ホーム > 政策について > 分野別の政策一覧 > 子ども・子育て > 子ども・子育て支援 > 母子保健関係 > 軽度発達障害児に対する気づきと支援のマニュアル > 第二章 実証的研究成果

第二章 実証的研究成果

第二章 実証的研究成果

この章では、平成18年度研究報告書に記載した実証的な研究成果を載せています。また、それらをわかりやすくした資料2−1〜2−4を添付していますので、参照してください。

研究要旨

従来の3歳児健診で軽度発達障害を発見する方略を検討するために、3歳児の行動を(1)多動性、(2)旺盛な好奇心、(3)破壊的な関わり、(4)不適切な関わり、(5)強い癇癪、(6)運動のアンバランス、の6カテゴリーに分けて評価したところ、ADHD児やPDD児では、一般の3歳児に比べて、いずれの項目も平均値は有意に高かったが、多動性や旺盛な好奇心といった項目では、一般の3歳児でも高率に出現しており、判断は慎重にすべきと思われた。

いわゆる軽度発達障害を学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、高機能広汎性発達障害(HFPDD)、軽度精神遅滞(MR)と定義し、5歳児健診を基盤として発生頻度を調査した。その結果、鳥取県の5歳児健診(1015名)では、軽度発達障害児の出現頻度は9.3%であった。栃木県の5歳児健診(1056名)でも8.2%という出現頻度であった。また、こうした児の半数以上が、3歳児健診では何ら発達上の問題を指摘されていなかった。

5歳児健診における医師の診察法を構造化し、(1)会話、(2)概念1、(3)動作模倣、(4)Coordination、(5)Motor Impersistence、(6)概念2、の6つに分類した。この診察法によって、MRやADHDは特徴的なパターンを示したが、高機能広汎性発達障害児では全般的な通過率は良好であり、診察に集団における行動評価、保育所や幼稚園での様子の聞き取りなども加味する必要があると考えられた。

しかし、軽度発達障害児の行動評価を質問紙で行ったが、質問紙のみでは鑑別診断は困難であり、ADHDやPDD等の診断には医師による診察や詳細な問診が不可欠であると考えられた。

A.研究目的

学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、高機能自閉症やアスペルガー症候群を包含する高機能広汎性発達障害(HFPDD)、軽度精神遅滞といったいわゆる軽度発達障害は、集団生活を経験する幼児期以降になってはじめて、その臨床的特徴が顕在化してくる。そのため、3歳児健診を最終とする現行の乳幼児健診システムの中では充分に対応できていない可能性がある。これは現行の乳幼児健診の質が不充分というよりも、年齢的に見えていないのだと思われる。

本研究は、こうした軽度発達障害に焦点を当てた「気づきの場」をどのように構築するのか、また幼児期に見いだされた軽度発達障害児を母子保健の枠組みの中で、どのように指導・支援したらよいのかという命題に答えるとともに、本邦全体で取り組むことのできる豊富なモデルを示すマニュアル作成を目的とする。

B.研究方法

平成18年度では、

(1) 3歳児健診にて発見するための手だてに関する検討(分担研究者林 隆)、
(2) 5歳児健診を基盤とした発生頻度調査(分担研究者小枝達也、下泉秀夫)、
(3) 構造化された医師の診察法の有効性に関する検討(分担研究者前垣義弘)、
(4) 行動評価を質問紙法で行った場合の有用性の検討(分担研究者山下裕史朗)
の4点について研究を実施した。

また、5歳児健診によって軽度発達障害児を見いだし、適正な療育・教育を行った場合の費用対効果を算出することを検討しており、そのために必要とされる条件等についても検討を行った。

