については先駆的な研究をやって参っておりまして、今日のフリーター、ニート問題、学校から職業への移行に係わる問題に造詣の深い研究者が多数おる訳でございまして、そういった意味では私は今日は適任ではないのかもしれませんが、行政担当者という立場で参加をさせていただいたところでございます。
若者の雇用問題、これはまさに日本の将来を担う人たちの雇用の問題をどうするのか、これは日本の運命に係わる問題であろうと考えております。先程から申し上げておりますように関係各界が一体となりましていろいろな支援に取り組んできた。景気の回復の中で一定の改善もみておりまして、特に新規学卒の労働市場は非常に賑やかになってきているところがあろうかと思います。しかしながら、年長フリーターと言われる方々の問題を始めさまざまな問題がまだ残っておりまして、若者が安心・納得して働ける、そして意欲・能力を十分発揮して働いていただける、そういう社会を実現していくためにはまだまだやるべきことが多いのではないかと考えているところでございます。
今日は、早期に転職したがる新社会人の急増についてというのがメインテーマでございます。そのことを踏まえながら若年者をめぐる問題につきまして少し話をさせていただきたいと思います。
その前に、全体の今の雇用の動向でございますけれども雇用失業情勢は厳しさが残るものの改善をしていると、私ども、政府が申し上げているところでございます。有効求人倍率、完全失業者の数等々を見ましても長きに亘りまして改善を続けている。ただ、今年度に入りまして4月から8月までは失業率が3パーセント台でございました。7月には3.6にまで下がった、それが9月、10月、4.0となりました。そして有効求人倍率も3ヶ月連続で低下しているということもございまして、この点も改善の動きが少し弱まっているのかなというふうにも感じております。 ここは雇用の動向には注視をしていかなければならないと、このように考えているところでございます。「厳しさが残る」と私共は申し上げておりますが、どういう点が特に厳しいのかという点では、いくつかある訳でございますが、やはり何と言っても若者の問題が大きな課題でございます。二点目としては雇用情勢に地域差がある。  雇用の改善に遅れがみられる地域がある、そこの雇用の創出等をどうするのか、大きなテーマでございます。  それから、非正規労働者、こういう言葉は使わない方がいいということもございますが、いわゆる正規労働以外の形態、例えばパートタイム、或いは派遣、契約社員等々ですね、正規雇用以外の形態で働く方々が雇用者の三分の一に達したという状況がございます。この中には、もちろんいろいろな事情でそうなっているのでございますが、本来は正社員として安定した雇用に就きたい、しかしながら仕事が無いのでやむを得ずそういう形態で働いている、こういう方がいらっしゃる。そこの所の問題がある訳でございます。その他諸々の問題がございますけれども、今申し上げたことが大きな焦点になっているということでございます。
レジュメの方に今後の雇用対策の方向性と書きましたが、時間の関係もありますので詳しく述べられませんが、私共としては、人口減少がこれから本格化すると、その中で企業の側も働き手の側もいろいろな意味で変化が出ております。そういった中で正社員以外の雇用形態で働く若者とかニートと言われる方々の問題を放置しておくと将来の格差の固定化或いは一層の少子化の大きな要因になると考えておりますし、また、女性、高齢者で働く意欲を十分お持ちの方に適切な働き口が無いということで雇用の場に出て来られないという方々もまだまだいらっしゃる訳です。今後労働力人口が減っていく中でこういった方々、意欲能力をお持ちの方にぜひ働いていただくということが大きな課題でございます。また、昨今、ようやく正社員の雇用者数も18年度あたりから増え始めたわけでございますけれども、何と言っても正社員の絞り込みといった中で長時間労働問題とか健康面の問題がいろいろ出てきております。
また、フリーターと言われる方々にとっては、まさに能力を蓄積していくという機会に恵まれていないという問題もあります。人材が能力を発揮することができるかという点でも大きな懸念があるという中で、私共としては、どんな方でも意欲と能力に応じて働ける社会を作っていかなければならないと。 就業率の向上を図らなければならないということも一つの課題でございますし、また働く人全てが職業キャリアをしっかり形成していただく、能力を発揮していただく、能力を向上していただくというのが課題でございます。
また、様々な働き方が求められるということでございます。どのような働き方であっても公正な労働条件が決められるということが重要でございます。仕事と生活の調和ということも大きなテーマであると考えております。そういったことで雇用と生活の安定を図っていこうということが雇用対策の方向性でございます。この中で若者をめぐる雇用情勢でございますけれども、お手元のレジュメの他に簡単な統計資料をつけさせていただいているところでございます。
若年者雇用対策につきまして、特に平成15年頃から政府全体として関係方面のご協力を頂きながら力を入れて参りました。若者自立・挑戦戦略会議というものを発足させまして様々なプラン、アクションプラン等々を作って参りました。また、今日の主催者の一つになっております、若者の人間力を高めるための国民会議においても大きなご議論もいただき、いろいろな方法で徹底するようにと運動もやっているところでございます。
資料の1ページ2ページに若干の数値がございますけれども、一言で言って改善が進んでおります。完全失業率につきましては1ページの左の方にございますように、15年には15〜24歳、若者層の失業率が10.1パーセントを数えた時期もあった訳でございますが、18年は8.0ということで落ち着いてきてはいる。ただ年齢平均と比べるとその2倍ということで相当高い失業率になっております。
また、新規学校卒業者の就職内定率につきましては、ここ数年大きく改善をしているのが実態でございます。それから、次のページでございますが、フリーター、ニートの数につきましては、数字等は申し上げませんがそこにある通りでございまして、フリーターにつきましては15年をピークに減少を続けているところでございます。ただ年齢層で小分け致しますと25歳から34歳の部分の減少幅はやや小さくなっているのかなというところが有るわけでございます。簡単に言えばそういった情勢でございまして、引き続きこの傾向を維持していく、そして、やはり年長フリーターと言われる部分、ここが今後の対策の重点になるだろうと考えているところでございます。
そう言った意味で今後の課題として、年長フリーター、ニート対策、現にフリーター、ニートの方々に対する手を差し伸べて自立に向けた支援を進めていく。これも大変難しい訳ですが各方面の連携でやっていくというのが大きな課題でございます。そして、また、そういうニート、フリーターが増えるのを防止するという意味でも、企業におきまして若者の応募の機会を拡大していただきたい。これは法律改正等もございまして、力を入れているところでございます。
また、何と言いましても職業観、勤労観を早い段階から身につけていくような努力ということで、職業意識の形成支援、キャリア教育、また職業に就かれた後の能力開発でございますが、職業キャリアを企業が或いは自己啓発で築いていただくということが大事でございます。また、非正規と言われる方々の問題につきましては、正規雇用を希望する方には正規雇用の仕事に就いていただけるよう支援をしていくということが大きな課題でございます。  その他諸々ございますがその辺に止めておきまして、今日はテーマであります、若者の早期離職の問題でございます。これにつきましては、資料の3ページをご覧をいただきたいと思います。これも七五三と言われる、先程ご紹介のありました現象を表しております。卒業して3年以内に離職する方の割合が中学、高校、大学のそれぞれで七割、五割、三割ということでございます。この数字を見ていただきますと、平成8年から表しております、そう大きな変動は無い。ただ、大学卒につきましては、近年は少し上がっているということが見受けられるところでございます。加えまして、資料にはありませんが、遡って参りますと、例えば大卒の場合、1980年代の終わり頃あたりは、大体27パーセントから29パーセントぐらいでございました。バブル期には25パーセントぐらいに下がったということがございます。そういった意味では、長く見れば動きもあったということでございます。若者が転職、離職をされやすい、転職率が高いというのは昔からある現象でございます。しかしそれは時々の景気、雇用情勢等々に左右されまして動くところもある。しかしそれにしても昨今の長い、十年にわたりましてこういった現状にあるということにつきましては大変大きな問題だと認識を致しております。
また先程、理事長からお話がありましたように、新聞報道等によりますと、紹介会社等で早期離職をされて、就職してすぐ辞められて駆けつけられている方も増えているという実態もあると聞いているところでございます。そういった方々がどういう理由で早期離職されるのかという、直接的なデータはなかなか無いわけでございますが、お手元のレジュメや資料の4ページ5ページに紹介させていただいておりますが、労働政策研究・研修機構の調査がございます。これはレジュメに書いてございますように、従業員100人以上の企業を対象に35歳未満の若年従業員の方に調査をお願いしたものでございます。全て正社員として勤務されている方で、その中で前職がある方について離職理由を聞いたものでございます。給料、仕事上のストレス、会社の将来性・安定性、労働時間が長い、仕事がきついそういった部類が高い割合を占めています。また、現在勤められているわけですが、現在の会社からの転職指向についても、しばしば考える、或いはたまに考える、そういった方が結構多いわけでございます。
転職のことを考えた際に悩んだことは何か、仕事の内容、仕事が面白くないとかそういった話ですね、それから賃金の問題、或いは人間関係の問題、或いは自分のキャリアや将来性、或いは会社の安定性や将来性といったことでございます。
離職を思い止まった理由も聞いておりまして、ご覧の通りでございます。5ページの右の方にございますが、そういった方々と企業に相互に聞いている訳でございますが、企業が強化している若年者定着対策は何ですか、また若年社員が求める対策は何でしょうか、相対比いたしておりますけれども、企業の方では現に実行している対策としては、企業内研修を実施する、本人の希望を生かした配置を行う、職場で話しやすい雰囲気を作るといったことが高い割合を占めております。一方従業員の方では、賃金水準を引き上げる、休日を取りやすいようにする、本人の希望を生かした配置を行う、或いは仕事と家庭を両立させる、こういったところが高い数値で出ているところでございます。この種の調査はいろいろあるわけでございますけれども、本当の実態は何なのか、端的に掴むのは難しい訳でございますが、今日はこれからご議論をいただくことになろうかと思いますけれども、レジュメの2ページの方に少し書かせていただきました。
早期離職の背景は一体何だろうか、もちろんこれは個人的事情もあれば様々あるわけでございますが、中には積極的に転職をしていくという面も大いにあるだろうと思っております。転職した場合に賃金が上がるか下がるかという統計もありますが、若年者の場合は、離職率が高い上に転職をして賃金が上がるという方の割合が高い訳ですね。積極的な転職というのもあるということでございます。また、この積極的な転職については労働市場の需給状況にも相当左右される。今日若い人の人材不足ということで、そういった面が出ているということはあろうかと思います。それから、10年毎で見れば転職率が高止まりしてきている、これは何だろうかと。これはやはり新卒採用の時に条件に恵まれず不況の中でいい仕事、自分の希望する仕事が見つからなかったという不本意な就職をしたという方がやはり多い、こういう中でやはり率が高止まっているということがあるのかと思いますし、また仕事につきましても高度な仕事から定型的な業務に二分化をしてなかなか多くの方が仕事にマッチしないという面が出てきているということもあろうかと思います。
また、職業観、勤労観が不十分、或いは生活設計というものが十分できていない、こんなこともあるかと思います。それから何と言いましても、若者の就業意識が、相当変化をしてきている。また、企業、職場の側の様々な問題もあるのではないかと。職場環境にまつわる様々な問題、あるいは企業に若者を引きつける魅力が十分あるのかどうか、こんなことも一つの問題だろうと。また、採用選考活動の中で問題があったのかも知れない、こういった面もあろうかと思います。ご議論の参考にしていただき、多方面からのご意見をいただければ幸いでございます。
次でございますが、若者の早期離職、定着に係わる対策です。行政からしますと早期離職もいろいろありますが本人にとって不幸になるような早期離職はできるだけ防止をすると、同時に、離職されてしまった人たちにつきましては次の就職を希望に沿ってしていただくと、両面の対策がございます。また一般的に言えば、定着をしていただくということは企業の人材確保にとっても大変重要なことでございます。そういった面で様々な対策を、若者の対策の全体の中で取らせていただいているところでございます。そこに四点書きました。行政施策の他に職業意識の形成の観点、職場・企業の対応、的確なマッチングと書かせていただきました。対策は様々あり得ると思いますし、様々な観点から為されなければならないと思います。それぞれの当事者が努力をしていただかなくてはならないと思いますが、視点としてはこういった視点があるのではないかということです。行政施策の関係につきましては、お手元の資料の6ページから15ページに渡りまして付けております。現実化されている施策、最近行われました法改正のポイントの説明等々ございますが時間の関係もございますので割愛をさせていただきまして、また後で触れる機会がありましたら触れさせていただきたいと存じます。
以上で、私の、若者の雇用問題をめぐる対策についての紹介を終わらせていただきたいと思います。この後、活発なご議論がされますことを期待し、また私共としても参考にさせていただきたいと思います。

大槻勝啓(おおつき かつひろ)1953年滋賀県生まれ。1976年京都大学法学部卒業後、労働省入省。2003年8月中央労働委員会事務局次長、 2004年7月厚生労働省大臣官房審議官(職業安定、援護担当)、 2006年9月東京労働局長。 現職/厚生労働省職業安定局次長。

第二部:パネル ディスカッション
「早期に転職したがる新社会人の急増-現状分析と対策」
総括:
[山種美術館名誉館長、NPO人材アカデミー最高顧問]山ア富治
コーディネイター:
[コンセプトワークショップ代表]佐藤修
パネリスト:
[厚生労働省職業安定局次長、東京労働局元局長]大槻勝啓
[経済産業省経済産業政策局地域経済産業政策課課長補佐]鈴木英敬
[参議院議員、弁護士、元環境庁長官]浜四津敏子
[千葉大学名誉教授、東京都名誉都民]多湖輝
[首都大学東京理事長]高橋宏
[富士電機ホールディングス株式会社相談役、学校法人開成学園理事長]加藤丈夫
[社団法人東京青年会議所理事長]松本直勝

司会 東野 秀平
それでは、ただ今の基調講演を踏まえまして、第二部パネルディスカッションを行いたいと思います。
皆さんのお手元にパネリストの先生方のプロフィールが配られているというふうに思いますけれども、それを見ていただければ十分なんですが、パネルディスカッションを始めます前に当NPO法人の最高顧問で山種美術館の名誉館長であられます山ア富治様から、コーディネイター並びにパネリストのご紹介をお願いしたいというふうに思いますのでどうぞよろしくお願い致します。

