後発医薬品の安心使用促進アクションプログラム 平成19年10月15日 厚生労働省 T. 趣旨 ○ 後発医薬品は、先発医薬品の特許終了後に、先発医薬品と品質・有効性・安全性が同等であるものとして厚生労働大臣が製造販売の承認を行っている医薬品であり、一般的に、開発費用が安く抑えられることから、先発医薬品に比べて薬価が低くなっている。 諸外国においても、後発医薬品の使用が進んでいるところである。 ○ 政府においては、患者負担の軽減や医療保険財政の改善の観点から後発医薬品の使用促進を進めており、「経済財政改革の基本方針2007」(平成19年6月19日 閣議決定)においても、「平成24年度までに、後発医薬品の数量シェアを30%(現状から倍増)以上にする」こととしている。 ○ 一方、後発医薬品については、先発医薬品と同等であるとして厚生労働大臣が承認したものであるものの、現場の医療関係者等から、その品質、供給体制、情報提供体制等に関する問題点が指摘されるなど、後発医薬品に対する医療関係者等の信頼は必ずしも高いとはいえない状況にある。 ○ 以上を踏まえ、患者及び医療関係者が安心して後発医薬品を使用することができるよう、その信頼性を高め、使用促進を図るため、@安定供給等、A品質確保、B後発医薬品メーカーによる情報提供、C使用促進に係る環境整備、D医療保険制度上の事項に関し、国及び関係者が行うべき取組を明らかにするものである。 U. 具体的な取組 1. 安定供給等に関する事項 (1) 医療現場からの意見 (2) これまでの取組 @ 安定供給の確保の指導及び国による安定供給に関する苦情処理の仕組みの整備(「後発医薬品の安定供給について」(平成18年3月10日 医政局長通知)) ○ 後発医薬品の製造販売業者が行う安定供給の要件を明確化。 ○ 日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会から厚生労働省への安定供給に関する苦情の受付、製造販売業者への指導等を行う仕組みを整備。 ○ 安定供給に問題がある製造販売業者への文書等による指導と指導内容の公表をすることがあり得ること。 改善しなければ次年度以降の薬価収載希望を受け付けないことがあること。 A 先発医薬品が持つ医療上必要な全規格の取り揃えを指導(「後発医薬品の規格取り揃えについて」(平成18年3月10日 医政局長通知)) ○ 平成20年度以降は、原則として先発医薬品が持つ全規格を取り揃えなければ薬価収載希望を受け付けないこと。 ○ 既収載の後発医薬品は、原則として先発医薬品が持つ全規格を平成22年度末までに薬事承認を取得し、平成23年度末までに薬価基準収載の手続きを済ませ、安定供給を開始すること。 平成18年度末までに規格取り揃えの計画書を提出すること。 ○ 規格の取り揃えが完了しなければ、文書等による指導と指導内容の公表をすることがあり得ること。 B 小包装品の適正な供給を指導(「後発医薬品の薬価基準への収載等について」(平成19年7月13日 医政局経済課長通知)等) ○ 「小包装医薬品の円滑な供給について」(平成4年3月27日薬務局長通知)に定められた「薬価基準収載医薬品の包装単位基準」を遵守すること (3) 今後の取組 @ 再度、これまでの取組を周知徹底する。 また、安定供給や必要な規格の取り揃えに係る問題事例に対し、厚生労働省の職員を現地に派遣し必要な指導を行う(平成19年度予算を確保)。 A 下記の後発医薬品メーカーの取組状況をフォローアップし、必要に応じて指導を行う。 【後発医薬品メーカーの取組】 ア. 納品までの時間短縮 イ. 在庫の確保 ウ. 注文先の一覧性の確保 エ. 全規格揃え (上記(2)Aの通知に基づく措置) オ. 