C.研究成果

(1) 従来の3歳児健診で軽度発達障害を発見する方略を検討するために、3歳児の行動を(1)多動性、(2)旺盛な好奇心、(3)破壊的な関わり、(4)不適切な関わり、(5)強い癇癪、(6)運動のアンバランス、の6カテゴリーに分けて評価したところ、ADHD児やPDD児では、一般の3歳児に比べて、いずれの項目も平均値は有意に高かったが、多動性や旺盛な好奇心といった項目では、一般の3歳児でも高率に出現しており、判断は慎重にすべきと思われた。
(2) 軽度発達障害を学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)、高機能広汎性発達障害(HFPDD)、軽度精神遅滞(MR)と定義し、5歳児健診を基盤として発生頻度を疫学調査した。その結果、鳥取県の5歳児健診(1015名)では、軽度発達障害児の出現頻度は9.3%であった。栃木県の5歳児健診(1056名)でも8.2%という出現頻度であった。また、こうした児の半数以上が、3歳児健診では何ら発達上の問題を指摘されていなかった。
(3) 5歳児健診における医師の診察法を構造化し、(1)会話、(2)概念1、(3)動作模倣、(4)Coordination、(5)Motor Impersistence、(6)概念2、の6つに分類した。この診察法によって、MRやADHDは特徴的なパターンを示したが、高機能広汎性発達障害児では全般的な通過率は良好であり、診察に集団における行動評価、保育所や幼稚園での様子の聞き取りなども加味する必要があると考えられた。
(4) 軽度発達障害児の行動評価を以下の質問紙で行った。
(1) AD/HD評価スケール(DSM-IVベース18項目)
(2) アスペルガー症候群尺度(ASQ)27項目。
(3) Strength and Difficulties(以下SDQ 25項目)
(4) CBCL(Child Behavior Checklist、113項目)

以上の4つの質問紙について検討したが、全体的に見ると、AD/HD児の多動性や攻撃性の高さは、ほとんどの質問紙において表れていた。また、PDD児の社会性の乏しさが表れやすいのは、アスペルガー症候群スケール(保護者)、SDQ(保育士)、CBCL(保護者)であった。

質問紙のみでは鑑別診断は困難であり、ADHDやPDD等の診断には医師による診察や詳細な問診が不可欠であると考えられた。

D.考察

今年度の研究により、1000名を越える5歳児を小児科医が診察するという確度でもって軽度発達障害児の発生頻度が8.2〜9.3%であると推定されたことは、非常に大きな意味を有する。文部科学省特別支援教育課が2002年度に小中学校を基盤として行った調査では、6.3%と推計されており(軽度精神遅滞を含まず)、本研究班の調査結果もこれにきわめて近いものであった。すなわち、5歳児健診を行えば、小中学校で把握される軽度発達障害児のほとんどを5歳の段階で発見できる可能性を示唆していると考えることができる。
しかも、こうした児の半数以上が3歳児健診では何の問題指摘もなされていなかったことから、軽度発達障害児に気付くための場としては、5歳児健診がきわめて有用であろうと思われる。

ADHD児やPDD児によく見られる行動は、一般の3歳児にも高率に認められていることから、軽度発達障害児に特異的な行動の抽出をしない限り、3歳児健診にて効率よく軽度発達障害児を発見することには慎重であるべきと思われる。

また、行動に関する質問紙法の有用性の検討では保護者と保育所・幼稚園での評価が大きく異なる質問紙があり、「社会性」といわれる行動の評価は、回答する側に捉え方によってまったく異なる解釈がされてしまう危険性がある。当然ながら、質問紙法のみで軽度発達障害児を抽出することが困難で、医師による診察、詳しい問診、行動観察などを総合的に組み合わせることが不可欠であると言える。

E.結論

5歳児健診を基盤とすることによって、幼児期に軽度発達障害児の多くを把握することが可能であると推定された。半数以上は3歳児健診で問題なしと判定されており、現行の健診体制では十分に対応できないことが判明した。

構造化した診察法は軽度発達障害児の診断に有用であった。また、質問紙法への過度の依存は慎むべきであり、詳細な問診、医師の診察、集団場面の行動観察を組み合わせて包括的に診断するシステムが新たに求められる。

ホーム > 政策について > 分野別の政策一覧 > 子ども・子育て > 子ども・子育て支援 > 母子保健関係 > 軽度発達障害児に対する気づきと支援のマニュアル > 第二章 実証的研究成果

ページの先頭へ戻る