山ア 富治
ご指名いただきました山崎でございます。私、一番の年寄りでございますので、コーディネイター、パネリストそれぞれをご紹介させていただきます。
それではまず、コーディネイターの佐藤先生、コンセプトワークショップを経営されていて、コーディネイターとしてはプロでいらっしゃいます。よろしくお願いいたします。それから今、基調講演でお話がございました厚生労働省職業安定局次長の大槻先生。経済産業省で地域格差是正の問題でご活躍の鈴木先生。参議院議員でもあり、弁護士でもあり、私の出身中学の後輩の浜四津先生。私の70年来の親友で、「頭の体操」で有名になった多湖先生。首都大学東京理事長の橋先生。富士電機の元会長で日本経団連で労使関係の委員長をされている加藤先生。東京青年会議所理事長の松本先生。以上の方々でございます。お手元に配られているプロフィールに詳しく書かれておりますのでご覧ください。
よろしくお願い致します。

司会 東野 秀平
それでは、これから後はコーディネイターの佐藤修様にバトンタッチをさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。

コーディネイター 佐藤 修
佐藤でございます。ただ今の基調講演を受けまして、これからその問題を掘り下げていくパネルディスカッションに入りたいと思います。その進行役を務めさせていただきます。
パネリストの方々はもちろんですが、会場にも多彩な方々がお集まりですので、議論がどういうふうに展開するかいささか不安ですが、どうぞよろしくお願いいたします。
入社早々会社を辞めたがる或いは転職したがる若者が増えてきたということは単に若者だけの話ではなく、企業はもちろん、社会のあり方、教育のあり方、さらには私達一人ひとりの生き方に繋がる非常に大きな問題ではないかと思います。限られた時間で議論をして問題解決出来るような問題ではありませんが、こういった現状をどう受け止めどう対処していくかということを、様々な角度から議論しあってその中から現状をどう改善していけばいいのか、或いは逆に、今の状況をどう活かしていけばいいのかというヒントなり切り口のようなものが見つかればと思っております。
進め方ですが、前半はパネリストの皆さんに議論していただき、その後休憩を挟んで会場の皆さんから、ご意見をいただければと思っております。
では早速始めたいと思いますが、最初にまずパネリストの皆さん方から一言ずつお話を頂戴したいと思います。転職したい若者が増えているという現状をどう受け止めているか、或いは、それが意味していることとか、それから何処に原因があるのかといったあたりから、お話を頂戴しようかなと思います。
まず経済産業省の鈴木さんからお願いしたいと思います。基調講演では、大槻さんから労働政策的な視点でお話を戴きましたが、同じ行政でも経済産業的な立場からはこういう状況はどう捉えられているでしょうか。

鈴木 英敬
鈴木でございます。本日はよろしくお願い致します。僕だけ明らかに若僧でございまして、諸先輩いらっしゃる中で大変申し訳ないなあと思いながらも、私は平成15年、ちょうど若者の失業がピークであった頃、ジョブカフェの立ち上げとか、キャリア教育の立ち上げとか、あとは社会人基礎力というものを担当していたりとか、そういうものをやっていたということで今日お呼び頂けたんじゃないかなあと思っております。先程、佐藤先生からお話がありましたが、行政の視点、経済産業の視点もさることながら、私まだ33歳でございますので、若者と普段接している肌感覚なんかもですね、交えながら話をさせていただきたいというふうに思っております。
先程、佐藤先生からお話のあった二点。受け止めと、意味、原因についてですが、先ず一点目ですけど、私は必ずしも離職が多いということについてアプリオリに、最初からダメだというふうには実はあまり思っていなくて、だめだなあと思うのは、転職した若者が放置されていて次の雇用に繋がらない、働き場に繋がらないという現状があるならば、それはよくないだろうと思います。他方で、日本は最近経済全体では人材の流動化、雇用の流動化というのは一定程度促進してきた面はありますから、人材が流動することによって人材が競争してその人材の質の向上を図っていくということは一定程度日本経済にとっては意味があるのかなあというふうに思っております。これが私の受け止めでありまして、今回、今、若者がいろいろ転職してしまっている意味、原因というところにつきましては、先程、佐藤先生から冒頭ございましたけれども、最近の若者はとか、そういうものは江戸時代から言われておりまして、ずーっと言われていることなので、僕は若者に原因があるとは基本的に思っていません。これは先程佐藤先生が仰しゃって戴きましたが、大人全員のものでありまして、大人を見て若者がこらえ性が無くなっていたり、すぐ諦めてしまったりとかしてるんじゃないかなというふうに思っております。ですから、先程理事長から私が頑張っても変わらないかもと仰しゃいましたが全然そんなことはなくて、ここにいる大人一人一人が当事者意識を持って頑張るということがこの意味であり改善するための対策、原因であるかなあと思っております。

コーディネイター 佐藤 修
のっけから元気な発言が出て、若者に軸足を置いた発言を頂戴しました。非常に面白くなりそうですね。
今回のパネリストの中では鈴木さんが一番お若いんですが、それでは次に若い方からお話をいただきましょう。東京青年会議所理事長の松本さん、企業のお立場からお話いただけますか。

松本 直勝
社団法人東京青年会議所理事長松本でございます。実は、こちらのNPO人材アカデミーの最高顧問をやられている山崎さんも青年会議所の私の50代前の理事長をされた大先輩でありまして、青年会議所は戦後、「新日本の再建は我々青年の責務」であると、混沌とした昭和24年に出来た団体であります。25歳から40歳までの青年経済人と言われる者が社会のあるべき姿を語り、国民と社会、国家への運動をしてる青年経済人で構成している団体でございます。私が一番感じていることは、20世紀というのは敗戦があって、そこからモノ、モノ、モノの物質主義、経済を第一主義に復興をした。青年会議所の理念である「明るい豊かな社会」という目標を達成したんだと思います。ですが、この21世紀に入ってからというもの忌まわしい事件が頻発する。その原因は、1960年代、世界からエコノミックアニマルと揶揄された。70年、80年代はさらに日本経済は発展を遂げた。1985年のプラザ合意で日本は世界の経済大国まで上り詰めた。あの時代は人間味ある方々、すなわち、戦前生まれの方々と、それからスキルが高い人とのバランスが取れ、企業、団体といったものの調和がとれていてベクトルが向いていました。だが、人としてのあり方をどこかないがしろにしてしまい、戦後生まれを教育してしまったのだと思います。社会の大半が戦後生まれとなった現代の問題とは、私は昭和42年生まれですが、生まれた頃、時代は既に豊かであったと思います。この豊かさが何かという価値観は物質主義的なモノ、モノ、モノに対する目に見える「有形」なものばかりです。本来の日本人は目に見えないものを大切にする感性があったのに。戦後の物質主義が日本精神を弱くした。目に見えないもの、無形なものを大切にし、精神の強さを持っていた民族であったと思うんですが、そういうものが崩壊してしまい、精神が弱くなっている。
では何が一体全体大事だろうといった時に、例えば働くことの意義だとかあまり教えていないんじゃないかと思うんですね。その精神面の強さというのでしょうか、もう少し、自分達の生活のためだけではなく、何のために働いて、個の豊かさ、真の豊かさとは、社会、「公」との調和というものをバランス良くとらえている世代から、行き過ぎた個人主義が利己主義となり、どんどん悪く変わっています。私たち東京青年会議所はその現状を打破して変革する運動をしています。人や国には志や夢が必要であり、それらがあれば目標というものを持って動いていく。人づくりと社会づくりをすべきとの想いから、開催している事業に、「魅力ある人財、夢ある社会」「社会体験実習や寺子屋事業」、わんぱく相撲や教育事業に係わり、出来るだけ早い時期から、公共心育成をしています。先程鈴木さんが仰しゃってましたけれども、スキルやキャリアは当然必要なものですが、子どもの頃はスキルより、何のために働くのか、何のために生きるのかという哲学を学ぶことが先行だと思います。なぜならかつての日本人は哲学を持ち得ていましたが、現代人は精神的に乏しいと思います。教育する時期を早めて、スキル的なことよりも、人としてのあり方やこころのもち方を学ばせる仕組みが必要です。我々企業が出来ることもそうなんですけれども、いきなりスキルを教えるまえに真の言葉の意味や人生の意味を教えないとならないと考えます。

コーディネイター 佐藤 修
ありがとうございました。若者だけを見ていたら問題は見えてこないということですね。たぶん長い間に培われてきた日本のあり方が今こういう形となって現れているというお話だったと思いますが、同じ企業でも、長年経営のお立場にあった加藤さんから次はお話を戴こうと思います。

加藤 丈夫
少し歳とっていますけれどあまり考え方が違っているつもりはありませんが、私は富士電機という電機会社で長い間物作りに携わって参りました。そういう経験の中から、最近の若い人たちの職業観を見ていささか心配なのは、物作りの会社の中での技術・技能の伝承が断絶をするのではないかという問題です。ご承知のように、2007年問題ということで戦後の団塊の世代が引退年齢に達しましたけれども、その人たちが培ってきた技術・技能をしっかり受け止めてくれる人たち、それが会社の中にどれだけ育っているか、これから育って行くかということが非常に問題だろうと思います。最近、現場力ということがよく言われますけれども、ここ数年、鉄道や発電所で大きな、人命にかかわる事故が何度も起こりましたし、製品でも自動車のリコールとか、パソコンやガス湯沸器などの事故が多発している。
この原因は様々ですが、やはりその根底には日本が今までしっかりと培って来た技術・技能があやしく なって来ているんじゃないか、ということがあるし、若い人たちに是非受け継いでもらわなければならないのですが、今のような職業観が社会の中に定着してしまうということに危機感を持っています。
私は経営の立場から若い人たちに言いたいことは沢山ありますが、むしろ若い人たちを受け止める経営側の反省点ということで三つばかり申し上げます。一点目は、会社で最近、実力主義とか成果主義という近代的な制度を取り入れて来ましたけれども、現実に仕事をやっている組織の仕組みとか、仕事の進め方などはかなり旧態依然のままのことが多い。 特に最近急速に進展しているIT革命などについては仕事の仕組が対応出来ていないケースが多い。これが若い人たちの仕事に対する不満の一つの原因になっているのではないか。これが一点です。二点目は、直接若い人たちに接する中間管理職たちが自信を失っているのではないかという気がします。
先日、私は経団連の研修の船に乗って五日ほど若い現場の監督者たちと一緒に過ごしてディスカッションしたんですが、現場をあずかっている監督者たちが今とまどっているのは、職場にいろんな人が入って来た。前は正社員だけだったんだけど、いろんな人が入って来て、その人たちがさまざまな価値観を持っていて、それにどう対応していいか分からないということです。 自分達が今まで育って来た中で培って来た価値観が揺らいでいる、そのことが一つ問題ではないかと思います。
三点目は、企業の大きな反省点ですけれども、企業内の教育費というのが急速に減って来ている。統計によれば、1980年代に比べて2000年代に入ってから企業内の教育費は約2割くらい減ったと言われています。企業の経営というのは、私も経験がありますけれども、苦しくなりますと3Kと言いまして、交際費と広告費と教育費を削るというのが大体のパターンですが、どうも、人にかける、人の教育にかけるお金を少し企業が削減しすぎてしまったのではないか。そのことが若い人たちの定着、或いは先程申し上げた技術・技能の伝承にも大きく影響しているのではないか、この対策についてはまた別の機会に述べさせていただきます。

コーディネイター 佐藤 修
企業の側にもいろいろ問題があるということを、とてもわかりやすく整理していただきました。
ありがとうございました。
行政、企業のお立場からご発言頂きましたが、今日は参議院議員の浜四津さんにも来ていただいております。浜四津さんも政治家のお立場として、こういう問題にもご関心が深いとお伺いしておりますので、よろしくお願い致します。

