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第10回ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合 結果概要

平成24年11月16日

第10回ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合の結果について

 厚生労働省では、10月23日から10月25日、第10回ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合を開催しました。今回の会合は、「自然災害における社会的弱者への対応」をテーマとして、ASEAN10ヶ国の保健、福祉、労働政策の各分野の担当行政官の参加を得て活発な議論を行い、各国における今後の取組についての提言を採択しました。
 本会合の概要は、以下のとおりです。
 会合は、英語を使用言語として行われています。英語版(原文)はこちらをご参照ください。

開催概要

日時: 2012年10月23日(火)〜10月25日(木)
場所: 品川プリンスホテル メインタワー24階「クリスタル」
参加者: ASEAN10ヶ国の保健、福祉及び雇用政策の担当行政官 計54名
※ ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナム
(オブザーバー)中国、韓国 各1名
協力機関: ASEAN事務局、世界保健機関西太平洋地域事務局(WHO/WPRO)、国際労働機関(ILO)駐日事務所、独立行政法人国際協力機構(JICA)

議論の概要

 日本の有識者の講演として、大友康裕教授(東京医科歯科大学大学院)から、日本の災害医療体制について過去の震災教訓に基づいた取組を紹介しました。また、橋紘士教授(国際医療福祉大学大学院)からは、地域福祉の視点に基づく避難所や仮設住宅の設置や福祉サービス提供体制について紹介しました。さらに、後藤純一教授(慶應義塾大学)は、災害の雇用への影響と早期復興のための雇用労働政策について紹介しました。

 協力機関の講演として、ASEAN事務局からは、ASEANで取り組む防災対策枠組みと弱者に焦点を当てた対応を紹介し、WHO/WPROからは、特に高齢者と障害者への災害の影響と連携強化のための災害対策について報告しました。JICAからは、フェーズ毎の災害支援戦略とタイにおける地域防災の支援事例を報告し、ILO駐日事務所からは、ILOの災害における雇用政策と包摂的な復興の取組を報告しました。

 ASEAN各国によるカントリープレゼンテーションでは、自然及び人為的な災害における保健、福祉及び雇用分野の政策や社会的弱者への対応に関する取組を報告し、参加国の間で情報、経験を共有しました。

 2日目の施設訪問では、東京都武蔵野市における、自助・共助・公助に基づく地域防災の取組及び災害時要援護者支援事業が紹介されました。また、武蔵野市と防災協定を結んでいる介護老人保健施設であるハウスグリ―ンパークや、災害拠点病院となっている武蔵野赤十字病院を訪問しました。この他、東日本大震災の被災地支援・調査に携わっている方々を講師としてお招きして、その経験を紹介いただきました。

 これら本会合で共有された情報・知見に基づいて、保健、福祉及び雇用の分野毎に各国共通の課題や施策、今後の取組について活発に議論を行い、参加者全員の合意の下、本会合における提言(リコメンデーション)を以下のとおり採択しました。

 (プログラムは別添を参照)

採択された提言(仮訳)

前文

 「自然災害における社会的弱者への対応」をテーマに2012年10月23日から25日まで東京において開催された第10回ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合の保健、社会福祉及び労働分野からの参加者は、

 ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合を2003年より開催している日本政府のイニシアティブに感謝するとともに、第10回会合は保健、社会福祉及び労働分野の自然災害における社会的弱者の保護に関する情報共有と意見交換のための有効な場であることを認識する。

 自然及び人為的な災害の影響に対する地域社会の強靭力を強化するとともに、災害のリスクにさらされている脆弱層や被災者の特殊なニーズに対応することを目指した、ASEANブループリント2009-2015における目標を想起する。

 ASEAN加盟国と日本は、異なる種類や規模の自然及び人為的な災害に直面していること、そして、気候変動の影響への適応を考慮する必要性もあることを認識する。

 脆弱層(女性、子ども、障害者、高齢者、貧困者等を含む)は、災害時に適切に対応されるべき特別なニーズを抱えていると同時に、災害に強い地域社会の構築に積極的な役割を果たす可能性があることを認識する。

 災害によってある区域・国にもたらされた被害が、他の区域・国の労働市場及び産業にも影響を与えうることを考慮し、災害管理により幅広い視点を取り入れることの重要性に留意する。

参加者の合意事項

  1. 各国において、第10回会合の議事内容及び結果を担当大臣や幹部に報告する。
  2. 日本は、ASEAN事務局と協力し、本会合の議事内容及び結果をASEAN+3保健大臣/高級事務レベル会合(AHMM+3/SOMHD+3)、ASEAN+3社会福祉開発大臣/高級事務レベル会合(AMMSWD+3/SOMSWD+3)、ASEAN+3労働大臣/高級事務レベル会合(ALMM+3/SLOM+3)に報告する。