後発医薬品の数量シェア拡大への対応 (参考)上記ア〜オに関し、医薬協は、定期的に調査を実施し、必要に応じ会員会社を指導する。 2. 品質確保に関する事項 (1) 医療現場からの意見 (2) これまでの取組 @ 後発医薬品の品質管理等の再徹底を指導(「後発医薬品の信頼性の向上について」(平成19年3月30日 医政局経済課長、医薬食品局審査管理課長、安全対策課長、監視指導・麻薬対策課長通知)) ○ 後発医薬品の製造販売業者は、自社品について、品質、安全性に影響を及ぼし得る製造過程から製造販売後の流通過程に至るまでの各段階において、関係法令を遵守し、品質管理及び安全管理体制の一層の充実を図ること。 A 一斉監視指導において、立入検査によるGMPに基づく指導及び製品の一斉収去・検査を実施。 B (独)医薬品医療機器総合機構に、「後発医薬品相談窓口」を設置(平成19年5月7日)。 (3) 今後の取組 @ 後発医薬品の注射剤等を対象に、製剤中に含まれる不純物に関する試験等を実施するとともに、後発医薬品の品質に関する研究論文等を収集・整理し必要に応じて試験検査を実施する。 また、これらにより得られた試験結果や、後発医薬品の内服固形剤に係る溶出試験の結果・添付文書に係る情報を一元的に(独)医薬品医療機器総合機構のホームページで公表する(平成19年度予算を確保)。 A 一斉監視指導や製品の一斉収去・検査の実施について、後発医薬品の一層の品質確保対策を図る観点から、検査指定品目の拡充・国による立入検査の実施、検査結果の積極的な公表を行う(必要な経費について、予算要求中)。 B (独)医薬品医療機器総合機構に設置した「後発医薬品相談窓口」に寄せられた医療現場等からの後発医薬品の品質に関する意見・質問等について検討し、必要に応じて試験検査を行い、その結果を公表する(必要な経費について、予算要求中)。 C 下記の後発医薬品メーカーの取組状況をフォローアップし、必要に応じて指導を行う。 【後発医薬品メーカーの取組】 ア. 品質試験の実施等 イ. 関連文献の調査等 ウ. 品質再評価時の溶出性の確保 (参考)上記ア〜ウに関し、医薬協は、定期的に調査を実施し必要に応じ会員会社を指導する。 3. 後発医薬品メーカーによる情報提供に関する事項 (1) 医療現場からの意見 (2) これまでの取組 @ 添付文書等による情報提供の充実を指導(「後発医薬品に係る情報提供の充実について」(平成18年3月24日 医薬食品局安全対策課長通知)) ○ 添付文書の記載に当たって特に留意すべき点を明示。 ○ 既作成の添付文書については、遅くとも平成20年3月末までを目途にできるだけ速やかに改訂すること。 ○ 「医薬品医療機器情報提供ホームページ」に後発医薬品の添付文書情報を速やかに掲載・更新するための協力を要請 A 先発医薬品との効能効果等の相違の是正を指導(「後発医薬品における効能効果等の是正について」(平成18年6月22日 医政局経済課長・医薬食品局審査管理課長通知)) ○ 先発医薬品の効能効果等が合致しているか自己点検の実施と相違がある場合可及的速やかに対処をすること。 ○ 相違がある後発医薬品は平成18年8月末までに一変申請を行うこと。 再評価指定中の品目も一変申請を受付、迅速審査を実施。 ○ 今後、先発医薬品の効能効果等の追加が行われた場合は、速やかに一変申請を行うこと。 ○ 添付文書の記載について適切な整備を行うこと。 B 後発医薬品の情報提供体制整備の再徹底を指導(「後発医薬品の信頼性の向上について」(平成19年3月30日 医政局経済課長、医薬食品局審査管理課長、安全対策課長、監視指導・麻薬対策課長通知)) ○ 後発医薬品の製造販売業者は、日頃から副作用等の情報を医療機関等から収集し、医薬品医療機器総合機構のホームページ等も活用して後発医薬品にかかる情報を提供できる体制を整備しておくこと。 ○ 保険医療機関及び保険薬局から情報提供を求められた場合には、迅速かつ適切にその実施に努めること。 C (独)医薬品医療機器総合機構に、「後発医薬品相談窓口」を設置(平成19年5月7日)。 D 取り違え事故の防止等の推進のため、医療用医薬品へのバーコード表示の実施要領を周知(「医療用医薬品へのバーコード表示の実施について」(平成18年9月15日医薬食品局安全対策課長通知)) ○ 原則、平成20年9月以降出荷する全ての製品の必須表示とされた表示項目について、適正にバーコード表示を行うこと (3) 今後の取組 @ 後発医薬品に対する医療関係者等の一層の理解が得られるよう、後発医薬品メーカーが、自ら行った研究開発データ、自ら収集した副作用情報及び副作用に係る公表文献等を整理・評価し、医療関係者等へ情報提供する体制を更に強化するよう指導する(平成19年度中)。 A 医療関係者等の求めに応じて、後発医薬品メーカーが先発医薬品の安全性に係る情報等を提供するに当たって留意すべき点を明らかにし、当該情報提供を円滑に行える環境の整備に努める(平成19年度中)。 B 下記の後発医薬品メーカーの取組状況をフォローアップし、必要に応じて指導を行う。 【後発医薬品メーカーの取組】 ア. 添付文書の充実 (上記(2)@の通知に基づく措置) イ. 「使用上の注意」の改訂時の(独)医薬品医療機器総合機構の情報提供システムへの添付文書情報の掲載 ウ. 医療関係者への「お知らせ文書」の配布 エ. 医療関係者への情報提供 オ. 情報収集等の体制整備 カ. 医療用医薬品のバーコード表示(上記(2)Dの通知に基づく措置) (参考)上記ア〜カに関し、医薬協は、定期的に調査を実施し必要に応じ、会員会社を指導する。 4. 使用促進に係る環境整備に関する事項 (1) これまでの取組 @ 国の取組 A 関係者の取組 ア. 後発医薬品メーカーの取組 イ. 医療保険者の取組 (2) 今後の取組 @ 国の取組 ○ 後発医薬品の普及に資するための医療関係者・国民向けポスター及びパンフレットを作成・配布(平成19年度予算を確保)。 ○ 都道府県レベルにおける使用促進策策定や普及啓発を行うため、医療関係者、都道府県担当者等が協議会を発足させ、後発医薬品の使用促進策の策定や普及啓発を行う(必要な経費について、予算要求中)。 ○ 厚生労働省のホームページにおいて、後発医薬品の取組情報等を一元的に提供する場所を設けるとともに、(独)医薬品医療機器総合機構や政府公報等、関連するホームページとのリンクをはる(平成19年度中)。 ○ 地域レベルで使用されている後発医薬品リストの医療関係者間での共有の推進を日本薬剤師会に要請する。 A 関係者の取組 5. 医療保険制度上の事項 (1) これまでの取組 @ 後発医薬品を含む処方を診療報酬上評価(平成14年度〜) A 処方医が後発医薬品に変更して差し支えない旨の意思表示を行いやすくするため、処方せん様式に「後発医薬品への変更可」のチェック欄を追加(平成18年度〜) B 従来の後発医薬品の品質に係る情報等に加え、先発医薬品と後発医薬品の薬剤料の差に係る情報を患者に文書により提供し、患者の同意を得て後発医薬品を調剤した場合に調剤報酬上評価(平成18年度〜) (2) 今後の取組 処方せん様式の変更の検討、薬局に対する在庫管理コストの評価の検討等、効果的な使用促進策を本年度中に中央社会保険医療協議会等で議論し、決定する。 V 当計画の実施状況のモニタリング ○ 厚生労働省において、当計画の実施状況を定期的にモニタリングし、その結果を公表するとともに、必要に応じ、追加的な施策を講じる(Uに掲げる取組の進捗状況を把握する指標として、別添を用いる)。 後発医薬品メーカーにおいて達成すべき目標