浜四津 敏子
ご紹介いただきました、参議院議員の浜四津敏子でございます。私は政治家として約15年半、教育、或いは社会保障制度、国際貢献等、命と生活を守る、そういう政策に取り組んで参りました。また議員になる前は20年間弁護士として子ども二人を育てながら仕事をして参りました。
私どもが若い人たちの雇用問題に着目して、ジョブカフェやトライアル雇用、或いは日本版デュアルシステム、若者自立塾などを提案し、行政と一緒に実現に取り組む切っ掛けになったのは、危機的と言われている少子社会また人口減社会対策に党をあげて取り組んだことです。 なぜ若い人が子どもを産まないのか、或いは産みたくても産めないのか、なぜ結婚しない若者が増えているのか、或いは、引き籠もり、ニート、フリーター、ネットカフェ難民と言われる人たちが増えてきたのかなど、議論を重ねました。多くの原因がありますが、私自身は大きな原因の一つは教育だと思っております。また、家族の絆、地域のあり方を考えると働き方の問題が浮かび上がってきます。それも原因の一つだろうというふうに考えて参りました。
現状分析を話せということですので、若者の雇用の現状分析、特色が三つあるというふうに私は考えております。一点目は、先ほどからもお話がありましたように、若者には特に非正規社員が多い、そして既に若者の段階で格差が拡大しているという点でございます。
二点目は、長時間労働です。これは若者に限りませんが、日本のサラリーマンの年間総労働時間というのは約2500時間。欧米の1.5倍と言われております。特に30代半ばの男性の4人に1人は週60時間以上働いている。中でも、これは南関東の調査ですけれども、小さな子どもがいる父親の約二割が、帰宅時間が何時かというと夜11時過ぎ、翌朝3時ぐらいまでの間に帰宅している。これでは家族団らんの機会はほとんどありません。子ども達は夕食をお父さんと一緒にしながら様々な話をする中で人間としてのルールとか、或いは生き方とか、或いは人生の夢だとか、様々なことを自然に学んでいくのに、その家族団らんの機会が長時間労働によって失われているという人たちが大変多くおられます。収入が低くて雇用が不安定で結婚が出来ない非正規社員と、一方で、生活を犠牲にして長時間働き続ける正規社員、こういう二つの姿が浮かび上がる訳でございます。
特色の三つ目は、早期離職者の増加でございます。高卒の50パーセント、大学卒の35パーセントが入社後3年以内に退職しています。特に、女性は大卒、短大卒の45パーセントは3年以内に離職しています。非常に高い水準でございます。こういう現状でございます。
その原因は何かということにつきまして、私は、いろいろありますけれど、大きく三つあると考えております。一つには社会の変化がある。企業からは、最近の若者は我が侭で忍耐力が無いとか、或いは企業で最初からやりたいことが出来るという考えが甘いんだ、という声はありますけれども、そういう一面も否定は致しませんけれども、雇用システム、或いは企業そのものの変化というのが大きな要因の一つになっているのではないかと思います。バブル崩壊後、社員をリストラして、パート、アルバイト、派遣に切り替える。或いは給与体系を結果主義に切り替える。その結果、終身雇用や年功序列など長年の雇用システムが崩壊して参りました。企業が長い目で、責任を持って人を育てる、こういうシステムも崩壊して企業は即戦力を求めるようになってきた。ですから、働く側が自分でキャリアを積み上げなくてはいけない。会社を選ぶ時代から職種を選ぶ時代に変化した、ということも言えると思います。
原因の二つ目は、教育が社会の変化に追いついていないということです。私は、教育に最も大きな原因があると思っております。教育の中で、社会とはどういうものなのかを体験する機会が非常に少ない。また、若者にとって、明日は今日より良くなるという希望が見えるシステムがどんどん崩壊して行っている。新しいモデルとなる大人が見えない。こういう中で子ども達は働くために何の準備も出来ないまま、或いは働くということがどういうことなのかわからないまま社会の中に放り出されている。多くの人がサラリーマンになる訳ですけれども、一体サラリーマンというのはどういう仕事をしているのか全く知らない。大学4年間十分楽しんで、そこから180度転換して社会の中に放り出される。サラリーマンとはこういうことだったのか、そこで初めて知る。そういう若者が戸惑って、こんなはずじゃなかったと、転職するのも無理はないと思います。
原因の三つ目は、人間関係の構築、コミュニケーション能力の不足だと思います。先ほどの、家族団らんの時間が少ないということもそうですけれども、例えば、若者の無職の人を対象にした調査では、困った時に誰に相談するか、という質問に対して、ニートの45パーセント、失業者の15パーセントは、相談する人が誰もいない、と答えています。また、高校時代に仲の良かった友だちがいたか、という質問に対しては、ニートの20パーセントは、いないと答えております。友人がいない、相談する人がいないというのは、人付き合いがうまくできて来なかった、人間関係をつくれなかった、そういう機会が無かった、ということだと思います。また、コミュニティが崩壊して、大人と子どもの自然なコミュニケーション、接触というのが非常に少なくなっているということが原因の三つ目だろうと思います。

コーディネイター 佐藤 修
ありがとうございました。問題の広がりがいろいろ出てまいりましたが、教育が社会の変化に追いつけていないという話がありましたので、そろそろ教育界のお二方にご発言をいただこうと思います。
まず産業界にも通じていらっしゃいます高橋さんからお願いします。

橋 宏
橋 宏です。いま首都大学東京の理事長をやっておりますけれども、その前は日本郵船という会社と郵船航空という会社でかれこれ50年近くやってまして、管理職を長いことやりましたので、若者との接触はかなり多かったということであります。今いろいろ皆さんのご意見を承って思ったんですけど、現象的には起こっていることはどういうことかと言うと、私も大学の学生と接触しまして、就職相談にはずいぶんあずかってまして、今日も大学の学生サポートセンターの鬼怒川聡君なども来てましてね、学生の就職相談、キャリアパス、いろいろ相談にあずかっています。
共通して言えることは、今の学生は就職をするのではなく就社をしているということ。俺は適性がこういうところにある、例えば、電機業界に行って、電機業界の中でも特にIT関係をやりたい、ないしは重電関係をやりたいというような、自分の職業についての確たる自信が無いけれど、とにかく日立なら大会社だからいいだろう、東芝なら大会社だからいいだろう。ソニーはかっこいい、トヨタかっこいい、要するに会社の名前ばかり、ブランドネームばかり選ぶ。そうすると軒並み受けると自分の適性と実力が伴っていないから次から次へと撥ね飛ばされる。多い奴は大体7社ぐらい受けてみんな撥ねられて行くところが無くなると、せっぱ詰まってフリーターになる。こういうことなんですね。その前は、学生が大学受けるときにもどういうことかというと、高校の時も同じ事なんですが、私共の息子なんかも大学受けるとき三つだけ受けさせた。おまえ願書いくつ出したいんだと聞いたら七つ八つ名前を挙げる訳、一つ一つ受験すると受験料3万円取られる訳でしょう、親もたまったものじゃない。おまえは自分の実力と身丈に合って選ぶとしてもせいぜい三つだよと言って受けさせて、しかるべき所に入ったのですが、若者というのは沢山、ルーレットのように、博打を張るようにあっちこっちパイを張るわけですね、ところがみんな外れるとみんな一緒にしてしまう。こういうことなんですね。これは、自分の適性というものをしっかり掴んでいない。それから、今までのお話を承って、やっぱり教育に問題があると言われました。
私も去年ここで「若者の人間力を育てる教育改革」というテーマで基調講演を一時間ほどやりました。その時の一番のポイントは、今の日本人は芯が融けてきておかしくなっているというのは、私は、マッカーサーが押しつけた教育基本法にある。この教育基本法で、公共のために自分を犠牲にしてもサービスするとか、日本の伝統文化を重んずる、そういう価値観、全部倒錯してしまって、とにかく我利我利亡者の立身出世主義ばかりがまかり通るような教育基本法になった。これが日本人をおかしくした。これに悪く便乗したのが日教組。この日教組が若者を子どもをみんなおかしくした。何とかしなくちゃいかんということで、60年間悪戦苦闘して、安倍晋三、失敗して辞めましたけど、安倍晋ちゃんがやった一つだけいいこと、三つくらいいいことやったんですけど、去年の12月22日に改正教育基本法をやったということなんですね。そういうことから考えると、今の若者が何となくダメだダメだと言っているのは、今の若者をダメにしたのは大人である、社会であるという、冒頭鈴木さんが言われたコメントも良く分かるんですよ。私も生意気盛りで日本郵船でよくここまで生き延びたなあと思うんですけど、若い頃、本社の課長時代に社長が会議で私らに向かって「今の若い奴はなっていない、俺たちの頃はもっとちゃんとしていた。」と言うんでね、「恐れ入りますけど、4千年前のエジプトの洞窟を発掘したら落書きが書いてあった、その中に何て書いてあったかご存知ですか。」と言ったら、「知らんよそんなものは。」「今の若者はなってないと4千年前の落書きに書いてありました。」と言ったら皆がドッと笑って、後で私の直属の上司の常務が来て「おまえ社長にあんなこと言ったらお前は絶対部長になれないぞ。」と言われたようなことがありますけれど、そういう部分を踏まえて、若者に少し温かい目で接する必要があるんだなあと思います。

コーディネイター 佐藤 修
ありがとうございました。次に、まさに教育界にずーっといらっしゃった多湖さんにお願いしたいと思います。

多湖 輝
多湖でございます。先ほど浜四津先生のお話を伺っていて、私の言うべきことはすべて仰しゃっていただいたなというぐらいでございます。非常にいいことを沢山仰しゃっていただいた。私も教育界に長いこと係わっておりましたので、教育が人を変える要である。教育といっても広く考えて、乳幼児期、これは家庭に中心があった訳ですが、その家庭、学校教育、いろんな仕組みが非常に変わってしまって、いま若い人たちと接触してみて、私ははっきり言って、もう言葉が通じなくなってきているということを痛感しております。私、高橋さんみたいに、上層部の優秀な学生を集めた訳じゃなくて、今年初めて開学したという小さな大学の学長でございます。そこへ入ってくる人たち。もう底辺の方まで全部入れなければいけない状態でございました。
私は大学生に居眠りさせるとかお喋りさせるとか絶対にそんなことはあり得ないよ、とタンカ切っていたんですよ。ダメですね。通じませんね。よくよく考えてみると、なんでこの子たち、私の話に関心持たないのかな、そうなんですよ、私の話は今どきの若い人たちにとって、もう関係ない世界なんですね。だから、その関係ないところを我々がどういう風に近づいて、どうやってぶち破っていくかということが問題であって、それには、また後で申し上げたいと思いますけども、乳幼児期から、つまり家庭の問題から入って小学校まででもう勝負はついていると思うんですね。そこから上は全然我々の手が及ばないといいますかね。私が、例えば、君たち「国家の品格」という本読んだか、例えばそう問いかけると、誰も読んでいない。あの作者の藤原正彦先生はお茶の水大学で数学を教えていらっしゃる。その数学の先生がこういう本を書かなければいけないような状況なんだ。お母さんの藤原ていさんは知らないかもしれないけれど、お父さんの新田次郎さんは知っているよね。これも知らない。私は新田次郎さんとある時期非常に親しくしていただいて、あの方面白い方だよ。でも全然関係無いんですね。それで、ふと気がつきまして、彼等は漱石も芥川も何も古典的なものを読んでいないし、水戸黄門を「ミズトキモン」と読む世代ですからね、もうどうにもならないですよ。それで、彼等を責めるだけではなくて自分自身を考えてみたら、私自身は朝のワイドショーを見ていて、どのスターとどのタレントがくっついた離れたと面白おかしくやっている、全然興味無いんですね。つまり両方知らないんですから。これがお笑い系なのか或いは歌い手さんなのかも知らないで、見ている気がしないからチャンネルひねるだけなんですよ。このチャンネルひねりという現象が、我々ロートルに突きつけられている。そして彼等は興味を持つことは凄いですよ。ネットの関係のことだとか、ゲームのことへの関心は凄いです。自分でパソコンを組立てちゃうし、それだけの能力を持っている。
ただ我々が価値を置いてこれだけは伝えておきたいなというようなことに関心が無い。そういうことであって、そこのところの大きな情報のギャップ、価値意識のギャップ、これを何とかしていかないといけない。
要するに今、縦軸の文化が完全に継承されなくなって来ている。この現象をどう考えるかということなんですね。今の若い人たちを力づくで、育てている企業の方なんかは、「君たちは努力が足りないよ、我々は役員から、社長からみんな集まって徹底的に小さなグループを作って何日間でもやるよ、一週間では足りなければ十日でもやる。お前何のために生まれてきた、どうするこうすると言って散々議論してやるとみんな素直にこっち向くようになるよ。君たちはまだそこまでやってないだろう。」とおっしゃる。そう言われてちょっとガックリ来た点もあるんですけれども、一応前説はこのくらいにしてまた後でお話したいと思います。

コーディネイター 佐藤 修
ひとわたり皆さんからお話をいただき、問題がいろいろな形で見えて来たかと思いますが、基調講演をされた大槻さんに今までお話を聞いていかがでしたでしょうか。

大槻 勝啓
非常に多岐に渡る論点につきまして、語り尽くされたというほど議論が広がりましてまた深くなされたところだと思います。特に足りないところは無いような気が致しますけれども、一言申し上げますと、私自身の経験でいきますと、私自身30何年か前に入職をした訳ですけれども、学校時代を考えるとやはり職業というものについて、或いは勤労観、職業観については殆ど学校では扱われていなかったのかなという感じが致します。今そこは強化されようとしていますし、文科省もキャリア教育に熱心に取り組んでおられると、これからはだんだん良くなるのかなと期待しておるところでございます。今日はお手元に色つきのパンフレットが配られていますが、その中には単に学校における教育というだけではなくて、国民運動の一つの 取り組みということで書かれている部分で、地域社会の取り組みというところがございます。
広い意味で、学校教育だけでなく地域社会で親が、近所のお父さんお母さん、或いは自治体が、自治体の中のいろいろな場面で、また地域の町会の中で子どもに対する広い意味での教育というのはできるのではないか。そういうことで、いくつか各家庭の支援でありますとか、住民参加によるいろいろな機会での学習の機会、或いは地域社会におけるいろいろな意味で仕事に関する助言相談、支援が必要だと。或いは意欲や自信を失いかけている若者への助言、社会参加。労働体験の場の提供、いろいろ書いてありますが、多くの大人が先輩として何ができるか、ここのところが非常に重要かなということを思いました。

コーディネイター 佐藤 修
ありがとうございました。早期に転職したがる新社会人が急増しているということが問題提起していることが本当に幅広くいろいろあるということが改めて確認されたように思います。
多湖さんのお話にあったように、多湖さんの世代と鈴木さんの世代では、もしかしたら違った情報の世界に生きているかもしれない。そこを繋げていくということがすごく重要になって来ている。 しかし、当然のことながらじっくり話していくと世代を超えたつながりもある。そうした大きな問題も含めて考えて行かなければいけないのかなあという気が致しました。  鈴木さんは、積極的な転職という言葉をお使いになりましたが、確かに働く人と働く場のミスマッチングのような問題は社会的損失と言えますが、でもマイナスだけでなくてプラスの要素もあるのではないかというのが、鈴木さんがメッセージしたことの一つだろうと思います。
そうしたことも含めて今の状況にどう対処していったらいいか、あるいは今の状況を逆にどう活かしていったらいいかということを、また皆さんにご発言いただこうと思います。
鈴木さんから口火を切ってもらいましょう。