参加者の提言

  1. 災害の準備、対応、復旧及び復興というサイクル全体に、障害者、高齢者、女性、子ども及びその他の被災者のような社会的弱者のニーズに配慮することを組み込む。
  2. 平時から包括的で適時かつ効果的な対応及び手段を確保するため、自然及び人為的な災害の影響に対応するための適切な保健医療、福祉サービス及び労働政策を準備し、提唱する。
  3. これまでの災害対応経験を教訓として、効果的な対策の評価及び開発のために活用する。
  4. 被災者及び脆弱層の特別なニーズに関するデータ及び情報の入手可能性、正確さ、適時性を向上させる。適切な伝達方法にも考慮する。
  5. 自然及び人為的な災害時において人命救助を最大限行うべく初期対応を提供するため、緊急時医療システム及び計画を整備する必要があることを認識する。これには、技術的指針の策定、実践的な訓練、及び地域の省庁間連携を通じた能力強化が含まれる。
  6. 緊急時・災害時対応システム、資源動員及び社会のあらゆるレベルにおける能力を強化することにより、様々な種類及び規模の自然及び人為的な災害後の被災者の医療、社会福祉、雇用のニーズに対して現地での即時及び長期的な対応を可能とする。
  7. クラスターアプローチを採用することによって一層の省庁間の調整・連携を図り、また、災害管理に関して、市民社会や学術研究機関、民間セクター等の関係者とのより緊密なパートナーシップを促進する対策を進展させる。
  8. 災害によってリスクにさらされている、または災害の結果として弱者となる被災者を対象とし、緊急的な特殊なニーズへ効果的に対応すべく、確定拠出型及び任意加入型の社会保険を含めて、既存の社会保障制度を強化する。
  9. 自然又は人為的な災害への準備、対応、復旧・復興の各段階に焦点を合わせて、労働部門を国家災害管理システムに組み入れる。
  10. 失業に対する緊急援助に加えて、中期的な支援を通じて、自立した生活の再建を図るための積極的な雇用政策を、災害対応に含めることを提唱する。

別添

第10回ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合 プログラム

10月23日(火)

10月24日(水)

施設訪問(東京都武蔵野市)

10月25日(木)

  • 講演4 "Addressing vulnerabilities of ASEAN peoples who are victims and at risk of natural disasters" [922KB]
         (Dr. Ferdinal M. Fernando, ASEAN事務局 健康・感染症 ヘッド)
         (Ms. Mega Irena, ASEAN事務局 社会福祉・女性・労働 アシスタントディレクター/ヘッド)
  • 講演5 "Caring societies for the socially vulnerable people suffering after natural disasters" [1,577KB]
         (Drs. Sjoerd Postma, WHO西太平洋事務局 健康開発課 チームリーダー)
  • 講演6 "JICA’s Efforts in Disaster Management" [671KB]
         (中村信太郎  JICA国際協力専門員)
  • 講演7 "Employment-led reconstruction after natural disaster" [2,027KB]
         (上岡恵子 ILO駐日事務所代表)
         (小山淑子 国際労働機関アジア太平洋地域総局)
  • 分科会
    ・保健分野:ファシリテーター:
      (Dr. Ferdinal M. Fernando, ASEAN事務局 健康・感染症 ヘッド)
      (Drs. Sjoerd Postma, WHO西太平洋事務局 健康開発課 チームリーダー)
    ・福祉分野:ファシリテーター:
      (Ms. Mega Irena, ASEAN事務局 社会福祉・女性・労働 アシスタントディレクター/ヘッド)
      (中村信太郎 JICA国際協力専門員)
    ・労働分野:ファシリテーター:
      (後藤純一 慶應義塾大学教授)
      (小山淑子 国際労働機関アジア太平洋地域総局)
  • 分科会結果報告 [412KB]
  • リコメンデーション採択
  • 第11回会合に関する意見交換
  • 閉会挨拶(小出顕生 厚生労働省大臣官房国際課統括調整官) 挨拶文(日本語) (英語)

【参考】ASEAN・日本社会保障ハイレベル会合開催の趣旨・経緯

 厚生労働省は、2003年より、社会福祉及び保健医療の分野におけるASEAN諸国との緊密な関係をさらに発展させ、また、これらの分野での人材育成を強化するため、ASEAN10ヶ国から社会福祉、保健衛生政策を担当するハイレベル行政官を招聘してASEAN・日本社会保障ハイレベル会合を開催してきました。2011年の第9回会合からは、保健及び福祉分野に加えて労働分野との連携も視野に入れて、労働政策を担当する行政官も招聘しています。

 会合では、参加国が保健、福祉及び労働分野での取組について情報を共有し、自国の政策立案にあたって参考となる多くの有益な知見を得たとの評価をいただいています。

 本会合は、ASEAN+3保健大臣会合及び社会福祉開発大臣会合を支える事業として関係国間で位置づけられており、第9回会合までの結果は、ASEAN+3保健大臣会合、ASEAN+3社会福祉開発大臣会合等において報告し、高い評価を得ると同時に、今後の会合への期待も表明されています。

第1回〜第9回会合のテーマ

第1回2003年11月社会福祉・保健サービスにおける人づくり
第2回2004年8月高齢化社会と福祉・医療の人づくり
第3回2005年8月社会福祉・保健におけるパートナーシップと人作り
〜母子保健福祉と障害者福祉を中心として〜
第4回2006年8月社会福祉・保健医療サービスの連携と人材育成
〜社会的弱者(児童・女性)支援と福祉・医療サービス〜
第5回2007年8月社会福祉・保健サービスの連携と人材育成・地域開発
-地域における高齢者サービス-
第6回2008年9月次世代健全育成(健やかな次世代の育成を目指して)
-保健と福祉の緊密な連携の下で-
第7回2009年8月「共生社会」の構築(障害者の自立、自己実現と社会参加)
〜福祉と保健、医療システムの連携を通じて〜
第8回2010年8月社会的弱者の貧困軽減
〜保健と福祉の連携強化を通じて〜
第9回2011年10月福祉及び保健分野における人材育成
-サービス提供者の能力向上と社会的弱者の就業能力育成に焦点をあてて-

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