鈴木 英敬
どう打開していくかということは、先ほども話がありましたが、僕は二つくらいあるかなと思っておりまして、まず一つは、就職の際に若者がよく考えて就職する。先ほど高橋さんからもありましたが就社ではなくてよく考えて就職をするようにしないといけないんじゃないかなあと。私も公務員の採用面接をよくやっていまして、「僕公務員に向いていますか。」とよく聞かれるんですけれども、帰ってくれといつも言うんですけれども、それは置いておいて、やっぱりよく考える。そのためには、こういう機会もそうですけれども、行政もそうですし学校もそうですし家庭も、大人はそういう機会を沢山作ってあげること、仕事を考える機会、先ほど浜四津先生からもありましたけれど、普段の晩ご飯もそうかもしれませんし、考える機会を沢山作ってあげることが大人の仕事であり、よく考えるのが若者の自分の責任ですから、それをしっかり伝えてあげることだと思います。それが一つめ。
二つめは、やっぱり大人が変わることだと思うんですね。仕事というのは生活そのものなので、生活のところから大人が変わっている姿を見せてあげないといけないのかなと思っていて、具体的には、僕の経験もそうなんですけれど、僕は通産省に入りまして、楽しいから通産省みたいな、国家のために、公のために、とか、実はあまり思っていなくて公務員になっちゃったみたいな感じだったんですけど、このジョブカフェもそうですし、いろいろ仕事をしていて、ありがとうと言われたことが何回かあって、鈴木さんが作ってくれたおかげで、ジョブカフェに行ってそれで就職出来た、ありがとう、と言われたら嬉しくて仕事頑張ろう、自分のためではなくて人のために仕事頑張ろうと思えるわけですね。そこを、若者に対して大人が「ありがとう」と恥ずかしがらずに言ってあげることが、自己肯定感を持てて新しいことにチャレンジして行こう、仕事として頑張って行こうというような仕事の意味みたいなものも感じていけるのではないか、というのが一つと、あとは、大人が変わるということでは、若者としては、理屈無くてもかっこいいと思えばやれることは一杯あるんです。
最近、若者の動きの中で、ゴミ拾いをしているNPOとかゴミ拾いしているサークルみたいなものがいっぱいあるんですね。 何でかというと、ゴミ拾って社会のためになんて思ってなくて、ゴミ拾いするのがかっこいいからやっているんですね。そういう形で、今働いている大人が、先輩達が働くことがかっこいいと若者に思われるよう生き生き働くこと、愚痴ばかり言って新橋で「異論反論オブジェクション」に出ている場合じゃなくて、生き生きと働く。シンドイこともいっぱいあるけど働くことはメチャ楽しいというふうに大人自身が言ってもらうこと、まず生活そのものから変えていくことが大事じゃないかなというふうに思います。行政のことについては後でお話いたします。

コーディネイター 佐藤 修
ありがとうございました。今のお話を聞いていて、職業観とか勤労観という言葉では若者には通じない、もっと生活につながっている言葉で考えていく、或いは働きかけていくことが大切なのかもしれませんね。
大槻さん。改めてこの問題にどう対処していったらいいか、お話いただけますか。

大槻 勝啓
若者と大人という話が先ほどから出ていますが、私も紙に就業意識の変化等々と書いたんですけれども、具体的にどう変化しているのか、いい方向なのか悪い方向なのかを考えると、決して悪い方向ではなくて 多くの場合いい方向に向かっているのではないかと。前向きに捉えた方がうまくいくのではないかと思っております。例えば、新入社員や若い人を対象にして人生観、仕事観、生き方等について、政府、関係団体、いろいろなところで調査をしておりますけれども、働く目的は何かと聞きますと、楽しい生活をしたい、その楽しいとは単に面白可笑しいということではなくて職業生活として楽しい、仕事が充実している、そういった意味なんですね。そういう意味では、いろいろなデータ等を見ると若者もトータルとして見れば自分なりの価値観というものを持って、そういう尺度を持って充実感、満足感を得られる人生を送りたい。また、そういう仕事をしたい、こういう前向きのところがある訳でございます。そこに着目をしないといけない。一方では、あまり責任ある仕事をしたくないとか、努力とか訓練が必要なことはやりたくありませんと言うような人はいることは事実ですが、他方では、苦労しても是非やり遂げたいというような積極的な気持ちを持っている人も増えている。ある意味では、分化しているというか、価値観の多様化している面もあるんですけども、そういうことに着目して全体をいい方向に引き上げていく、そういうことが大事ではないかと思っております。
私の資料の一番最後の方でございますけれども、今年、雇用対策法という基本法を改正をいたしまして、若者も女性も高齢者も全員参加型の社会を作らなければならないという発想の下に基本法を整備したものでございますが、その中で、若者の応募機会の拡大、これは形としては企業に対する努力義務という形で作り、また、具体的に事業主としてどうしたらよいかという指針を作りまして、その内容が14ページから15ページにかけて書いてございます。15ページにございますけれども、事業主が青少年の募集及び採用にあたって講ずべき措置として、一番上に書いてありますように、青少年の募集、採用にあたりまして過去の就業形態や離職状況にとらわれることなく人物本位による正当な評価を行うべきだ、これが非常に重要なことではないかと思っております。
日本経団連の調査によりますと、フリーターの経歴をどう評価するかといいますと、これについては、評価するというのは少なくてマイナスに評価する向きが多いわけでございます。これが実態でございまして、そういったことをふまえて、しかしこのままでいいのか、フリーターの方々が職業能力を蓄積する機会も無くなかなか安定した仕事に就けないということにつきましては、社会全体の生産性の問題にももちろん響きますし、多くの方々の幸福の問題にも結びつく問題でございます。生産基盤の問題にもつながる。また少子化ということにも繋がっていく。社会保障を支える人たちが減っていくという問題ですので、国民的課題だろうということでこういう対策が行われた。早期離職者について心配なのは、前向きに上昇志向で、それなりに力もあり、いい方向に転職される、これは本人にとって問題は無いわけでいい方向にいっているわけですが、簡単に離職してしまったから次の行く先が無いと、正規労働者で簡単に離職をされてその後どうなるか、ということにつきましては、どうも正規には就けなくて非正規を続けるというような状況もあるわけでございまして、そこは本人の問題もあるわけでございますが、社会として考えなくてはならない要素があるんだろうと思っております。
現実にフリーターの人を採用した企業には、使ってみると非常に良かった、むしろ使ってみて初めてその良さが分かった、評価が変わったというような企業も見られます。そういう方向に社会が変わっていって欲しいなということを強く考えております。先ほど、若者の職業意識の問題がありましたが、ぜひ企業の方も前向きに捉えていただきたい。
若者の場合、採用してしばらくは単純、定型的な仕事に長らく就かされるということも時にはありまして、それは本人にとって、この会社は我々のキャリア形成をどう考えているのだろうと、これからが不安だと、不満が鬱積して辞めてしまうということもあるわけでございまして、むしろ前向きのところをどう評価して引き出して、企業の側からするとうまく活用するかと、若者の立場から見れば、自分達の能力を最大限使って欲しい、いい仕事をして評価をされたい、こういう気持ちに是非企業の方で応えて戴きたいなと、こんなことを考えております。

コーディネイター 佐藤 修
ありがとうございました。行政のお立場からいえば、企業への注文もいろいろとあるのではないかと思います。いろいろ企業と付き合っているけれども、なかなか動かない、もっとこういうことを考えてほしいというようなことがあれば、今日は企業の方も多いので、ぜひお話しいただけませんか。

大槻 勝啓
労働問題については、過去いろいろな企業に対して、ある意味ではその時点で負担をお掛けするような問題をお願いして参りました。 私もいろいろな経験をしておりますけれども、これは結局はいい方向に動いていると思うんですね。
やはり、一時の負担はあったとしても結局それが企業にとって人材の確保に繋がり、いい人材の定着に繋がり、企業の経営力の強化、活性化に繋がるということが確実ではないかと思いますので、そういう観点から前向きに捉えていただきたいと思います。

コーディネイター 佐藤 修
にも拘わらず今の企業はそういうリスクをなかなか取らないというご不満もあるのではないかと思います。
松本さん、加藤さん、そのあたり是非コメント頂きたいと思うんですが、この問題をどうしたらいい方向に転じられるかということですよね。

松本 直勝
働くことの喜びだと思うんですけど、仕事というのは何も報酬イコールお金だけではありません。青年会議所が一つの良い例です。私たちのメンバーは中小零細企業が多いですけれども、その中でも「公」を忘れずして働かなければいけないと考えます。先ほど、幼少の頃、早期から訓練や躾をすべきだと述べましたが、例えば、ソーシャルワークとして、老人ホームでもいいでしょうし、養護施設でも、義務教育課程でそういう所に行って少し社会との関わり合い方を習慣づけていく仕組みが必要だと思っています。もっと過激なことをいうと、徴兵制です。自衛隊での集団教育を受ける。一年でも一年半でも体験すると人は変わると思います。例えば、私ども青年会議所は国際青年会議所もあって、世界中に青年会議所メンバーが存在します。アジアの中でも特に韓国と台湾には皆徴兵制があり、精神も肉体も鍛えられている分、やはり芯が強いんです。彼等が持つ国を愛する心だとか国家像みたいなものは我々日本人より強くて、その違いは徴兵制だったりするんです。戦争のための徴兵制という意味ではなく、集団生活をする中で国家像や社会像など、国民として必要な意識を醸成していく過程が必要だと私は思います。先ほど高橋先生が言われておりましたけれども、私もGHQによって日本人は骨抜きにされたと思っておりまして、歴史、地理、修身というものが全部消されてしまったのが今の日本人の精神的ひ弱さだと思っております。貧しくとも元来持っていたこの日本精神を取り返していかないとこの国はダメになる。物質主義的になったのは、実は今言われている物質信仰主義と言われている世代は昭和一桁の方々から十年までなんて言われておりますが、上の世代から律することをしないと、その世代から二世代から三世代は治らないのではないでしょうか。
先ほど多湖先生が仰しゃられておりましたけれども、縦軸の文化が壊されていると私も思うんです。もともと日本人の風習とか習慣みたいなものがどんどんどんどん薄れてしまって、日本の文化って何だろう、例えば日々の生活にはもう無くなりつつあると思うんですね。一つは食文化がいい例でしょうし、チェーン店ばかりがどんどん出来て、母になる方々も手作りで食事を作ってあげない。その人たちはどうするかというと大手ハンバーガーチェーンであったりとかお弁当だとかコンビニのものばかりを食べています。これらの良いところは便利さだけです、私は二人の子どもがいますが、手作り弁当を持って来た家族は殆どいないのです。八割から九割の人がみんな買ってきたものを食べている。美味しいとかというものの原点は実は別に高価なものでも外食でも無いと思うんですけれども、そういう愛情が注がれていないというのが私は大きな問題だと思います。社会の最小単位は家庭ですからその家庭の中で、一人っ子が増えてデジタルゲームだけをやっていて、ゲームをリセットする、この感覚が習慣になってしまえば当然その子ども達は弱くなると思うんですね。企業の立場であってもああいうデジタルゲームというのは大脳をだめにするのですから、少し抑制というか、規制をしないと害がありすぎる。
集団生活や訓練をするようなことが必要だと思うんですね。躾すらも学校でさせようとする親の意識なんて馬鹿げた問題と笑ってられないのです。家庭で躾けられていない世代が多いのが我々世代であり、上の世代でもそうでしょうがその親のお子さん達は更に躾られていないのです。電車に乗るとよく分かるのですけど、電車に乗って、老人が来られた、妊婦さんが来られた、障害者の方が来られた、若い子達は脚を広げて座りますでしょ、注意したりすると注意されたことや叱られたことが無い人がたくさんいる訳ですよ、ということは、化粧するのも「公」でするのも私の自由だ、自由があるけれども責任もあるということを教わっていない。権利の話をするけれども義務を説くことをしていない。このバランスが本当に個人の中でも失われつつあって非常に「公」が殺伐としているというのが私の見解です。ですからその仕組みを幼少の頃から、義務教育の中で一訓練か躾をする。習慣にさせる教育課程を変革することを私は提案します。

コーディネイター 佐藤 修
ありがとうございました。今のご提案は企業でも出来ることもあるように思いますが。

加藤 丈夫
いろいろ申し上げたいことは沢山ありますが、一つだけ話しておきますと、いま経団連でも重点課題として取り組もうとしているテーマに、ワークライフバランスという活動があります。これは仕事と生活の調和を保とうということで、働く人たちが新しい働き方を見出すことによって、出産とか育児とか介護とか教育とか地域貢献とか自己啓発に十分な時間を使って自己実現を図る。その一方で、働く場では従来以上の生産性の向上を図って会社にとってもWINだし働く人にとってもWINだと、そういう社会を作って行かなければならないし、会社の仕事の仕組みもそれに合わせて変えて行こうということをいま取り組んでいるんです。昨日、経団連では2008年度の経営労働政策委員会報告というものを発表しましたけれど、その中にも、これからの企業というのは本当にワークライフバランスということをしっかり見据えた経営をして行かなければならないということが強調されている。このことは短い目で見ても長い目で見ても、対策の基本になると思っています。
ただ、私はワークライフバランスを徹底させようと思って全国のいろんな地域の経営者達とお話をするんですけれども、それぞれの地方の方達が決まって言うのは、「何そんなのんきなこと言っているんだ、そんなことを言うのは首都圏にある大企業のゆとりのあるトップが言うことだ、我々は地方で生きるか死ぬかの戦いをしているんだ。」という方が多いんですね。そんなこと取り組んでいられるかという方が多い。私はよく言うんですけど、「まあいいですそれは、だけどそういう経営していたら若い人来なくなりますよ、そのうち潰れますよ。」と言っているんですけども、これをどうやって定着させるか、さっき浜四津先生が家庭の団らん、家庭の大事さということを仰しゃいましたけれども、やはりそういうことを通じて社会全体の流れを変える。  これは、何か経済界にいると、どうも利益ばかりを追究してなんかガリガリやっているんじゃないかというふうに思われがちなんですけれど、むしろ経団連なんかが率先してそのことを主張し始めている、行動し始めているということについて、ぜひ皆さん理解していただきたいと思います。

コーディネイター 佐藤 修
ありがとうございました。今日の大きなテーマが企業に突きつけているのは、たぶんこれからの企業の生き残り、そして発展していくための非常に重要な問題提起だと思うんですね。それを前向きに捉えるか、若者に問題があると捉えるかが非常に大きな分かれ目になるような気がします。
加藤さんからは最初のお話でも非常に具体的に働き方の問題についてお話いただきましたが、働き方の問題では浜四津さんも先ほど幾つかの問題を提起をしていただきました。家族のあり方を含めて、子ども達がいろいろの場でコミュニケーションを身につけていく場が非常に少なくなって来ているというお話がありましたが、その働き方の問題、家族の問題、そこら辺の問題を含めながらこの問題に対する対策をお話いただけるでしょうか。

浜四津 敏子
若者の人たちが仮に働きたくない働く意欲が無いというのであれば、それは人間力が形成されてないという問題であろうと思います。働く喜び或いは人の役に立ちたい、自己実現したい、これは人間として本来は当たり前の力です。これを教育が引き出していないという問題だろうと思います。
一方で、働きたいのに働けないというのであればそれは社会のシステムの問題だろうと思います。私は政治家になってからイラクの難民キャンプ或いはアフガニスタンの難民キャンプ、内線が終わった直後のカンボジアなどに何度か足を運んで子ども達と対話をして来ました。
衣食住が本当に貧しい、食べる物もあまり無い、学校も茅葺きで土の上にちょっとに座るところがあって、教科書もあまり無い。そんな所でも子ども達に「何になりたい?」って聞くと目を輝かせて、「僕はねお医者さんになりたいんだ、」或いは「学校の先生になりたいんだ、」「技術者になりたいんだ、」とみんなはっきりと言うんですね。日本に帰って来て、日本の子ども達に「何になりたい?」って言うと、「うーん別に、」とか「野球の選手に」とか「お嫁さんになりたい」とか、それはそれでいいんですけれども、ちょっと目の輝きが違うなということを実感して参りました。
ですから一つには教育の問題。もう一つは、先ほどお話がありましたワークライフバランスの問題です。政策を推進するためには法律とか税制が後押しになりますので、まずはワークライフバランスを推進するために法律を作りたいと思っております。  一つ目の教育ですが、私どもはこれまで職業体験或いは自然体験、ボランティア体験などの体験学習を積極的に取り入れるよう支援して参りました。体験学習には大きな力があるというのを私はいろんな現場を見て感じて参りました。それから子どもたちにいい本を読んでもらう読書運動も進めて参りました。例えば学校での10分間読書活動は10年前にはほんの数える程でしたけど、法律をつくり、そして地方議員と協力して取り組んで今は26000校程に広がっております。それによってイジメが少なくなったとか或いは不登校が少なくなったというような効果も出ています。
小学校から中学校、高校、大学、それぞれ体験学習の内容は少しずつ違うかもしれませんけれども、たくさんの体験を子ども達にさせてあげたいと思います。職業体験をした子ども達にその感想を聞いてみますと、これまではお父さんはお休みになるとテレビの前で寝転がってマグロみたいに横になって、そういう目で見ていたけれどもそうじゃないんだ、社会でこんな立派なことをやっているんだって、お父さんに対する尊敬が生まれた、とか農漁村体験で命の不思議さ、大変さを学んだだとか、或いは自分達で野菜を育てるということをやっている学校では野菜嫌いだった子が自分が育てた野菜は食べられる、野菜嫌いがなおった、ということで給食を残す子が少なくなったというような食育にも通じている訳です。
教室の中だけ、机の上だけでは学べないことを、実際に体験することで子ども達は目に見えないたくさんのことを学び、人間力が自然に育まれるのだろうと思います。それが働く意欲になったり或いは人の役に立ちたいという気持ちを芽生えさせたりということの大きな力になると思います。
私は、ケネディが実現した様々な政策ついて調べたことがありますが、ケネディは平和部隊というのを実施したんですね。平和部隊というのは、年代は問わず、例えば一年間学校を休んで、或いは企業を休んで発展途上国にボランティアに行きたい、或いは難民の支援に行きたい、こういう人を支援する、それを評価するという取り組みなんです。それによって非常に精神的に逞しくなる。先ほど自衛隊とか、そういうところで訓練を受けた方がいいと、こういうお話がありましたけれども、日本版平和部隊というのを作れればいいなあというふうに私は思いました。国が支援して、費用的にも支援する、或いは帰って来たときにちゃんと元の職場に戻れる、或いは学校としても成績として評価できるというような、そういうシステムが出来ればいいなと思いました。
また、先日、杉並区の和田中学校というところに行ったんですけれども、この和田中学校というのは民間の校長先生を採用しておりまして、大変ユニークな教育をしております。その中に、一つの学科に「よのなか科」というのがあるんですね。その「よのなか科」では、子ども達に、例えば自殺について考えさせる、或いは、ホームレスについて考えさせる、社会でおきているいろんなことを子ども達に考えさせる。お互いに議論をさせる。私がこの間見に行った時には、ホームレスをテーマでやってましたけれども、本物のホームレスを連れて来るんです。その人はホームレスから立ち直ったというか、今は農村でお米を作っている人なんですけれども、そういう人の話を子ども達は聞くんですよね。
ホームレスの人の話を聞くまでは、ホームレスというのは汚くて邪魔な存在で、ああいうのは排除してもいい、そういうふうに言っていた子ども達が、ホームレスの人のいろんな話を聞いた後には、政治家はちゃんと支援する方法を考えるべきだ、ホームレスの人に住む場所を提供して、働けるようにするべきだとか、見方、考え方が変わるんですね。経験豊富な団塊の世代の人たち、リタイアした人たちも一杯いらっしゃるので、是非、学校に行って子どもに関わってもらいたいと思います。
また、ワークライフバランスのとれた働き方を是非企業としては進めていただきたいと思います。長時間労働を強いるのではなくて、また有給休暇もきちんと取らせてあげて、そうすると働く意欲が湧きますから、同じ時間働いていても効率が絶対いいはずです。家族団らんの時間を取れるような働き方を進めて家族の崩壊を防いでもらいたい、こんなふうに思います。
地域社会の中で人間関係の絆を作ったり、或いは家族の絆を取り戻したり、というところから、本当に人間の生き方のイロハのイから、例えば、盗むな、殺すな、嘘つくなとか人に迷惑かけるな、或いは人の役に立つのは素晴らしい生き方なんだということを言葉ではなくて、子ども達は自然に身につけながら育っていくだろう。こういうふうに思います。

コーディネイター 佐藤 修
ありがとうございました。先ほど橋さんも仰しゃいましたけれど、やっぱり我々大人の生き方の問題かもしれませんね。
企業、学校、行政がそれぞれバラバラでやるのではなくて、一緒になって取り組んで行かなくてはいけない。それがないと何事も解決しないのではないか、そこを繋いでいくことがこれから重要になって来ると思います。
橋さんは、産業界にも教育界にも、さらに行政にも通じていらっしゃいますので、そのあたりのお話をできるだけ具体的にお願いします。

橋 宏
今日、諸先生のお話を聞いていて、私も全く同じ事を考えているポイントがあります。まず、少子高齢化時代。少子高齢化時代というのは大変なんです。昨日、実は私共の大学のオープンユニバーシティやっているところで危機管理講座というのがあって、そこでも、田中角栄をふん縛った、ある有名な特捜検事の話を聞いた。そうすると、やっぱり少子高齢化というのは大変に問題だ。日本の犯罪は、外国人労働者にどんどん頼らなければいかん、そういうような問題もある。同じ事が教育界の中でも少子高齢化というのがどんどんどんどん進んでいる訳ですね。
もっと分かり易く言うと、1992年には205万人だった、それから、昭和41年になると終戦後引き揚げて来た人たちが子どもを産んだ、その時の18歳人口は250万人いた。それが1992年、平成4年には205万人に減った。ただ今現在、去年の18歳人口130万人。それから去年生まれた新生児が106万人ですよ。そうすると、これが18年後には、ちゃんと106万人が生きているかというと生きていない。大体2から3パーセントは病気などで死んでいる。必ずドレーンが起こってくる。そうなってくると、今年大学に入って来た子ども達が18歳130万人のうち72万人入っている。そうすると18歳人口の大体52パーセントが大学に入っている。 私や多湖先生の頃は大学に行く奴は大体5パーセントから6パーセントということだったんですね。 それが入って、みんなニートになったりフリーターになったりしているのではあまりに効率が悪い。
少子高齢化ならば少数精鋭主義で入ってきた学生をそれぞれの大学で落ちこぼれが出ないような丹念な教育をしなければいかんと、これがポイントだと思うんですね。丹念に子ども達を育てるということはどういうことかと言うと、大学時代に生きた実社会体験みたいなものを、全部が全部に与える訳にはいかないけれども、インターンシップという問題がこれから出てくる。
後のフリーディスカッションで元名古屋大学教授の田中君という人が、これがインターンシップの本を書いたり、ベテランなんで彼の話も聞きたいと思うんですが、私共の大学も毎年1400人程の学生を入れますけれど、大体600人から800人くらいは全員にインターンシップを受けさせます。800人の職場を確保するのは中々大変なんだけれども、幸い東京都というのは大変な職場を持っていますし、私が知っているいろんな企業にも頼み込んで実社会体験をやらせる。大体8月9月ぐらいにかけて大体10日間から2週間ぐらい実社会体験をやらせる。
私は、出来るだけ学生に与えるジョブは本当に底辺のゴミ拾いみたいなダーティジョブをやらせてくれ、こういうことを注文つける。例えば、下水道局にいった奴は、もう腕まくりをして下水のヘドロを掻かせる、というような仕事。それから、主税局は100人くらい受けてくれるんですが、主税局あたりに行ったら、税金滞納している人の所へ行って頭を下げてお願いさせる。それから家屋の固定資産税の計算なんかもちゃんと計算方式を与えて自分で勉強させる。動物園に行きたがる奴がたくさんいるんだけれど、動物園に行ったってかっこのいい仕事はやらせない、カバのウンチの掃除をさせる、みたいなそういう仕事を子どもらにやらせると、子どもらは社会の仕組みはどういうものかというのがだんだん分かってくる。そういうことを徹底的にやらせなければいかん、ということですね。
それから、最初の、教育投資をもっと盛んにして欲しいというご意見もありましたね。全く同感であります。これは今日の、若者を育てる、とは直接には関係ないんですが、やっぱり何かお座なりになっていると、日本の教育投資が如何にプアーかというと、例えば日本の小中高大にわたる教育投資は、日本のGDP比は、日本の教育投資は4.5パーセントです。何と驚く無かれ、アメリカは7.5パーセントです。それから北欧三国、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、これは6.5パーセントです。それから、今年の夏頃でしたか、早稲田大学の学長の白井さんが書いていましたが、文部科学省が出してくれる助成金の運営費交付金というのは1.2兆円あるんだそうです。実はその後増えて、次世代人材育成研究会で1.5兆円という話をしていましたけど、白井さんの統計では、1.2兆円のうち私学が貰っている金は0.33で、残りの0.87兆円というのは国立大学が貰っているということなんですね。一方、日本の大学の教育の中の私立の数は70パーセントから80パーセントあるんですよ。もっと私学に文科省が金を廻してくれないと私学はやって行けないだろうと、私は思うんですね。
そういうようなことを含めて、日本というのはもっと、これだけ豊かな国になっているのだからGDP比の教育費が4.5パーセントなんて恥ずかしいと思う。アメリカは7.5パーセントあるんですよ。それから、日本の大学教育に投資している金が、日本は1.3、アメリカは1.9、北欧は2.0。いかに日本の教育投資がプアーかということですね。ここはちゃんとやらなければいけないと思います。

コーディネイター 佐藤 修
そういうことが、こういう問題に出てきている、ということですね。
最後に、多湖さんお願いできますか。

多湖 輝
こちらに座っていらっしゃる浜四津先生は、私の中学校の後輩なんです。
向こうに座っている山ア君は僕の同級生ですが、今流で言うと戸山高校というのですが、昔は府立四中と呼んでいたんですね。
浜四津先生は今日はいいことをおっしゃるので、私、言うことも無くなっているのですが、そのおっしゃることを、政治力或いは行政の力で制度化して欲しいと思います。体験学習というのを東京都でもずいぶん進めていますけれども、これは非常に役に立つ。ただ、千葉大あたりでも随分盛んにやったのですが、ある所に泊めて合宿して、小学校の4年から6年くらい、合宿して登校する、そういうことをやっただけでも絶対違って来るんですよ。
イギリス王室の王子様達は全部小学校から寄宿学校に入れていらっしゃるんです。トイレ掃除から何から全部やっているんですよ。イートン校ではフロックコートを着て、テニスなどそのままのスタイルでやっています。イギリスでは中学レベルに来ると月一回しか家に帰れない。小学生で寄宿しているところでは大体週一回家に帰る。親も大変喜んでいる。手がはぶけていい、と。その間自分の自由な時間が持てるから非常に助かっている、そういう意見もあるくらいで、そういう、トイレ掃除から何から全部いろんなことをやって、そこで人生について仲間と話し、そこの寮長というのは大変な人選をして学識なんてことじゃないんです。人間力を持った、そういう人を充てているというような仕組みなんですね。イギリスの場合、私、非常に感心しているのは、是非首都大学東京でやって欲しいと思っていたのですけれども、昔、イレブンプラスという制度が御座いましたよね。11歳の時に、お前はもう大学に入る資格は無いよ、そこで能力で差別して決めちゃうんですね。それは乱暴だというので、労働党が天下取った時にそれを止めたので、その後、私あまり勉強しなかったのですが、今はAレベルテストつまりは高等教育を受けるレベル。国家試験に変わっていました。しかもAレベルテストで受ける科目は自分の得意なものでいい。3科目とか4科目、それを受けて、その成績を見て、大体あそこなら通りそうだと、どこの大学へ出願しても構わない。それで、合格というのを貰ったら、その後がまた大変いいと思うんですが、ギャップイヤーというのが1年ある。
ギャップイヤーというのは、入学が決まった状態で、すぐ入学しなくてもいい、1年間は自由で、あなたは社会を見てらっしゃい、世界を見てらっしゃいという制度なのです。そうすると大体は途上国へ行って学校を作るところから始めて英語を教えて来るとか、そういういろいろなことをやって、そしていろんな世界を見て帰ってくるわけで、もう問題意識一杯で、大学生活がそこからスタートするという、そういう仕組みをとっているみたいです。教育の議論、今盛んになっていますけれど、私は、企業の段階でいろんなことをしようとしてももう手遅れだと思うんですよ。手遅れ。大学でも手遅れですよ。こんな子を大学に送って来るなよ。高校は一体何をやっておるんだと。高校へ行って見ると、いい高校もあるけれども、その下で決まっちゃうということで、だんだん遡っていくと、もう本当に小さい内に習慣をつければいいということになります。
礼儀作法にしたって、社会経験にしたって、先輩がいろんな人生について語ってくれる。それが大切なんです。そういうようなことを制度的にうまく取り入れて行かないと、この国はダメですね。先日も、イギリスに子どもを留学させて、そこの子ども達が3人来たいと言うんで、ダメだよ俺のところはこんなに狭いんだからと言ったって、もう文句なく3人来たそうですよ。大学生ですよ。自分の子と4人で8畳間にみんなで雑魚寝しながら、彼等が日本をあちこち見に行った。だけども日本の学生と全然違うと言うんですね。日本の大学生と違って必ずメモを取っていく、写真機を持って行っていろんな所を撮って来る、夜になるとそれを全部集めて、自分の見てきたこと感じたことを徹底的に議論しあって、日本の文化というものを理解しようとする。その情熱を見ていると日本の学生は本当に何をやっとるか、ということになります。
先日も世界をあちこち歩いて帰って来た男に、最近の若者を見て何か感じることは無いかと聞いたら、浜四津先生がさっき仰しゃった、やはり目がとろんとしている。こんな連中に将来を任せられるか、そういう意見を言った人がいます。

コーディネイター 佐藤 修
このあたりから議論が面白くなって来るんですけれども、残念ながら前半部分の時間が過ぎてしまいましたので、これで前半部分を終わりたいと思います。
後半は、会場の皆さんからのご発言からスタートしたいと思います。

総括:
山ア 富治(やまざき とみじ)1925年5月30日生まれ。1948年東京商科大学(現一橋大学)卒。シティバンク入行後、1949年山種証券入社、1955年同社取締役社長、1975年山種美術館館長、1983年財団法人山種美術財団理事長、 1980年山種証券会長、1995年退社。第10代日本青年会議所会頭。1987年藍綬褒章受章。現職/山種美術館名誉館長。主な著書は『大回り三十年』『仕事の内そと』 『ほうれんそう(報告・連絡・相談)が会社を強くする』。NPO人材アカデミー最高顧問、講師。

コーディネーター:
佐藤 修(さとう おさむ)1941年東京都大田区生まれ。1964年東京大学法学部卒業、同年東レ株式会社入社。経済団体連合会出向後、経営企画室で経営計画,事業戦略,事業企画開発など担当。1983年同経営企画室CI事務局、同時に東京都CI推進計画懇談会委員。1987年広報室でCC(コーポレート・コミュニケーション)戦略策定。1989年東レ株式会社退社、潟Rンセプトワークショップ設立(代表) 、2001年8月コミュニティケア活動支援センター設立(事務局長)、2002年2月インキュベーションハウス有限会社設立(代表) 現職/コンセプト・デザイナー潟Rンセプトワークショップ代表。

パネリスト(50音順):
加藤 丈夫(かとう たけお) 1938年東京都生まれ。1961年東京大学法学部卒業。同年富士電機製造株式会社入社。
1982年企画部長、1989年5月人事勤労部長、同年6月取締役。1998年代表取締役副社長。2000年取締役会長。
2004年相談役。現職/富士電機ホールディングス相談役、企業年金連合会理事長、中央労働委員会使用者委員、社団法人日本経済団体連合会労使関係委員会委員長、社団法人日本能率協会常任理事、学校法人開成学園理事長。

鈴木 英敬(すずき ひでたか) 1974年生まれ、 兵庫県西宮市甲子園町に育つ。
1998年通商産業省入省後、対日投資、構造改革特区、ベンチャー支援、フリーター・ニート問題(ジョブカフェ、キャリア教育)、IT戦略、家電リサイクル制度等を担当。2007年8月末まで、内閣官房に出向し、安倍政権を支える官邸スタッフとして勤務。現在は、経済産業省に戻り、「地方経済再生に関する大臣特命プロジェクトチーム」で地域格差是正の問題などを担当。本業以外でも、名刺に「年中無休24時間」と書き、「共汗力(きょうかんりょく)」をキーワードに全国を奔走。
立命館大学非常勤講師や「スーパー公務員養成塾」「ソーシャルアクションスクール」の実行委員長などとして、日本や地域の未来を支える人材を育成。現職/経済産業省経済産業政策局地域経済産業政策課課長補佐。

橋 宏(たかはし ひろし)1933年新潟県新発田市生まれ。1956年一橋大学商学部卒業。同年日本郵船鰍ノ入社。1963年ニューヨーク支店勤務、1971年ロッテルダム駐在、1973年デュッセルドルフ駐在を歴任し、1975年営業第一部北米課長、1983年営業第一部長。1985年取締役、1988年常務取締役、1990年代表取締役専務、1993年同社代表取締役副社長就任。1996年郵船航空サービス椛纒\取締役社長、2001年同社会長、2003年同社取締役相談役。2005年4月に公立大学法人首都大学東京の理事長に就任。1996年藍綬褒章を受章。「首都圏スーパー新空港実現を考える会」会長、普化宗尺八明暗蒼流会会長、一橋総研理事長など社内外での役職多数。書道、柔道5段。著書に『コンテナ時代』など。2003年に出版された「轍−私の半世紀」は400ページを遥かに超える豪華本。物流業界紙「物流ニッポン」に2003年1月から3月まで16回連載された4万字に及ぶ長編物を第一章に、「虚無僧行脚」をはじめ多くの経済誌に掲載された随想集を第二章に、第三章・「対談集」、第四章・「論文」と続く。海運界が無知の読者を分かりやすいタッチで楽しませる軽妙な筆致は天才的との評価が高い。著者の豊かなアイデンティティ、生きる力の強さ、人間力の高さ、石原都知事をはじめとする人脈の厚み、友情の在り方など、読者の心を打つ。NPO人材アカデミー特別相談役、講師。

多湖 輝(たご あきら)1926年2月25日生まれ。1952年3月同大学院修了。東京工業大学助手、千葉大学講師、千葉大学助教授を経て1973年千葉大学教授就任、この間に、5年間、千葉大学附属小学校校長を併任。1989年千葉大学名誉教授に就任。2006年瑞宝中綬章を受章。2007年東京都名誉都民として表彰。心理学研究のかたわら、豊富で斬新なアイデアで数々のベストセラーを生み出してきた。マスコミでの活躍も盛んで、その鋭い心理分析は企業経営者や管理職にも定評がある。最近では幼児教育から高齢者問題までの研究を活発に行い、講演やテレビ、ラジオ等で多くの支持を得ている。著書も『頭の体操』をはじめ、教育問題、創造性開発など幅広い分野にわたっているが、特に最近は、中高年の生き方をテーマにした『六十歳からの生き方』『人生計画の立て方』などが、ベストセラーになり注目されている。現職/東京未来大学学長、千葉大学名誉教授、東京都心の東京革命推進協議会(青少年育成協会)会長、日本創造学会名誉会長、(財)才能開発教育研究財団理事、(財)日本万歩クラブ会長、NPO0歳からの教育推進協議会理事長、NPO人材アカデミー名誉会長、講師。

浜四津敏子(はまよつ としこ) 1945年1月6日生まれ。東京都立戸山高校を経て1967年慶応義塾大学法学部卒。1969年司法試験に合格し、1972年弁護士登録。1984年日本弁護士連合会「女性の権利に関する委員会」委員、1989年東京弁護士会「子どもの人権110番」を担当。1990年 現日本女性法律家協会副会長に就任。1992年参議院議員選挙、東京都選挙区より公明党公認でトップ初当選。以来三期連続当選。1994年羽田内閣の下、環境庁長官就任。1998年公明党代表代行に就任。 現職/公明党代表代行、参議院文教委員会委員、政治倫理審査会委員、党東京都本部顧問など。著書に『いつもひまわり』(鳳書院)『やっぱりひまわり』(同)。共著で『21世紀日本のシステム』(蝸牛社)等。

松本 直勝(まつもと なおかつ) 1967年4月6日生まれ、血液型B型。1998年2月社団法人東京青年会議所入会、2002年葛飾区委員会委員長、2003年理事・会員室室長、2004年理事・第6地区運営室室長、2005年日本青年会議所国際グループグローバルネットワーク委員会委員長、2006年副理事長を経て、2007年東京青年会議所理事長就任。現職/株式会社トナミ商事(東京都新宿区)専務取締役。趣味はマリーンスポーツ、ゴルフ、水泳。

第三部:フリー ディスカッション
コーディネイター 佐藤 修
それでは第三部に入ります。今日は会場にいろいろな方がいらっしゃっていますので、今までの議論への質疑応答というよりも、むしろ皆様方から出来るだけご発言を戴こうと思っております。
パネルディスカッションの時に高橋さんが予告をしていた、名古屋大学でインターンシップの先鞭を付けた田中さんから口火を切ってもらえますか。

田中 宜秀
ご紹介いただきました元名古屋大学教授の田中です。現在は電気通信大学でキャリア支援のお手伝いをしております。これまで、私は、企業、経済団体、財団法人、大学など種々の職場でキャリアを積んできまいたので、第三者的な立場でお話をさせていただきます。二点申し上げたいと思います。一点目は、若者自立挑戦戦略会議が打ち出した施策の件、二点目は、インターンシップに対する企業の協力要請です。
2003年6月に若者自立・挑戦戦略会議が出来て、4つのプランが出されましたが、このプランそのものはまさしく素晴らしい計画だと考えています。しかし、最初のプランは良かったのですがいざ実施されている状況をみますと、かなり総花的になって、各省庁がバラバラに取り組んでいる感じが致します。
この若者自立・挑戦プランの最大の狙いは、フリーター・ニート対策にあるのですが、この対策にはやはり浜四津先生のおっしゃった教育の問題をもっと掘り下げる必要があります。高橋さんもおっしゃいましたが、わが国はGDPに対する教育投資の割合が極めて少ない。 おちこぼれをださないようにするためには、教育投資を増やし、生徒の優れたところを引き出せる優秀な教員を育成・採用する必要があるのです。
ニート、フリーターになってからは、いくらインターンシップを体験させても駄目です。アメリカの場合は、1971年にマーランド教育局長が、幼稚園からキャリア教育を推進すべきと提言・実践しましたが、わが国では30年遅れで、キャリア教育の推進が1992年の接続答申のなかに盛り込まれたのです。
アメリカのことをもう少し付言しますと、理科・数学・国語など基礎学力(理数科教育)の強化を盛り込んだ国家防衛教育法が1958年に成立しましたが、それ以後もアメリカは基礎学力の向上と優れた教員の養成に力をいれています。今日は文科省の方がおられませんが、各省庁は、もっと文科省さんをもり立てて行ってもらいたいというふうに思います。
二点目のインターンシップです。橋本内閣の教育改革の目玉にインターンシップを入れまして、ちょうどいま10年経っています。お蔭様で、65%以上の大学が単位つきのインターンシップを実施していますが、体験する大学生は5万人を超えたところで、学年あたりに換算しますと8%で、アメリカのように70%という域には達していません。私は、日本インターンシップ学会に所属していますが、20%ぐらいにまで増やしたいと考えています。 企業さんの協力が不可欠ですので受け入れにご尽力をお願いしたいと考えています。首都大学さんの場合はすごい人数を東京都庁や動物園・植物園で受け入れてもらっておられるようですが、名古屋大学や一橋大学も受け入れ先の確保に結構苦慮しています。
企業は、基本的にインターンシップの受け入れを好ましいとは思っても、大変であり、避ける傾向があります。特に大企業はそうです。ですから、是非とも経済産業省さんの方からプッシュをお願いしたいと考えています。また、産学連携事業に対し、企業が少し離れていっているような気がしますので、解決としては、「学校から社会への移行基本法(仮称)」を制定し、そのなかでインターンシップをはじめとする産学連携教育を本格的に実施してもらいたいと考えます。

コーディネイター 佐藤 修
加藤さん、企業のお立場で何かインターンシップのことでコメントあるでしょうか。

加藤 丈夫
インターンシップについて企業、特に大企業は消極的だという話になりましたけど、私は逆のような気がしています。最近はインターンシップの受け入れに対しては非常に積極的になって意欲的に取り組んでいるし、これからも経団連とか経済同友会の会員企業は積極的に取り組んで行くだろうと思います。
もう一つ、私は、学生と同時に先生に是非企業体験をしていただきたい。先生の企業体験というのは大切でその人たちが進路指導に当たるわけですから学生たち本人のインターンシップと同時に先生達の企業体験を是非進めたいと思っています。

コーディネイター 佐藤 修
そうですね。小中学校はありますけれども、大学の先生のインターンシップというのはあまり聞いたことがないですね。
次に大石さんからお願いいたします。

大石 不二夫
神奈川大学の理学部大学院で教育と研究に携わっております、大石不二夫と申します。このNPO人材アカデミーの理事も兼ねております。今日大変有益なお話がありましたが、教育界からお二人のパネリスト、先輩が出ておられますが、教育の現場からの意見ということで一言お話をさせていただきます。私が、橋 理事長がおられる大学の前身の東京都立大学の工学部の工業化学科を卒業する時に、将来国際化になるだろう、そうすると超一流でないと残れなくなる。国内でしたら日本で一番だったらいいわけですが、今度は世界で一番にならなくてはいけない。そうしますと、卒業して、我々が10人に1人、大学卒とは限りませんが、若い人の10人に1人がリードしていく。それを残りの9人が支えて応援する、そういう世の中になっていくんじゃないかなと、いい悪いは別としてそういう予想を立てまして、ほぼその方向に今来ているんではないかと思うんですね。卒業してから約40何年かになりますが、今のニートの問題。ニートとフリーターとは全然違うんですね。これを一緒くたにすると非常にまずいと思いますが、ニートというのは親が養っているから働かなくても済んでいる、むしろ親の方に問題があるというふうに私は理解しておりますが、いずれにしてもこういう方が10人に1人のリーダーの足を引っ張ると、社会全体としては非常に弱くなって来ると思います。昔からの例え話で樽の中の腐った林檎が1個あると放っておくと樽全体の林檎が腐っちゃうと。ですからこれを何とか排除しなくちゃいけないと。ニートを腐った林檎とは言いませんけれど、やはり国際競争の激烈な中で足を引っ張るようなものは排除しなくちゃいけない。先ほどもありましたが、古代エジプトの壁画に「今時の若い者は」というのは私も見てきましたけれども、昔でもブラブラしている人はいたわけですけど、徳川時代にも、それが量が多くなってくると、弁証法で言うところの「量から質への転換」ということになりまして、全体の質がおかしくなってくる。だから、いま、量はかなり増えて来ているのでこれはもう行政だけでなくてみんなで極力変えて行かないといけない。その一つは、憲法を変える時に、前から私言っているのですが、遺産相続は子どもではなく孫に伝えるということを言っているんですね。そうすれば孫も増えて来るんじゃないかと思うんですね。併せて、成人には労働を義務づける。今、日本国憲法に働くことは義務であると書いてあります?これは義務だと思いますね。体が動ける人ですよ。それから、松本さんが先ほど、何のために働くのかということをよく考えるべきだと、最近の学生は職業を選ぶときに、まず会社を選ぶんですね、どこがいい、ここがいいと、それは最後だと。もっと極端に言えば、会社は大同小異で一長一短あるよ。どこに行っても、そんな極楽みたいな会社があったら教えてくれと、僕が大学辞めてそっちへ移るから、と言っているんですが。大事なことは、何のために働くかということを自分でよく自分に聞いてみろ、分からなかったらお父さん、社会の第一線で働いている、お母さんでもいいんですが、パートじゃよく分かりません、社会のことは。ですから本職で働いている親に相談するようにと言っています。それから、業界を選ぶ、職種を選ぶ、最後に会社を選ぶというふうに言っております。時間が無くなりましたので、フリーターとかニートの対策というのはまた別途機会がありましたら提案したいと思います。

コーディネイター 佐藤 修
今の大人も何のために働くかというと答えられない人が多いような気もしますが、それも問題ですね。

武田 利幸
教育システムデザイナーの武田でございます。日頃、私立中高や学習塾の支援をしておりまして、どうしたら成績が上がったりモチベーションが高まるかということを指導させていただいております。今回も4日間に渡りまして、浜四津先生がお話しになられました若者自立塾を見学したり、私共のグループで支援もしていますが、非常に感動する場面が沢山ございまして、約6割の 子ども達が就職出来ているという、そういう実績を上げております。そこで実践した手法なんですが、自立できる力を養うという訓練を、将来の希望を含めてなんですが、自己像を描く訓練を行います。コーチングに似たような感じなんですが、それをやります。教育に様々な問題点があると言われていますが、教育のどこのどの点が問題であるかの議論されていないと思うんですね。一番大切なのは自分で何かを選択できて、そしてその選択の責任を受け止め、選択結果の良し悪しも含め、それを受け入れる力、これが自立する力だというふうに思っています。
しかし、現在の学校教育では自立心を育成できにくいシステムになっています。というのは、同じ年齢で同じ時間に登校しますよね、同じ教科書で同じテスト問題で評価されるわけです。それから給食も全く同じ内容ですよね。選択出来ないですよね。食べるか食べないか、どちらしかない。そしてその選択を拒否すれば、どこか違ってしまう、つまりそれは異端となってしまいます。違っちゃうということは、みんな違ってみんないい、というのは詩人の金子みすずさんが述べていますけれども、「異端」を許せないというようなシステムになっているところに大きな問題点があるというふうに思っています。いろんな選択できる力を、給食でも何が食べたいとか食べたくないとか、選択できる、登校する時間も全部一律でなくたってというほど、余裕のある体制が必要だと思います。集団登校にしても時と場合によります。行きも帰りも皆で一緒になって行かなきゃならない。遅れたら恥だよ、遅れたら悪いよ、そういう監視する時間が発生しています。違いを許さないシステムが、同じ年齢の子たちに否応なく競争を強いる結果を引き起こします。競争で負けた子、脱落した子が「ドロップアウト」している、非常に傷ついているという側面を、私は忘れるべきではないと。
実際に現場で教えていますので、強く思われます。ですので、違いを許せる教育のための予算をもっと付けて欲しい痛切に願っています。 給食なんかもお仕着せではなくて、ビュッフェ方式にするとか、食べられない食べられる、アイスクリーム食べたい、どのアイスクリームを食べたいのか、授業の選択も補習授業を受けるか受けないも自分で選択できる、というくらい大胆な、理想的な教育の実現が望まれています。

渡邉 嘉子
リクルートで長らく人と仕事を結ぶコミュニケーションの研究誌「ヒューマン・アド」の編集長をしております。また現在、共立女子大学で「ライフプランとキャリアプラン」の講師も担当しております。これからの社会や教育について考える上では、女性の生き方の変化を前提として、考えていくことが必要だと考えます。
現在、40代の7割ぐらいの母親が働いており、母親が働くのが普通の時代になっております。その背景には、バブル崩壊時に夫のリストラ・転職、そして離婚の増加、高額を要する教育費、老後の年金不安等々があり、女性が働かざるを得ない世の中になってきています。そこで、母親が働いている社会における教育とはどうあるべきか?またグローバル化時代に入っていますから「世界に通用する人間」をどう育てて行くべきか?ということが、これからの教育を考える上での重要なポイントだと考えます。私の場合、25歳と29歳の二人の娘がおりますが、25歳の娘は、第二新卒で一部上場企業に中途採用され、今元気に働いております。若い時代には、自分にふさわしい職場を求めて、複数の企業で仕事を体験をすることも個人の成長につながり、良い場合もあります。もちろん、子どもの頃からなりたい仕事を考え、しっかり自分の職業設計をして、一つの企業や仕事に打ち込むというのも素晴らしい生き方だと思いますが、人によっては、模索が必要な人もいます。たとえばアメリカでは、30歳ぐらいまでは2回ぐらい転職し、30歳ぐらいでMBAを取得するために大学院に入ったりしてキャリアを切り開いていく人も少なくないということですから、転職がかならずしも悪いということではないと思うんですね。そういう面では、早い内から、小中高大全てにおいて個人が自立できるよう、社会的な視野を広くしていく教育が必要だと思います。例えば、税金の計算とかですね、娘が大人になるまで、とても大切な事なのに、学校では具体的に教えて貰えなかったといいます。国民の大切な役割や義務をしっかり教えておかないと、ちゃんとした大人にはなれません。年金など今になって、多くの大人が「ちゃんと計算しておけば良かった」とか、思っているわけですね。国民として年金や税金など自分が支払うものの計算ぐらいはできるようにしておくとか、離婚したら子どもはどちらの親権になっても親に会える権利があるのだとか、子ども達も興味のあることですから子どもの内から教えてバランスのとれた大人にして行くことが必要だと思います。これから教育問題をリードしていかれる方々がたくさんおられますので、是非よろしくお願いしたいなと思っております。
このような意見にについて、多湖先生はどうお考えでいらっしゃいますでしょうか。また、2020年に社会のリーダーの3分の1を女性にしようということが小泉政権の時に閣議決定しておりますけれども、女性の人材育成ということについて、経済界の方も含めてどんなふうにお考えになっているのかを伺いたいと思います。

多湖 輝
あまり指名されたくないテーマなんですけれども。女性が社会進出する、これは当然の事なんですが、ただ、子どもの問題が非常に深刻です。たとえば赤ちゃんを産むつもりが無かったのが産まれちゃった、そんな人が最先端の仕事をしているんですよ、外国とどんどん連絡とって、それで子どもを保育園に預けて、職場に飛んでいって、また夜引き取って、こういうことをやっているうちに、何かこれではいけないんじゃないかと考えて、その方は職場を一時辞めたんですね。ところが家で赤ちゃんと二人きりになると、いたたまれなくなってくる。自分の同僚はこんなことをやっているうちにどんどん新しい知識技術を覚えて前進している、私は子育てを2,3年やってたら絶対におかしくなる。社会復帰はもう出来ないんじゃないか。それで、子どもを殺したくなってくる。それで精神科へ行くというケースがあるんですね。知り合いの精神科の先生は本来大人を対象にしているはずなのに、保育園みたいなものを脇に作っているんですよ。「先生、子どものことも始められたんですか。」と聞いたら、そうじゃないんですよ、母子を分離してやらないとこれは危ないな、そういう母親が駆け込んで来るので止むなく子どもを分離して預かっている。こういうようなケースが起こってくるんですね。それから、親が、40ぐらいになって現場を相当体験しながら、これから子どもを産みたいんだという人に何人かとお話を聞いてみますと、すごい問題意識を持っている。子どもと接触時間が非常に少なくなるだろうけれども、だけど私は絶対に間違いなくいい子にするんだという、そういう話を聞いていて、あなたなら大丈夫だ、安心してやれますよ、どんなに時間が少なくたって、絶対あなただったらうまくやると言って激励したんですが、いろんな親がいます。でも仕事が本当に面白くなって夢中になっちゃうと、子どもの方が少しずつ抜けて行ったりして、まずいことも起こりうるということですね。それからそこに福祉が登場して、福祉を盛んにしていく。そうすると、子どもが成人に達するまでの間に夫婦が別れてしまうという率が増えてくる。つまり福祉先進国と呼ばれている国の離婚率が非常に高くなるんですね。その辺の子育てと福祉との兼ね合いの問題。子どもからどれだけ親が手を離せるかという問題と子どもが健全に育っていくという、そういうこととの間のズレといいますか、そんな問題を考えて行かなければいけないんだなと思っております。

内川 あ也
NPO日本未来機構の内川と申します。NPOの中で、医療、福祉、教育のボランティア活動をしており、私どもは企業の方と、子供の親の両方の方々からお話を聞く機会があります。中小企業はせっかく若い人が入社してくれたととても喜んでいるのですが、若い人達は今日のお話では七五三と言って三年未満に辞めていく人が多いということでしたが、中小零細企業の現場では実は半日持たない事があります。その原因は何かというと、例えば「作業着のボタンを締めないと危険があるのでボタンを締めて下さい」と説明しただけで、「うるさい、そんなこと言うんだったらもう辞めた」と言い、辞めていくという、これが現状なんですね。これをもう少し教育の現場まで下げて考えてみますと、大人が子どもを注意したり叱ったりする機会が失われている、これは社会問題だと思うんです。一方で、子供の側も注意を受けたり叱られたりして学ぶという機会が今奪い取られているような社会現象があります。例えば小学校で、授業中に携帯電話を使っている生徒を見つけて、先生がその携帯電話を取り上げて授業中預かっておいたのですが、その親が翌朝、「何でウチの子の携帯を取り上げたんだ。」と学校へ怒鳴り込んで来るという、常識外というか、教育がそこから崩壊しているので、人を叱ったり注意したりする、そういう機会を失うということは国家の損失になっていくと思います。ですから是非皆さん方の力で、ただねじ込んで来たり、怒鳴りにくるモンスターペアレントと言われる親に対しても毅然とした態度で、注意してもいいという、それがもし法律でないと聞かない親であれば、ぜひ行政、官界からそのような法律や条例を決めて、よい方向に導いて頂きたいし、このようなことは将来を託していく若者や、子ども達の学ぶ機会が失われて日本の損失に繋がっていくのではと懸念しているということが一点です。もう一点は、以前も厚生労働省の方々にお願いしたのですけれども、フリーターとかニートとかカタカナの言葉を止めて頂きたいと思います。何故かというと、先ほどかっこいい仕事を定職とするんじゃないかという意見があり、全くその通りだと思いますが、若い人の中にはフリーターというのを横文字の仕事でかっこいい仕事の一つ、或いはトレンドだと思っている人たちもかなりいます。ですから、ニートの中でも本当に働きたいんだけれども病気になって働けない人と、働けるんだけど働かない人を線引きをして、後者にはとても恰好悪い呼び方にしないと、ニート対策、フリーター対策は沢山の予算を使ってもなかなか実績が上がっていかないのではと思いますが、いかがでしょうか。

コーディネイター 佐藤 修
ラジカルな問題ですね。大槻さんか鈴木さんどうですか。

大槻 勝啓
フリーター対策、ニート対策、その言葉遣いがどうかというご指摘でございます。今言われた趣旨はよく頭に入れて今後の施策に進めて行きたいと思いますが、現実に、冒頭に申し上げましたように、フリーター、ニートと言われる方々の数も減ってきているというところもございます。ニートにつきましては大きく減ったというわけではございませんが、私ども今日説明いたしませんでしたけれども、ニートの方の自立を支援するための対策、若者自立塾、或いは地域若者サポートステーション等々設置を致しまして、まさに地元のいろいろな関係者が地域で支援をするという仕組みを作っているところでございまして、また来年度もこれを充実していこうということで努力しておるところでございます。この問題は単にハローワーク等の労働行政機関だけの問題ではなくて福祉とか場合によっては医療とか教育、様々な地域の関係者が努力して進めて行かなければならない問題だと思っております。引き続き今日ご参加の皆様を含めてご協力をいただきまして頑張っていきたいと思います。

コーディネイター 佐藤 修
大槻さん、問題設定に現場との意識のずれがないかという話ではないかと思うのですが。

大槻 勝啓
フリーター問題でフリーターがかっこいいと思っている若い人がいるんではないかというお話ございました。そういうことも確かに言われてきました。私共はフリーターと言われる若者の実態、フリーターとして働く場合と正規社員として働く場合でどういうことが違うのか、こういったことも含めて民間団体にお願いをしたりしながら、そういう勉強をしてもらう機会も設けるようなこともやっておるところでございます。

山口 恭弘
全日本私塾教育ネットワーク会長の山口と申します。広島で中学受験を専門に塾をやっておりまして、最近は公立の中学生も教えています。塾の世界に限定して申し上げますので間違っていたらご指摘ください。ニートの問題などについてですが、NPO人材アカデミーで以前シンポジウムで取り上げられて参加して思ったことは、小学校から手を打たないとダメで、中高になってからでは遅いと思います。教育は年少児から根本的にやっていかないと、どんなに上の層が厚くても、もうダメじゃないかなというのが私の見た感じですね。今の小中の中で本当に勉強しているのは2割ぐらいだろうと、中間層の6割は、これは塾仲間の話でも出るんですけど、それが下の2割に大体合体していると。これが「ゆとり教育」の結果だと考えてもいいんじゃないか。そういう意味では教育を根本的に立て直さないと、改革は出来ないんじゃないかと思います。それから、最近、これは個人的な意見なんですけれども、この2年くらい前から、日本の子ども達を見て感じていますが、本来の日本人らしい日本人が消えて無くなっていくのではないかというような感じがします。日本という国はあるでしょう、だけど日本人という感覚が無くなっている。子ども達には全然無いなというのがあるので、これがどうなるか、日本古来の文化と共に消えてしまう、そういう感じがします。
ニートの中学校時代はどうだったのか、その当時しっかり勉強していて、家庭環境に恵まれていたなら、そういう問題にはならないだろうなと思います。今の中学生や小学生の勉強ぶりを見ていると、好きなものはやる、楽なものはやる、しかし辛いものとか、ちょっとでも分からなかったらすぐ止めてしまうというのがあって、どんなに叱ってもそれがうまくいかない。家庭環境や地域の問題が大きいと思います。この辺を全部見直してやらないと、これからの日本の教育や、深刻な社会問題がうまくいかなくなるんじゃないかという心配があります。

原島 文雄
東京電気大学で学長をやっております原島と申します。大変広い立場からお話を伺いました。大変勉強になりました。
理工系の大学という非常に限られた分野から二点申し上げます。一点は、理工系の大学卒ではこんな問題は殆ど無いということです。非常に簡単な話でございまして、我々きちっと職業教育、専門教育をやりますので就職する際に既に自分がどういう所で働くかというイメージが確立しております。もちろん、例外はいくらでもあります。それが一点です。
それからもう一つ。理工系の大学生はかなりの部分、大学院まで行きます。大学院まで行きますと人格形成までしますので、そういう問題は更に少なくなります。先ほど七五三といわれましたが、大学院まで行くときに七五三で止めずに、もう一つ大学院まで入れてもらうと、七五三一になるだろうと思います。それは一回頭の中に入れておいて下さい。それから、我々にとって最大の問題は早期に転職したがる社会人の急増ではなくて、早期に退学したがる新大学生の急増なのです。出る前に挫折いたします。大体年間、大学によって違いますが、理工系と文系によって違いますが、大体2パーセントから3パーセントぐらい、毎年退学して行きます。どちらかというと理工系の方がやや多いです。これはたぶん、授業が大変ですし、実験が大変ですし、サークル活動も出来ない、アルバイトも出来ない状況ですから、もちろんそれで訓練されるのですが、かなりの部分がドロップアウトして参ります。
最大の原因は、一つは経済的な原因。家庭的な問題でもって辞めざるを得なくなる。こういう人たちは理工系ですから就職できます。少々不幸ですけど、意図しない就職は致します。それから二番目の原因は学力不足です。ついて行けない。これは最初から大学に入って来るべきでない人が入ってしまった、これは選択の失敗です。三番目は、これはちょっと問題ですが、ミスマッチングです。自分のやりたいことでない、間違って就職したのと殆ど同じケースです。これはもうやり直してもらう。よその大学へ行く。専門学校へ行く。我々から見ていろいろな問題があると思いますが、鈴木さんが言われたように、転職をネガティブに見る傾向は非常にありますので、これは社会で検討しなければならないのですが、ポジティブに捉えて人生の訓練の一つの過程として暖かく見る目もどこかに持っていていただきたいのです。人生50年の時に高校18、或いは大学20で出たときに、人生50の時と、80から90まで生きる時に18から20で出る時と人生観が全然違いますので、25から30ぐらいまで少々転職してもその間に経験を積んで立派な社会人になっていただく方がむしろいいのじゃないか。
アメリカの大学の先生というのは、一生に7回換わる。平均して。大学を換えますよね。日本の大学の先生は大体2,3回です。そういった面でも見ていただけると大変ありがたいなと。

コーディネイター 佐藤 修
ありがとうございました。早期退学したがる学生、という新しい問題指摘まで出て来て、この問題はまさに今の社会の本質的な問題を示していることを実感しました。
まだ発言されたい方も多いのですが、かなり時間が過ぎていますので、ここで終わりにさせてもらいます。
最後に、パネリストの方々に一言ずつ言い残したことやメッセージがありましたらお話をいただこうと思います。

大槻 勝啓
教育の問題、本当に広汎な議論がありました。今日、文科省の方はいない訳ですが、キャリア教育等推進プランというものを作り、いろいろ検討しているところでございますので、そのことだけは申し上げたいと思います。それからインターンシップの話がございましたけれども、日本経団連、地域の経営者協会などのご協力を得てインターンシップを受け入れる企業の開拓等に努力しているところでございます。全て政府の関与でやるということではないと思いますので大学、企業の方には自主的、積極的な取り組みを期待したいと思っているところでございます。早期離職の問題につきましては、いろいろ議論がございましたが、積極的な転職といういい面もあると申し上げました。問題は人生設計も不明確なまま就職して簡単に離職をしてしまう人ですね。こうした方は往々にしてその後安定した仕事に就けない。フリーター化するということがございますので、そこは私ども労働行政としてしっかり対応していきたいと思っております。また、ワークライフバランスの問題、少子化対策、この問題はいろいろな問題が相互に関係するところでございまして、労働行政としてしっかり対応していきたいと思っております。

鈴木 英敬
若い皆さんに一言だけ申し上げたいと思います。今日の議論は教育システムを変えよう、大人が変わろう。そういう議論がありましたけれども、若者も是非変わりましょう。僕はジョブカフェをやっていて、ジョブカフェに来てくれた理由で一番多かったのは、広告でも宣伝でも何でもなくて口コミです。つまり、友だちが行ってみようよと、ジョブカフェへ行ってみよう、プラプラしないで一緒に頑張ろうよと言ってくれたことで来てくれた方がたくさんいます。ですから、皆さんは自分のことも一生懸命頑張りつつ、あと、周りで離職して悩んでいる子がいたり、辞めたいなあと悩んでいる子がいたり、フリーターやニートをやって悩んでいる子がいたら、是非その友だちのことに関心を持って一緒に頑張ろうじゃないかと連れて行ってあげて欲しいなというふうに思います。こういうふうに若者が変わっていくことが大事だと思います。鳥の雛が殼を破って出てくる時は親鳥がコツコツコツと叩くのと、中の雛がコツコツコツと叩くのがタイミングが合った時に殼が割れて雛が出てくるというような話があります。大人が一生懸命コツコツコツと社会のシステムを変えようとやっても若者自身が頑張るぞと思わないとなかなか社会全体が良くなって行きません。僕も頑張りますから是非若者のみんなも頑張りましょう。

浜四津 敏子
抽象的になりますが、自らへの決意としてお話させて戴きます。政治家になってからドイツにフォイエルバッハという有名な哲学者の言葉ですが「最も偉大な政治家とはどういう政治家か。それは最もヒューマンな政治家である」を座右の銘にしてきました。これは政治家だけではなくて一人ひとりに通用することかと思いますけれども、他人を思いやるとか或いは他人の力になる、そういう共生の社会を一緒に作って行きたいと思います。人間性とか人間力或いは利他主義とか人間主義とかがこれからのキーワードになっていくと思います。モノが豊かなだけの社会ではなくて心の豊かな人間性の豊かな質の高い社会を一緒に作って行きたい。一人ひとりが少しずつそちらの方向に意識を向ければ、社会を構成するのは一人ひとりの人間ですから、人間がどちらを向くかによって社会のあり方が変わってくる。そう思いますので私もその一人になって頑張りたいと思います。
今日はありがとうございました。

多湖 輝
もう私から言うことはございません。さっきお話出ましたけれども、理系は確かに凄いレベルですよ。最近、内閣府がやった理系の人の集まりに私出ました。MITの方から、日本人はもっと自信を持ちなさい。あなた方の技術は大したものなんだよ、とアメリカ人、他に何人か同じように激励されました。私その会議に1時から5時半ぐらいまでずっとシンポジウムにつきあっていたのですが、そのレベルの高さには本当に驚きました。ですから、そういう意味では日本も全然捨てたもんじゃないという一面が必ずあります。ただ、さっきから出ているフリーターやニート、そのもっと奥に引き籠もりというのがあるんですが、引き籠もりが実際には引きこもってなくてフラフラ出ているんですけれども、これは価値観というか全然我々の言葉が通じません。一番実績を上げているこれの直し方というのは四国のお遍路さん、あそこに誘い出せればもう治る。そういう基礎的な我慢をするとか不条理に耐えるとか、そういうトレーニングをもう少し真剣に考えなければいけないのかな、そんなことを思っています。

橋 宏
先ほど、内川あ也さんの話を聞いて思ったんですが、石原慎太郎ともよく話すんですが、もうちょっと我々は隣の子どもをしっかり叱らなければダメだなというような話をしております。昔は近所、隣組といって隣の小父さんが口うるさくて何か注意されたり神社の神官がごちゃごちゃ言ったり、だけどそういうことを通じて他人から叱られると子どもはしゃっきりして来るんですよ。そういうことをやっていくべきだと思います。

加藤 丈夫
子どもをしっかり叱ると同時に親もしっかり叱らなければならない。親の教育。親もしっかり叱る勇気を持つことが大事だと思っています。

松本 直勝
私は、縦軸と横軸の復活でしょうかね。先祖を敬う。年長者を敬う。それと同時に仲間を大事にするということだと思います。かつて日本人が持っていた美徳というものは、思いやりとか勤勉とか多様性だったというふうに思いますので、どの世代にも大人は逃げずに子どもを叱れる、愛のある叱り、怒るのではなく叱っていける大人であり続けたい。そんなことを思いました。本日は諸先輩方に一緒にパネリストとして迎えていただいたことを篤く御礼申し上げます。
ありがとうございました。

コーディネイター 佐藤 修
まとめの時間がなくなりましたが、一言だけ感想を述べさせてもらいます。早期退職する新社会人が増えてきているということが問題提起していることは、まさに社会のあり方、私たちの生き方につながっています。今日は実にたくさんの問題や対策が出て来ましたが、私たち一人ひとりが自分達で出来ることも沢山あると思います。人に何かを期待するのではなくて、それぞれの立場で何をやればいいかということを是非皆さん方、お考えいただければ、今日の話し合いが活きていくのではないかと思います。
ありがとうございました。

司会 東野 秀平
それでは、最後になります。山種美術館名誉館長の、山崎富治様から総括として一言お願い致します。

山ア 富治
高いところから恐縮でございます。単なる教育論でなくて、人間力、或いは国家のあり方、大変大きな問題をこういう立派な先生方から、また聴衆の方も、お一人お一人講師になられる方ばかりでございますので、この会があと二時間ぐらいあってもいいような気がします。また来年、大森さんがいろいろ考えていると思いますけれどもお手伝いしたいと思っておりますので、皆様方のご協力をお願いいたします。
ありがとうございました。

司会 東野 秀平
山ア先生、どうもありがとうございます。
では最後になりました。閉会の言葉を日本内部監査協会会長の中村清様からお願いしたいと思います。

中村 清
ご紹介いただきました中村です。今日は実に時宜を得たしかも緊急の問題を、パネリストの先生方があらゆる立場から、また年齢的にもかなりいろんな、中高年から若い人まで含めて、全体として非常に迫力のある、そうした感じを持たせていただきました。先ほど多湖先生がちょっと触れましたけれども、お茶の水大学教授の藤原先生が「国家の品格」という本を出しました。これはベストセラーになり、もう260万部を超えておりますけれども、ここでは日本の良さというものを改めて見直すということを強く訴えております。そこにも通じるところがあるのかなという感じが致しました。
それから、最後になりますけれども、先ほど大森理事長がご挨拶の中で申しておりましたけれども、この問題をもう45年も前から、考えているというふうに聞きまして、私もびっくりすると同時に大したものだなあという感じが致しました。それと同時に大森さんは、今日もいろいろ問題となったニートの問題とかフリーターの問題、これも世間に先駆けていろいろと問題を提起して参りました。大森さんは大病をされましたけれども、とうとうこの意欲によってそれを克服して参りました。この活力をもって今後とも是非頑張っていただきたいと思います。いずれにしましても、最後になりますけれども、今日のこの問題は単に新社会人の問題じゃなくて、我々大人の問題、中高年の問題でもあるということをつくづく感じました。ということで今日のシンポジウムは貴重な意見でして、今後とも十分考えていきたいと思っております。
これをもって迫力のあるパネリストの皆さんとお聴きになった皆さん方の今後の益々のご活躍を祈念致しまして、私の閉会の挨拶とさせていただきます。
どうもありがとうございました。

司会 東野 秀平
どうもありがとうございました。

中村 清(なかむら きよし)1930年1月24日群馬県高崎市生まれ。1953年東京大学法学部卒業、会計検査院に入る。1962年兼ねて総理府事務官、臨時行政調査会調査員となる。1980年会計検査院第5局長。1985年事務総長、同年検査官(認証官)、1989年会計検査院長、1992年退官する。1993年前田建設工業株式会社に入り、最高顧問、名誉会長を経る。
ほかに、日本内部監査協会会長、財団法人前田記念工学振興財団理事長を兼ねる。勲一等瑞宝章受章。 NPO人材アカデミー特別相談役、講師。
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